「・・・戦いには二つあり
我々は闘いの中に身を置く限り
常にそれを見極め続けなければならない
命を守るための戦いと、誇りを・・・守るための戦いと・・・!」
「殺せ!!!そいつはもう・・・海燕じゃないんだ!!!
殺せ!!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・隊長・・・
・・・ありがとう、ございました・・・・・・
・・・俺を・・・戦わせてくれて・・・・・・・・・」
「・・・ああ」
「・・・心は、此処に置いて行ける・・・」
「ちゃ〜ん、京楽のおじちゃまですよ〜」
「おじちゃま?おはようございます」
「おはよ〜ぅ」
「今日はどうしたの?」
「うん、ちょっとね・・・ちゃんにお願いがあるんだ」
「お願い?」
京楽は朝早くに浮竹邸を訪れていた
目的は親友・十四郎の愛妹、
大きな瞳をくりくりとさせながら京楽を見上げると
ひょいと抱き上げられて「十四郎君の所へ行こう」と踵を返した
「お兄ちゃまの所へ連れて行ってくれるの?」
「うん、ちょっと元気がないからね・・・
ちゃんの顔を見れば少しは元気になるかな〜と・・・」
「お兄ちゃま、ご病気なの?」
「ううん違うよ、病気じゃないから安心していいよ」
大好きな兄の元気がないと聞かされて
病気なのかと表情を曇らせると、京楽はにっこりと笑いながら首を振った
所変わって雨乾堂では浮竹が一人縁側に座って空を見上げていた
「・・・海燕の家族を傷つけて、朽木の心にまで消えない傷を負わせて
・・・・・・俺は・・・何をやっているんだ・・・っ」
血が滲むほど拳を握り締めて唇を噛む
そうしているとトテトテと軽い足音が耳に入ってくる
「お兄ちゃま〜」
「・・・?」
声の聞こえた方に身体を向ける前に
ぽふんと背中に軽い衝撃、その後には暖かな温もり
背後を見ればそこには考え通り愛妹の姿
そして近くに感じる親友の霊圧
「京楽に連れてきてもらったのか?」
「うんっ、お兄ちゃまのお元気がないからって・・・」
「京楽の奴・・・っ」
内心舌打ちをするが、がぎゅっと背中にしがみついてくる
その小さな身体が微かに震えているのが判る
「・・・どうした?」
「海燕お兄ちゃまと都お姉ちゃまが遠くへ行っちゃったのが寂しいの?」
「っ、どうしてそれを!?」
「おじちゃまに聞いたの・・・だっていつもが来たらお迎えしてくれるのに・・・」
「・・・そうか・・・・・・そうだな・・・」
「だから・・・みんな元気がないの?」
「・・・」
はしがみついていた兄の背中から離れ
自分に用意された篭の中を漁りだした
その篭は度々遊びにくるのために海燕の妻である都が用意したものである
その中からお目当ての物を探し出して浮竹の元へやってくる
「お兄ちゃま、お口開けて?」
「な、なんだ?」
「いいからっ」
言われるままに口を開けると小さな手からころんと二粒のなにかが口に入れられる
口の中に広がる柔らかな甘み
「・・・これは・・・金平糖?」
「うん、海燕お兄ちゃまがね・・・寂しい時や哀しい時には
甘いものを食べるといいんだよって教えてくれたの
それにこの金平糖は都お姉ちゃまがくれたのっ
・・・お兄ちゃま、少し・・・元気になった?」
「・・・っ、あ、あぁ・・・ありがとうな・・・・・・」
「よかったぁ」と嬉しそうにしながらみんなにも配ってくると
隊舎へ駆けていく小さな後姿を浮竹は瞳を細めて見送った
海燕や都にも良く懐いていた
自分だって寂しいに違いないはずなのに
兄である自分を、その周りの者達を気遣う姿に熱いものが込み上げてくる
そして自分の不甲斐なさに腹立ちを覚え再び拳を握り締めた
隊舎へ足を踏み入れたは一人一人に金平糖を配って廻った
その健気な姿に涙する女性隊士も少なくはなかった
最後にルキアの元にはやってくると同じように金平糖を手渡した
「殿・・・」
「あのね・・・泣いて、悲しんで昨日のことを思い出すより
笑って明日のことを考えるほうが良い事があるんだ・・・って
海燕お兄ちゃまが言ってたよ?・・・ルキアお姉ちゃまの笑ったお顔
大好きだよっ」
ルキアがを見つめればその大きな瞳は僅かに濡れている
それが判るとルキアの瞳からも涙が零れてきた
「それからね、泣きたい時にはちゃんと泣きなさいって言ってた
我慢しちゃいけませんって、だから・・・だ、から・・・っく・・・・・・うぇ・・・・・・」
は泣いた、大きな声で・・・
驚いた浮竹が駆けつける程に泣いた
ルキアは唇を噛み締めを抱きしめながら涙を零した
それは自らの手で海燕を斬ってから初めて流した涙だった
暫くの間大泣きしていただったが
泣き疲れたのかルキアの腕の中で眠りについていた
「朽木・・・」
「浮竹隊長・・・も、申し訳ありませんっ」
「いや、こちらこそすまない・・・違うな
のこと・・・感謝している、普段はあまり泣かないんだがな」
「い、いえ・・・あのっ・・・・・・ま、まだ・・・笑う事はできません
でも・・・泣いて、悲しんで昨日を思い出すより・・・明日のことを・・・考えて、みます・・・」
「朽木?」
「先程、殿が教えてくれました・・・海燕殿が言っていたと・・・」
「・・・そうか・・・・・・」
眠っているを受け取り雨乾堂の自室へと戻る
幼い妹は精一杯自分達を慰めてくれた
きっと同じ事を自分がしてもここまでルキアや他の隊員達の心には響くまい
浮竹はそっとの頭を撫でて自分の布団に寝かせると
開けられた障子から覗く青空を見上げた
「泣いて、悲しんで昨日を思い出すより、明日の事を考える・・・か・・・・・・」
瞳を閉じれば浮かび上がる海燕の姿
そしての笑顔
傷付いた心はそう簡単に癒えることはない
それでも明日に向かって歩いていかねばならない
それを思い出させてくれたをもう一度撫で
浮竹は心の中で呟いた
「ありがとう・・・、海燕・・・」
妹ネタ第4弾でございます
今回はちょっとシリアスに・・・
海燕さんがお亡くなりになった時の事を考えてみました
以降海燕さんが登場しないとは限りません(笑