ゴホッ・・・ゴホゴホゲホッ
白い雪の上に散る紅い花・・・
肺病病みの吐く血は
身体のどこから流れる血よりも
はるかに鮮やかで赤い
雪の上に滴るそれは
まるで紅い花弁・・・
「隊長!浮竹隊長!!誰かっ四番隊へ!卯ノ花隊長を!!」
宵闇が辺りを包みだした頃
十三番隊舎から雨乾堂への渡り廊下で浮竹は喀血していた
ぼんやりとした視界に映るのは
白い雪と紅い花弁・・・
(・・・花弁・・・?違う・・・俺・・・の、血だ・・・)
そう思いついたところで意識を完全に失う
慌しくも安静に雨乾堂の自室へと運び込まれると、卯ノ花が駆け付ける
「少し、病状が悪化していますね・・・当分は安静になさるようにと・・・」
「判りました・・・」
「あなたも大変かもしれませんが・・・志波副隊長・・・」
「大丈夫ですよ、俺は隊長の分も身体は丈夫ですから」
「あまり無理はなさらぬようにしてくださいね」
「ありがとうございます、卯ノ花隊長」
ここ暫く体調が良いと、滞っていた仕事を片付けていた矢先の出来事
また迷惑をかけるなぁ・・・と上司の申し訳なさそうな表情が思い浮かぶ
海燕は苦笑し、そっと浮竹の部屋を出ると
浮竹の枕元にある水中花が瓶のなかでゆらりと揺れた
ゆらゆら・・・ゆらゆらと
まるで水の中にいるように揺られている
それが何故か心地良い
(・・・俺は・・・どうしたんだ・・・?確か、血を吐いて・・・俺は、死ぬのか?)
死というものはこんなに心地良いものなのかと考えだした時
暖かい何かが唇に触れる
自分の指で唇に触れてみるが暖かいそれはどこにもない
『死なないで・・・あなたの辛さや苦しみを治すことはできないけど・・・
それを和らげることは出来るかもしれないから・・・生きて・・・
生きて、その瞳に私を映してください・・・』
頭に直接響く柔らかで優しい声
(君は・・・誰なんだ・・・?)
『私は・・・・・・』
その声が浮竹の胸の中にふわりと花開いた
まるで水中花を水の中に入れた時のように
ゆっくりと水に揺られて鮮やかにその姿を現す
(あぁ・・・そうか、君は・・・・・・・・・四番隊の・・・そして俺の・・・・・・想い人・・・)
自分は病弱で何時死ぬかも判らないと
頑なに募る想いに蓋をしてきた
この想いは決して告げまいと・・・
薬を届けにくる姿を見るだけで良かった
その時に一言二言、言葉を交わすだけで良かった
それで良いんだと自分に言い聞かせてきた
(それなのに、君は・・・俺の心の蓋を溶かしていくんだ・・・それだけでは足りないと・・・)
何時だったか、薬と共に持ってきてくれた白と緑の不思議なもの
現世で珍しいものを手に入れたと持ってきてくれたそれは
小瓶に水を入れて、その中に入れると白い花を咲かせた
『水中花と言うんだそうですよ』と無邪気に笑っていた
その花が自分のようだとも言っていた
確かに髪は白いが・・・男が花に譬えられるのはどうかとも思った
でも、彼女からの贈り物が嬉しくて
それは今でも部屋に飾ってある
(・・・もう一度、君に逢いたい・・・)
『・・・一度でいいの・・・?ずっと・・・傍にいてはくれないの・・・?』
胸の中の花が語りかける
(ずっと・・・?傍に・・・?)
『そう・・・ずっと・・・・・・死ぬ事を考えないで・・・生きることを考えて・・・
そして、ずっと私の傍で生きていて・・・』
(・・・っ)
ゆらゆら・・・ゆらゆらと
朧気な意識が、ゆっくりと浮上してくる
左手に感じる暖かい温もりに
ゆっくりと瞳を開ければ
視界の片隅に艶やかな黒髪が一房
その黒髪を辿れば傍らに眠る愛しい人
手の温もりはその人の両手が包んでいるから
そっと起こさない様に起き上がれば、その寝顔には涙の痕
湧き上がる愛しさに、もう自分の心に蓋はすまいと強く思う
布団の上に広がる黒髪を一房手に取り唇を寄せると、甘い香りが鼻を擽る
ふ・・・っと笑みを零し辺りを見れば
枕元にはのくれた水中花と薬
(が飲ませてくれたのか・・・となると・・・夢の中でのあの軟らかい感触は・・・)
一気に顔に熱が集まる
片手で口元を覆い一人赤くなる
嬉しいやら、恥ずかしいやら、もったいないやら
「う・・・ん、あ・・・わ、私寝ちゃって・・・って浮竹隊長!?」
「お、起こしたか?すまん・・・」
「いえ・・・それよりっ、ちゃんと寝ていてくださいっ。どれほど心配したかっ
こっこんなに酷い発作は初めてで・・・っ、わた、私・・・
もう、目を覚ましてもらえないんじゃないか・・・とかっ・・・・・・っぅく・・・」
「え・・・お、おい・・・?」
「わ、私・・・病気を治すこと・・・は、できなくって・・・ひ・・・っく」
「すまん・・・泣かないでくれ・・・」
浮竹が不器用にもの零れる涙を拭い
子供をあやすように頭を撫でていると
はそのまま浮竹の胸に顔を埋めて泣き出してしまう
行き場を失った浮竹の両手は、躊躇いがちにの背に置かれた
ぽんぽんと背中を優しく背中を叩き
が落ち着くのを待つ
「・・・傍にいたいんです・・・ずっと・・・」
「うん・・・聴いた・・・」
「そうですか・・・はぇっ?」
「意識を失ってた時・・・ずっとの声が聴こえていた・・・
俺はに『ずっと私の傍で生きていて』と言われた・・・」
そのままそっと優しく、しっかりとを抱き締める
軟らかく暖かいその身体は『生きている』ことを表していて
それを感じる自分もまた『生きている』んだと実感する
「・・・君が、好きだ。・・・俺はずっとの傍で生きていよう・・・
だから・・・もずっと俺の傍で生きて・・・笑っていてくれ・・・」
「・・・っ、は・・・い・・・・・・約束・・・ですよ・・・?」
「あぁ・・・約束、しよう・・・」
瞳に涙を溜めてふにゃりと微笑むの唇に
夢の中で感じたその唇の感触を確かめるように
浮竹はそっと口付けた・・・ 。
Fin
相互していただいた阿藤 まりん様に捧げます!
相互記念夢ですっ(今頃かよ・・・と自分で突っ込んでますが)
あの素敵なイラストから妄想が膨らみました(笑
こんな駄文になってしまいましたが・・・(汗
よろしければ貰ってやってください