多忙だった毎日に飽き飽きしてごく僅かな休暇を貰い私は現世へ来ていた
会いたい人達もいたことだし・・・ただ・・・ここ数日の間、妙な胸騒ぎがしていた
私の身に何かあるのか、それとも身辺で何事かおきるのか・・・
00 hunch -予感-
私は死神・・・護廷十三隊十番隊の隊長を務めている
副官は『天才児』こと 日番谷 冬獅郎 休暇中でも隊のことは気にならない
冬獅郎は出来が良すぎるくらいのイイ奴、彼に任せておけば心配は無い
だから私は休暇をもぎ取って現世に降りることができる
でも・・・はっきり言って調子が良くない!
理由は解かっている、義骸が合わないんだ・・・技局の奴等なにやってんの?!
以前からそうだったけどね・・・やっぱり私にはあの人の作った義骸がいい
ぶつぶつと技局の事を言いながら目的の場所までやってきた・・・『浦原商店』
ガラス戸を開けると大きい身体に変わった髪形の馴染みの顔が覗いた
「これはこれは殿、お久しぶりですな」
「お久しぶりテッサイさん、喜助さんはいる?」
「はいは〜い♪ここにいますよん」
「お久しぶりです喜助さん」
奥から現れたどっからどう見ても怪しい姿に呆れながら挨拶をした
私が呆れるのはいつもの事なので喜助さんも全く気にしていない
「今日はどうしたんっスか?サン、しかも義骸でなんて珍しい・・・」
「休暇で現世に遊びに来てるんです、で・その義骸の事で来たんです」
「そっスか〜、その義骸がどうしたんです?」
「なんか調子が悪くって・・・やっぱり技局のが合わないみたいで・・・」
「ふむ・・・」
喜助さんは片手を顎の所にもっていって私の身体を見る
そしていきなり私の腕を持ち上げてみて、また考える
「ん〜、このままじゃわかんないっスね・・・とりあえず脱いでみましょ♪」
「あぁ・・・はいはい」
私は義骸から出て、ただの人形になったそれを喜助さんは受け止めてくれた
「いや・・・そういうイミじゃなかったんスけどね・・・」
「ナニか言いました?」
「いえ、何も言ってませんよ〜」
この人の扱いにも大分慣れてきたなぁ〜
昔の私なら真っ赤になっていただろうに・・・そしてあの人の鉄拳が飛ぶんだ
「とりあえず、喜助さんが作ってくれた義骸ってまだあります?
どうもそっちの方が私には合ってるみたい」
「ありますとも♪アタシが作ったサンの義骸は愛が込めてありますからv」
・・・相変わらずこの男は・・・
どうしてあの人はこんな男が良かったのか・・・
「あれ?サ〜ン、どうしたんですか〜?」
「なんでもありませんっ、早く用意してください!」
「はいは〜い♪」
私はテッサイさんが持ってきてくれた義骸に入って調子をみる
・・・うん、やっぱりこっちがしっくりくる
そして着ていた服のポケットから切れたブレスレットを取り出した
「喜助さん、後ねこれをなおしてほしいんだけど・・・」
「ほいほい♪・・・これは・・・懐かしいですねぇ・・・
まだ持っていてくれたんスね・・・嬉しいっスねぇ・・・」
「うん・・・お守りだから・・・ピアスとそのブレスレットは・・・」
帽子の下の瞳が揺れた・・・地雷を踏んじゃった・・・かな・・・?
愛しげに私のブレスレットを撫でる喜助さんは
いつものヘラヘラした感じじゃなくて哀しげで胸を締め付けられた
・・・やっぱり待っているんですね・・・あの人を・・・
「私も現世に降りようかな・・・」
ぽつりと呟いてしまった
「サン、それはダメです それにそんな事をしたら
帰ってきたサンに怒られますよ?あと自分の隊はどうするんです?」
「隊は大丈夫です、優秀な後継者が現れましたから」
「あぁ、日番谷サンですか・・・」
「流石喜助さん、よく知っていますね」
「アタシの情報網を甘く見ないでください
でも、やっぱりダメです サンはアタシとサンと夜一サンで鍛え上げた
サンの大事な妹のような存在です」
できましたよ、とブレスレットを私の腕に着けながら
やっぱり哀しそうに微笑んだ
そう、私は死んですぐ流魂街で途方に暮れていたところを
さんに拾われて死神になった・・・元々霊力はあったみたいだけど
・・・鬼のように厳しい修行だった・・・(遠い眼)
霊術院の方がどれくらい良かったかっ、でも・・・そこでかけがえの無い人達に出会った
さんは勿論、さんの恋人で今 目の前にいる喜助さん
喜助さんの戦友でさんの親友夜一さん・・・色々な事を教えてもらった、本当に色々と・・・
だから私は隊長になれた・・・そう思ってる・・・
そして私の後継者が現れた・・・冬獅郎・・・私の護廷での役目は終わったような気がする・・・
更にこの胸騒ぎ・・・厭な予感がする・・・
私はさんと喜助さんが誕生日にくれたブレスレットを撫でながら
この予感を振り払うように笑った
「そうですね、私は尸魂界でさんの帰りを待ってます」
「そうしてくださ≪ピピピピピピピッ!≫
喜助さんの言葉を遮るかのように鳴った伝令神機
いつもの癖で持ち歩いていたんだっけ・・・一応、隊長ですから・・・
喜助さんに謝りをいれて応答すると
【十番隊三席 松本 乱菊 です!救援要請をお願いします!】
・・・厭な予感とはこれの事だったのかもしれない・・・
「乱菊?!どうしたのっ?」
【え?!隊長?!】
「そうよ!どうしたの?何があった?!」
【はいっ只今、空座町にて大虚が現れたと連絡があり副隊長と討伐にきたのですが
あまりにも数が多くて・・・ギリアンだけで・・・ガガッ・・アジュ・・か・ガッ】
「乱菊?乱菊!!」
呼びかけも虚しく通信は途絶えてしまった
私は喜助さんにお礼を言って義骸に入っているのも忘れて飛び出した
「サ〜ン、無茶はしちゃダメっスよ〜」
喜助さんが言いながら見送ってくれたから後ろ手に手を振った
それが私と喜助さんの最後の挨拶になるなんて、この時は思ってもみなかった
伝令神機を片手に霊圧を探り、瞬歩を使ってその場へ急ぐ
乱菊と冬獅郎の霊圧に加えて大虚の霊圧
きっと二人だけで来たんだ・・・部下が危険に晒されるなら自分が行く
そういう奴だ、冬獅郎は・・・霊圧が弱まっていく・・・
お願い!間に合って!!
現場に着くとそこには数十体の大虚
そして思った通り、冬獅郎と乱菊だけが息を切らして立っていた
辺りには氷やら灰やら・・・
「隊長!」
「乱菊!無事だった?!」
「何とか生きてます」
「隊長?!どうして・・・」
「そんな事より、一気に終わらせるから退がってて」
私は二人を後退させると死神化して斬魄刀を握り始解する
「舞い上がれ『胡蝶』!」
光の蝶が大虚を囲み、その羽根が刃となって大虚を斬る
キアアアァァァァァァアアアッ!!
大虚の叫びが木霊す
さんは鎮魂の為に蝶が舞っているようだと言ってくれた
私もそう思う・・・これが私の斬魄刀の能力、虚を斬り光で浄化する
さんの斬魄刀の能力に似ているようでそれが嬉しかった
大虚を殲滅させても私の胸騒ぎは収まらず、更に増した
後ろの二人が安堵の息をつき緊張を解いた時、ザワリと悪寒がした
冬獅郎の後ろにいきなり現れた大虚・・・ヴァストローデ
「冬獅郎!!」
ザシュ・・・ッ!!
あぁ・・・胸騒ぎはこれだったんだ・・・
私は瞬歩で冬獅郎の背後にまわりヴァストローデの攻撃を受けた
左腹に激痛が奔る、どうやら私の身体を貫通して
奴の腕は冬獅郎の目の前に血を滴らせていた
「「隊長!!」」
二人の声が遠くに聞こえる・・・意識が飛びそうになるのを必死で堪えて
ヴァストローデを見据えると、光が口元に集まっている・・・虚閃・・・!!
それを確認すると同時に二人を突き飛ばした
「「隊長?!」」
「乱菊・・・冬獅郎を支えてやってね・・・それから・・・冬獅郎・・・
・・・隊を・・・十番隊を任せたからね・・・っ」
「な・・なに・・・を、言って・・・」
虚閃が放たれると同時に私は胡蝶を振りかざした
眼を覆いたくなるような光の中、手応えを感じた・・・相打ち・・・か・・・
消え行く意識の中、冬獅郎と乱菊の叫び声が聞こえた
心残りがないとは言えない・・・最後に貴方に会いたかった・・・
・・・さん・・・
「やぁエステル久しぶりだね」
「あぁ・・・今はアラゴルンと名乗っていると言っているはずだが?レゴラス」
「そうだったね、で・・・今日はどうしたんだい?」
「いや、前の指輪所持者のゴラムを捕らえたんでな
この闇の森で預かってもらうために来たんだ、あいつのことはスランドゥイル様に
頼んでおいたから心配はないだろう・・・」
「そうだね、僕も気にかけておくよ
それより・・・エステル、聞いてくれるかい?」
「・・・アラゴルンだ」
「よく解からないけど、胸騒ぎがするんだ」
「(聞き流しやがったな)・・・良くない事でもおきるのか?」
「それが・・・解からないんだ、なんだか・・・こう・・・
ワクワクするような、ドキドキするような・・・」
「・・・変なものでも食ったんじゃないか?」
「失礼なっ、君じゃあるまいし・・・でも・・・一体何なんだろう・・・」
死神図鑑ならぬ死神豆知識(笑)
義骸:死神に支給される仮の肉体のこと
技術開発局(技局)によって開発・製作される
伝令神機:現世にいる死神が指令・情報を受け取るための端末
大虚:虚(ホロウ・生者、死者の魂を食らう悪しき魂魄。悪霊とかの類)が集まった巨大な虚
ギリアン・アジューカス・ヴァストローデの3種類 ギリ→アジュ→ヴァスの順に強い
瞬歩:歩法の一つ 高速戦闘移動法のひとつ・・・らしい・・・
斬魄刀:死神の持つ刀(まんま)席官クラス(強い)死神の斬魄刀にはそれぞれ名前がある
ヒロインさんの場合は『胡蝶』 通常は日本刀の形をしているが名前を呼ぶことで
『始解』状態となり形状・能力ともに大きく変化する
虚閃:大虚が口から放つ、滅びの光線のこと・・・らしい・・・