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驚異的な速さでフランス語を習得していくに
Lは閉口しワタリはニコニコと色々な事を教え込んでいた
そんなある日、Lは『L』としての仕事ではなく
『コイル』『ドヌーヴ』でもない各国に散らばる『私立探偵』として
『難事件』とLの中では分類されることのない仕事をさくさくと片付けていた
「う、わー・・・これ、昨日のニュースでやってたヤツだ・・・」
「どうしました?
・・・って何パリ警視庁のホストコンピュータ覗いてるんですか」
「あ、あはは・・・」
笑って誤魔化そうとするに「ちゃんと足跡は消してくださいね」と
言いつつの後ろからモニターを覗き込み顔を顰める
「・・・女性が見るような画像ではありませんね」
「そうかも、しれないけど・・・」
「何か気になることでも?」
「昨日ニュースでジャック・ザ・リッパーがパリに・・・みたいな事を言ってたから」
「切り裂きジャック、ですか・・・」
が今見ているモニターには胸部・臀部が抉り取られている女性の画像と
皮膚が剥ぎ取られている女性の画像が映し出されている
「切り裂いているのには違いないし猟奇的ではあるけど・・・」
「ええ・・・同一犯には見えませんね」
「Lはそう考える?」
「はい、は違うんですか?」
「違わないけど・・・あのね、この身体の一部を抉られている人の
周辺で行方が解らなくなっている女の人がいて
この人を重要参考人にってなってるでしょ?」
「はい、まぁ普通に考えれば一番怪しい人物ではありますね」
それが?と問うLには少し考える素振りをみせて苦笑した
「よく解らないんですけど、気になって・・・」
「気になる、ですか・・・・・・殺された女性二人と参考人と言われている女性
三人ともがモンマルトルのビガール地区の高級娼婦
1888年から役1年以上続けられたという
ギリスでの切り裂きジャックの被害者も高級ではないにしても
同じ娼婦・・・当時の犯行状況から犯人は医師であるという説が有力で
女性を表す臓器を持ち去るという事もあった・・・
が、はっきりとした犯人は解っていない。
その事件を模倣している、と考えられなくもない
しかし、同時に二人の人間が考え付くことか?共犯・・・」
「L・・・職業病ですか?」
「あ・・・」
はカタカタと打鍵してパソコンの電源を落とすと
後ろに立っているLに「お茶にしましょうか」と言う
その言葉に難しい顔をしていたLの顔がぱぁっと輝く
「今日のおやつは何ですか?」
「今日は練り切りです」
「練り切りとは何です?」
「生菓子ですよ、和菓子の一つです」
はにこりと笑ってお茶の用意を始める
その笑顔を見てLの鼓動が速まる
ドキドキする胸に手を当ててLは首を傾げ考える
「・・・(以前からの事を考えると鼓動が速まる事があった
でもそれは緊張に似たような感じだったが・・・今は何か違う
こうして動悸がする事もあれば、きゅうっと締め付けられるような
痛みを感じることもある・・・一体私はどうなっているのだ?)」
「L?大丈夫ですか?」
「は、はいっ・・・・・・それより、言葉遣いが戻ってます」
「え、あっ」
先日、Lはに普通に話して欲しいと言い出し
挙句の果てには拗ねていじけて「口をきいてあげません」などと脅して
ワタリは呆れ、は脱力して頷いたのだった
練り切りに日本茶を用意してLをソファへ促すと
喜々としてソファに飛び乗り膝を抱えて「食べていいですか?」と聞く
その姿には笑みを零しながら頷きつつ向かい側に腰を降ろした
Lは練り切りをぱくぱくと食べて、はお茶を飲む
ゆったりとした時間が過ぎていく
「、ずっと気になっていた事があるんですが・・・」
「何?」
「あの、は洋服が嫌いなんですか?」
「ん〜洋服かぁ、嫌いじゃないよ。ただ持ってないだけで」
「え?」
「持ってない物を着ることはできないでしょ?」
「持ってないんですか?」
「うん、一着も持ってないんだなこれが」
鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしているLに苦笑する
いつも淡い色合いの着物を纏っている
洋服姿を一度も見たことがなかったLは疑問をぶつけてみた
それで返ってきた答えは珍しいもので
今時洋服を一着も持っていないということだった
今度、洋服を贈ってみようかと考えるが
は素直に受け取ってくれないかもしれないなとも思った
それを攻略するのもまた楽しそうだ、とLは口の端を吊り上げた
その夜、ワタリが仕事から戻ってきて報告を受けた後
Lは昼間考えていた事を口にした
「ワタリ・・・私は一体どうしてしまったんだろうな」
「は?・・・L、話がよく解らないのですが・・・」
「いや、その・・・だな、時々、こう・・・ドキドキと動悸がするんだ
それで、たまにきゅうっと締め付けられるように痛む時もある
緊張に似たような感じもあるが、緊張するようなことはないし・・・」
「あ、あの・・・L?それは、さんを見た時とか
さんの事を考えている時とかじゃないですか?」
「よくわかりましたね、やはりワタリ・・・」
「あなどれませんね」などと呟いているLにワタリは眩暈を覚えた
幼い頃から何かに執着することのなかったLが
唯一執着心を見せたのが『』という人物
実際出会うまでは実在するのかどうかも判らなかった
出会いからしてワタリにとっては衝撃的だった
心肺停止状態で現れ、息を吹き返したというのも驚いたが
それ以上に、Lの涙に驚いた(こっちのほうに驚いたのが驚きだ)
警戒心の強いLがの側で熟睡するという事や
今回のような彼の新しい一面をみてワタリは嬉しく思った
「ワタリ?私の話を聞いてますか?」
「聞いておりますよ、で・・・Lはどう思っているんですか?」
「ですから、一度精密検査を受けた方が・・・」
「・・・・・・は?あの・・・L、精密検査とは・・・」
「ええ、心臓に欠陥があるのかもしれません」
Lの言葉にワタリは言葉を失った
私は今迄、色々な知識を教えてきたが
肝心な事を教えるのを忘れていたのか!?(ワタリ心の叫び)
教えても解るような事柄ではないような気もするが
プチパニック状態のワタリにはそんな事考えていられない
歳相応の青年の抱く仄かな恋心、胸のときめきを
言うに事欠いて心臓に欠陥があるかもしれないとは・・・
Lらしいと言えばそうかもしれないが
どうしたものか・・・とワタリは頭を抱えた
「え、L・・・あなた以前、女性とお付き合いなさったことは・・・」
「ありますよ?ワタリは知ってるじゃないですか」
何を今更・・・と訝しげな顔をしてワタリを見上げるL
「その女性には今Lが感じていられるような事はありませんでしたか?」
「感じているって、動悸とか痛みですか?」
「はい」
「ありません」
考える間もなくきっぱりと言い切るL
「で、では・・・その女性は好きではなかったと?」
「いいえ、好きでしたよ。特に理由がない限り
私は人を嫌いにはなりません」
「・・・・・・・・・嫌いではないから好きである、と?」
「はい、それが普通なんじゃないですか?」
ワタリはこの時、世の中に完璧な人などいないのだと思い知った
そしてこの恋愛感情欠落人間をなんとかしなければとも思った
「いいですか?L・・・」
「なんですかワタリ、改まって・・・」
「『好き』という感情には二種類あります」
「知ってますよ『Love』と『Like』のことですよね」
「・・・言葉の違いではありません、感情の違いです
L、ハウスの子供達のことは好きですよね?」
「勿論です、ワタリのことも好きですよ」
「ありがとうございます。ではさんは好きですか?」
「なっ、あ、あああ当たり前じゃないですか
なんなんですか、禅問答ですか、それとも私への挑戦ですか」
「落ち着いてください、L
私達のことを好きだと思う気持ちとさんの事を思う気持ち
違いが解りませんか?」
「・・・・・・・・・・・・違い、ます、ね・・・」
ぽかんとした顔で自分を見上げるLにワタリは安堵の溜息を吐く
暫く固まっていたLの顔が一気に赤く染まり、いきなり慌てはじめる
「も、もしかして・・・わわわわ私はに
こっこここここここ(鶏ではありません)恋、をしている!?私が!?」
「L・・・どうか落ち着いてください」
「ここ、これが落ち着いていられますかっ・・・えぇ!?ちょ・・・っは!?」
Lが一人騒いでいると、その声で目が覚めたのかが姿を見せた
途端、Lは静かになった。というか固まった
「どうしたの?L・・・・・・ちょ、顔が赤いよ?熱でもあるの?」
がLの額に掌を当てると同時に更にLの顔が赤くなる
そしてぷるぷると震えだし、がしっとの手を握る
「!?え・・・L?」
「ああああのっ、だ、だだ大丈夫ですからっ」
「う、うん・・・でも、変だよ?」
「へ・・・変、ですか?えぇっ!?私おかしいですか!?
どこがおかしいんですかっっ!?ワタリっ私おかしいですか!?」
L
崩
壊
ワタリは引き摺るようにLを寝室に連れて行く
それを唖然とした表情で見送る
暫くして戻ってきたワタリはにこやかに
「少々疲れ気味だったようです」と言った
初めて見るLの壊れっぷりと
ワタリの冷静な対応には驚きつつ
『Lは疲れたら壊れる』という間違った認識を持ってしまった
翌日、Lは熱を出して寝込んでいたとか・・・
それから数日後、『切り裂きジャック』が
フランスはパリ、モンマルトル地区を震撼させ
ICPOは『L』に協力を求めた