欠け始めた月が照らす薄暗い森の中を
一人の青年がゆっくりと歩いていた
その姿は疲れているようで一歩一歩を踏みしめるように歩いていた

鳶色の髪を揺らし空を見上げれば
木々の枝や葉の隙間から覗く月
それを苦しげに一睨みしてまた一歩進む

暫く歩いていると近くで獣の悲鳴のような声が聞こえた
痛々しいそれに青年は眉を顰めると、声の聞こえる方へ足を進めた
そして見たものは           ・・・












「・・・っ、何故こんな所に・・・」



青年の目の前には足から血を流し蹲っている一人の少女
少女は警戒しているのか青年を睨んだままぴくりとも動かない
小さな唇から漏れるのは唸り声
そして更に青年を驚かせたのは、少女が何も着ていないことだった
所々泥で汚れた身体、血に塗れた足を見れば何かをつけている
青年が足を踏み出せば少女の唸り声は大きくなり足を引き摺るように後ずさる
まいったなと視線を廻らせると、近付いてくるいくつかの気配
かさかさと草を踏み締める音は人のそれではない


「え・・・?」


少女と青年の間に躍り出た大きな影は三頭の狼だった
その中で一番大きな狼は青年をじっと見つめ
残りの二頭は少女に気遣うかのように頬を舐め、血のでている箇所を舐めていた
少女は頬を舐める狼の首に腕を回ししがみついている


「・・・狼・・・?」


じっと見つめる大きな狼の視線に居心地が悪くなり青年が身動ろいだ時
金属の擦れる音がして悲痛な声が少女から上がった
月明かりを頼りに少女の足に目を向けるとそこには
誰かが仕掛けたであろう鉄製の罠が喰い込んでいた
それを一頭の狼が強引に外そうとしている



「あぁ・・・駄目だよそんなに引っ張ったら・・・傷が酷くなってしまう・・・」


言いながら足を踏み出そうとすると残りの二頭も青年に視線を向ける
その視線に警戒心は無いように見えるがなんとも居心地が悪い
しかし放って置く事も出来ずに青年は口を開いた



「えぇっと・・・それを僕に外させてくれないかい・・・?」



獣相手に何を言っているんだろう、と思うが少女の足はあまりにも痛々しい
じっと見つめる大きな狼と視線を合わせてもう一度同じ事を言うと
その狼はかさりと音を立てて脇に退いた



「ありがとう・・・」


そう言って少女に近付くと少女はしがみついていた狼の首に顔を埋めた
細い足首に喰い込む罠をゆっくりと解くと新しい血が流れる
青年はポケットからハンカチを取り出しきつく縛った
そのとき少女から呻き声が聞こえたが傍にいる狼達は動かず青年を見ていた
そして狼にしがみついていた少女の腕から力が抜けると
そのままとさりと地に崩れ落ちた

三頭の狼達は少女の頬を一舐めすると再びじっと青年を見つめそして頭を垂れた
それは青年に礼を言っているようにも見え青年は驚き瞠った
それからまたも青年を見つめる



「・・・僕に、何か言いたいことがあるのかい?それともお願い事かな?」


苦笑しながら狼を見つめるが答えは返ってこない
その変わりに狼達は踵を返すと青年の前から立ち去ろうとしていた
少女を残して              ・・・



「・・・・・・まさか、この子を僕に頼むと・・・?」



そう呟くとそれに答えるかのように大きな狼は振り返り一声鳴いた
そして振り返ることなく森の奥へと走り去った



「・・・・・・・・・まいったな・・・」



青年は溜息を吐くと少女を見る
一糸纏わぬ身体には所々泥と小さな傷跡がついている
気を失っていてしかも足に傷を負っている少女をこのまま置いていくわけにもいかず
とりあえず自分の着ていた上着を脱いで少女にかけるとそっと抱き上げた
青年は何度目かの溜息を吐くと自分の家に帰るために足を踏み出した








 


60000Hitありがとうございます!
本編が全く進んでいないハリポタですが
前々から考えていたリーマスと狼少女のお話です
ヒロインさんは人狼ではありません・・・多分(汗
どうぞお付き合いくださいませ