朝早くには斎藤に呼び出されていた
控えめに扉を叩き返事を待てば
予想通りの不機嫌な声がを迎えた



「・・・お呼びとか・・・」

「あぁ・・・以前、抜刀斎が美桜に会ったと言ったな?」

「はい・・・」

「抜刀斎は双子の存在に気付いているぞ
 お前の事を探している、話しをつけてきたらどうだ?」

「・・・・・・」



俯き無言でいるに斎藤は一つ溜息を吐くと煙草に火を点けた


「・・・抜刀斎は気付いている、双子も抜刀斎が父親だと気付いている
 とっとと話しをつけてこい」

「・・・命令ですか?」

「あぁ・・・副長や沖田も同じ事を言うだろう」



斎藤の言葉にはきゅっと唇を噛み締め前を見据えた
そこにはいつもの刺々しい眼差しではない斎藤が口の両端を上げて立っていた


「わかりました・・・」



















はゆっくりと神谷道場へ向かった
剣心のそばには道場の娘、薫がいる
それに剣心は自分の事をどう思っているのだろう・・・?

心優しい彼は責任を感じているのだろうか?
それとも今だ自分の事を想っていてくれているのだろうか?

は軽く頭を振り、淡い期待を振り払った





「ごめんください・・・」



澄んだ声が神谷家の玄関に響いた

暫くするとぱたぱたと足音が近付いてくる



「はーい、どちら、様・・・?」



薫の目の前には以前知り合った少女にそっくりな女性が立っていた


「あの、こちらに緋村 剣心は・・・」

「え・・・?あの・・・」

「あぁ、申し送れました。私、元新撰組一番隊組長補佐  と申します
 それに以前娘がお世話になったとか・・・」

「・・・新撰組・・・?」



『新撰組』と聞いて顔を顰める薫、その様子を見ては苦笑した


「(斎藤先生も随分嫌われたものね・・・)」


少し考える素振りを見せて薫が口を開こうとした時に
置くから足音が近付いてきた
その足音の主を見ての胸は高鳴る
それを悟られないように軽く息を吐く


「薫殿〜、今日の買い物は・・・・・・?」

「剣心・・・え?」

「久しぶり、緋村・・・この前は子供達が世話になったみたいね」

!!」



剣心はふわりと微笑むに駆け寄りそのままの勢いで抱きしめた
何度も名前を呼びながら腕に力を込める剣心の背をは子供をあやすように撫でた
薫は目の前の光景を信じられないという目で見ながらも目が離せなかった



「緋村・・・そろそろ・・・・・・」

「え?すっすまぬっ」



が苦笑しながら剣心に言えば
剣心は今気付いたとばかりに顔を赤らめながら慌てて離れた
その光景を呆然と見ていた薫に剣心が口を開いた


「薫殿、買い物は後でも構わぬか?
 少しと話しがしたいのでござるが・・・」

「え、えぇ・・・」



剣心はの肩に手を置き客間へと促したが
はそれに応じず庭へと足を運んだ














口を開くことなく緑を見上げていたを暫く見ていた剣心は漸く口を開いた



・・・」

「何?」

「その・・・単刀直入に聞くが・・・・・・あの二人の子は、拙者の・・・」

「・・・・・・そう、私の子供よ」

「っ、そうではなくてっ」


剣心の言葉には困ったように微笑む



「緋村・・・私には私の生き方があるように、貴方には貴方の生き方がある・・・」

!!聞きたいのはそんな言葉じゃない、・・・拙者はあの子供達の・・・」



剣心の言葉を遮るようにが口を開く



「あの子達は私の子供、それでいいじゃない?」

「・・・・・・・・・」


にっこりと笑うに剣心は溜息を吐く
言葉の端々に見える拒絶
もう、は自分の事を想ってくれてはいないのか?
そう思えてしまう



「緋村は責任を感じているの?」

「そうじゃないっ!・・・・・・もう、拙者は・・・必要ないのか・・・?」

「先程も言ったでしょう?私には私の、貴方には貴方の生き方があると・・・」

「それでは答えになっていないっ」









「また出歯亀かい?嬢ちゃん」

「〜〜〜〜〜っ、左之!」



庭に面している廊下の隅で二人を伺っていた薫の後ろから左之助が声をかけた
そしてちらりとを見やると左之助は軽く溜息を吐く


「だって、だってっ・・・違うんだもの・・・恵さんの時とも違う
 いつもの剣心じゃないような気がするんだものっ」

「はぁ・・・っ、今回ばかりは覚悟を決めたほうがいいかもしれねぇな、嬢ちゃん」

「か、覚悟って何よ・・・」

「いいか?剣心だって男だ、それなりの歳でもある・・・過去に女の一人や二人・・・」


バキィッ


薫の鉄拳が左之助の左頬にとんだ


「なんてこと言うのよぉっ」

「ってぇなぁっ、本当の事を言ったんでぇっ」

「そんな事あるわけないじゃないっ、あの人は新撰組なのよ!?」

「は?」

「元新撰組って言ってたものっ、剣心は元維新志士じゃない、敵同士じゃないっ」

「敵同士・・・ねぇ・・・」



左之助はの顔を見てあの双子の母親で剣心の相手だと察した
元『新撰組』と聞いてなんとなくではあるが二人が離れた理由が解った
今にも泣きそうな薫を見て『初恋は実らないとは本当の事だったんだな』と思った












「それでは答えになっていないっ、拙者が聞きたいのは・・・」

「じゃぁ・・・もう、緋村は必要ないと言えば満足なの?」

「・・・っ!!」



剣心は俯きの言葉にぐっと唇を噛み締め拳を握る

心にもない言葉を自ら言った事にの胸はズキリと痛んだ
本当は傍にいたい、四人で暮らすことが出来たならどれほど幸せな事か

俯いたままの剣心に背を向け、その場を離れようとした時
小さな乱入者が現れた



「母様の嘘吐きっ!」

「美桜?」

「言ってたじゃないっ今でも父様の事が好きだって!
 これからもそうだって!なのにどうしてそんな事言うの!?」

「・・・美桜・・・・・・」



ぼろぼろと大粒の涙を零しながらにしがみつき尚も声を張り上げる


「会いたくないのが嘘になるんだったら会いたかったんでしょ!?
 せっかく会えたのにどうして必要ないなんて嘘吐くの!?」


泣きじゃくる美桜をはぎゅっと抱き締め頭を撫でる
美桜の突然の乱入とその言葉に声も出せずにいる剣心と隠れている薫達


「ごめんね・・・美桜、でも・・・」

「わた、しは・・・っ、と・・・さま、にぃ、会えて・・・うれし、か・・・た・・・のに・・・っ」

「俺は嬉しくなかったけどな」

「剣護・・・あなたまで・・・」


かさりと音を立てて現れたのは剣護、腕を組み眉間に皺を寄せている
そのままスタスタと剣心の前まで歩いていくと渾身の力を込めて剣心の脛を蹴り上げる


「い゙っっっ!!」

「剣護!」

「なに呆っと突っ立ってんだよ、美桜まで泣かせやがって・・・」


脛を押さえて蹲る剣心を見下ろして淡々と剣護は話す
『美桜まで』っては泣いてないじゃないかと本人含めそう考えていると


「俺達が知らないと思ってたら大間違いだからな、母様
 夜になると空見ながら泣いてたの俺達は何度も見てるんだっ」

「剣護・・・あなた達・・・」



美桜を抱きしめるの頬に堪えきれない涙が零れる
剣護は踵を返し達の前まで歩み寄り再び剣心へと視線を向ける


「・・・このまま、何も言う事がないんだったら
 母様も美桜も俺が護る・・・あんたよりも斎藤先生よりも強くなって俺が護る」



剣護の真っ直ぐな視線を受けて剣心は立ち上がる
視線を外さずゆっくりと歩み寄り剣心は剣護と視線の高さを合わせるように膝を折った


「では、と美桜二人を護るお主ごと・・・三人を拙者に護らせてはくれまいか?」


剣心が眉尻を下げ、ぽんと剣護の頭に手を乗せると
剣護はきっと剣心を睨み上げ子供扱いするなとばかりに手を払い落とす


「・・・勝手にしろっ」


フンッとそっぽを向きに向き直る



「母様、俺も美桜も母様には笑っていてほしい
 泣いてほしくなんかない、斎藤先生も時尾さんも心配していた
 それから斎藤先生からの伝言『素直になれ』だってさ」


剣護は言うだけ言って母親にしがみついている美桜を引き離し
その場から少し離れた



・・・もう一度聞いてよいでござるか?」


は頷く


「拙者はもう、必要ないのか?」

「必要に・・・傍に、いたい・・・っ」


両手で顔を覆いながら涙を零すを剣心は抱き締めた
二人から零れ落ちる小さな声は謝罪の言葉


黙っていてごめんなさい
何も知らずにいてすまない



暫くの間剣心がを抱き締めていると
後ろから声がかかった



「あ〜、お二人さんそろそろ俺達にも話しを聞かせてくれねぇか?」


半泣き状態の薫を連れた左之助だった

庭から場所を客間へと移し剣心とは口を開いた








「・・・ってぇことは、剣心は本当に知らなかったんだな」

「えぇ、私が妊娠していると気付いたのが・・・緋村が京都を出てからでしたので・・・」

「で、どうして今まで黙っていたのでござるか?」

「それは・・・」



はちらりと先程からずっと俯いている薫に視線を向けると
左之助はあぁと合点がいく


「十年の時間は長くて・・・緋村には緋村の生き方、生活があると・・・」

・・・・・・拙者はそんなに頼りにならぬ男であったか?」

「そ、そういう訳じゃ・・・」

「俺は少なくともそう思ってたけどね」



横から口を出すのは剣護、美桜に窘められてフンとそっぽを向いている
それを見てと剣心は苦笑する


「さて剣心よ・・・」

「なんでござるか?」

「お前ぇ、あと何人くらい覚えがあるんだ?」

「なっ、何を言っているでござるか左之!
 拙者は以外誰一人とも覚えなんてないでござる!!」


子供の前で何を言っているんだか・・・と呆れているを前に
ずっと無言で俯いていた薫が漸く顔をあげた



「・・・剣心・・・剣心は、これから・・・どうするの・・・?」

「薫殿・・・」


薫の想いを薄々と感じていたは瞳を伏せた

剣心とて感じていた薫の想い
妹のように思ってはいるがそれ以上には考えられなかった
そして薫の家族というものへの思いも判ってはいた
それでも達と共に暮らしたいそう思う
剣心が言葉を捜していると薫が口を開いた



「なんてねっ、せっかく会えた親子が離れることはしないでしょ?
 食い扶持が減ればウチも助かるし・・・たまに遊びに来てくれれば
 弥彦も左之も私も寂しくないしっ、だから・・・」


必死に涙を堪えて笑う、その涙に気付かない振りをして剣心は笑った



「ありがとう・・・薫殿」















夕日が照らす中、この日初めてそろった家族は影を並べていた
剣心、を真ん中に剣心の右手には美桜の手が
の左側には剣護が(手を繋ぐのを恥ずかしがって拒否した)いた


「・・・そうだ、剣心」

「なんでござるか?」

「おかえりなさい・・・」

「おかえりなさい、父様」

「・・・・・・・・・おかえり・・・」


優しく微笑む、嬉しそうに笑う美桜
不服そうに横を向きながら呟く剣護
『父様』という言葉を擽ったく感じながら剣心は笑った





「ただいまでござる」




























 


五萬打ありがとうございました!!
そしてここまでお付き合いくださいましてありがとうございました!!
これにて完結でございます!!
気が向いたら番外編なんか書いてしまうかもですが(笑
なにげに管理人が剣護くんを気に入っているので(汗