また旅に出ると言うアラゴルンを見送って
レゴラスは自国の闇の森を歩いていた




01 encounter -出会い-




爽やかな風が吹いて金の髪を揺らす
詩を口ずさみ、小鳥を目で追いながら歩を進めると
ふと風が厭な臭いを運んでくる



『血の臭い・・・?どこから・・・』



怪我をした動物か何かいるのだろうか
それならば手当てをしないと、と考えながら
その臭いに引き寄せられるかのように進んでいくと
繁みの中に白いものが見えた
エルフの眼で見ているからまだ距離はある
しかし、その白いものはピクリとも動かない
繁みの葉が、枝が視界を邪魔する
近づくにつれてはっきりと形が判ってくる


『人・・・?エルフか人間か・・・』


小走りに近寄ると木漏れ日に照らされて
はっきりと人であるという事が判る



『なんでこんな所に・・・死んでいるのか?』



側までいくと、その人物はうつ伏せに倒れていて意識が無い
背中に触れてみるとかすかに上下していて生きていることが判った
視線をずらすと纏っている白い衣が朱に染まっている
それを見て慌てて抱き起こすと、その人物が女性である事が判る


『なんて酷い怪我をしてるんだ!ニムエル!ニムエール!!』


彼女を抱き上げ、愛馬ニムエルを呼び寄せる


カシャン・・・ッ



『剣・・・?』


彼女の傍らに落ちた銀色に輝く物
拾おうとしたら、その手が空を掴んだ


『・・・え?』


もう一度試してみても同じだった
レゴラスの手はその剣を素通りして地に生える草にあたる
彼女を見るとその腰には鞘がある
少し考えて彼女の手を使い剣に触れてみると硬い感触が伝わった
なんとか彼女の手を使い剣を鞘に収める
そして耳を澄ましニムエルのやって来る方角を確認すると走り出した




















エステルを見送って森を散策していた時、血の臭いがして
そこに行ってみると女の子が倒れているなんて思ってもいなかった
それに酷い怪我をしている・・・何か太い物で刺されたような
僕のニムエルの白い馬体が紅く染まるほど出血は酷いものだった
とにかく館に運んで手当てをした
といっても相手が女の子だと判ると侍女達に部屋から追い出されたけど


彼女は人の子だった、だけど何故人の子がエルフの森に入ってこれたのか・・・
それにあの怪我・・・オークにやられたのかもしれないけど
この辺りにはオークはこないし、それにあの不思議な剣にはオークの血はついてなかった
彼女は何者なんだろう・・・?



『レゴラス様、あの娘の手当ては終わりました
 容態も少しは安定してきましたので、部屋に入られてもいいですよ』



やっと僕は彼女の部屋に入る事を許された
ベッドの上に眠る彼女、そういえば初めて彼女の顔をじっくり見るな
漆黒の髪に縁取られた白磁の肌、閉じられた瞼に瞳の色は分からないけれど
その下に影を落とすほどの長い睫・・・
枕の上に広がる黒髪に光が当たると緑色に輝いて見える
きっとエルフのように美しいんだろう
早く目覚めてくれないかな・・・

彼女の頬に触れてみると、先程までは冷たかったそれが今は暖かい
ほっとしていると部屋の扉が開いた



『レゴラス・・・お前が拾ってきた腹から背中にかけて大穴をあけていたというのはその娘か?』

『父上・・・仮にも女性の部屋ですよ、せめてノックくらいは・・・』

『そう硬いことをいうな、それにまだ意識がないのだろう?』

『そういう問題ではないと思うのですが・・・それに大穴って・・・』

『事実だろう?・・・ん?これはその娘のものか?』



父上は彼女の持っていた剣を見つけてしまったようだ・・・
僕と同じように触ろうとしても触れないでいる
何を言われるかとヒヤヒヤしていたら予想外な言葉だった



『おぉっ!こんな不思議なものがあるとは!長生きはしてみるもんだなぁ』

『父上・・・』



そうだった・・・この人はこういう人だった・・・
お前は触れたのかとか聞いてくるのを軽く流していると
やれやれと肩を竦めて部屋を出て行ってくれた


『目覚めて動けるようになったら私の所へ連れて来るんだぞ〜』


あっけらかんとしたその言葉を残して・・・
僕はそれはそれは深い溜息をついた































目覚めなさい・・・



・・・さん・・・?



早く目を覚ましなさい・・・・・・



さん・・・さん・・・帰ってきたの・・・?






さん・・・・・・いたぁっ」


目が覚めると私は知らない所にいた・・・
上半身を起き上がらせて辺りを見回すと自分がベッドの上にいることが解かった
淡い色使いの洋風な部屋、辺りの空気・・・此処は尸魂界じゃない
現世でもない・・・此処は・・・・・・何処?
お腹の痛みが教えてくれる・・・夢じゃ・・・ない・・・・・・



確か・・・私は冬獅郎を庇ってヴァストローデに・・・そして相打ちだった・・・はず・・・
ヴァストローデの腕が私のお腹に突き刺さったのを覚えている・・・
軽くお腹に触れてみると痛み共に包帯の感触
誰かが手当てをしてくれたんだ・・・
そういえば・・・〈胡蝶〉・・・〈胡蝶〉は?
辺りをもう一度見回すと、私のすぐ側に置いてあった
私にしか触れない〈胡蝶〉がどうしてここにあるのか・・・
痛みを堪えて〈胡蝶〉に手を伸ばす


・・・目覚めたのね》

「〈胡蝶〉!私・・・一体どうなったの?それに・・・」

、落ち着きなさい まず私はを運んでくれた人が
 の手を使って私をここに置いたの
 それから、なぜ私とがここにいるのかは解からない・・・》

「そう・・・」



私は〈胡蝶〉を抱き締めて色々と考えた
さんは言っていた、偶然など不思議なことなどないと・・・
それは全て起こるべき事だから起こるのだと
だとしたら・・・私は・・・ここに来るべきだから来たんだ・・・死神のまま・・・
〈胡蝶〉がいて、話せることがその証拠だ、私はまだ死神なんだ
ならなぜここに私を連れてきた人は私を見て触れることができた?
魂魄のままのはずなのに・・・


・・・私にもう一つだけ解かることがある・・・
 それは、の魂魄と義骸が融合してしまったこと・・・》

「ゆ、融合?!」

《そう、何故なのかはやっぱり解からないけれど・・・
 さんの言葉を借りると、それも起こるべきことだからじゃないかしら・・・》

「そうねぇ・・・まぁ、技局の義骸じゃなくて喜助さんの義骸でよかったよ」



言葉を繋げようとした時、誰かが近づいてくるのが解かった
軽くノックする音が聞こえて扉が開いた・・・そこから覗いたのは
びっくりするくらい綺麗な男の人だった・・・



『やぁ・・・目が覚めたみたいだね』

「・・・・・・・・・?」



えーと、何か言ってる・・・ま・・まさか・・・言葉が・・・違うのぉ?!


『やっぱりエルフ語じゃダメかぁ』

[大丈夫かい?]

「・・・・・・・・・(汗」

[え?!共通語もダメなの?!]



美貌の彼は色々と言葉を変えて話しかけてくれるけど・・・
全く解からない・・・それに、気になる・・・その尖った耳はなに?
そりゃ死神にだって色んなわけわかんない奴多いけど・・・尖った耳の奴はいない・・・
私は一体どんな世界に来てしまったんでしょーか???
さ〜ん・・・助けてください・・・

よっぽど私が困った顔してたんだろうなぁ
彼も困った顔になってしまって考え込んでしまった・・・



『まいったなぁ・・・こんな時ミスランディアがいてくれたらなぁ・・・』



困った・・・でもお礼は言いたい・・・
言葉は通じなくても身振り手振りで解かってくれるかなぁ
ま、実行するしかないか


「あ、あのっ手当てとかしていただいたみたいで・・・
 ありがとうございましたっ」



ベッドの上に正座してお腹の辺りを触ってお辞儀してみた
そんな私を見て彼は微笑んで『気にしなくていいよ』と言っていた
ん〜「どういたしまして」って感じなのかな?
そして彼も身振り手振りで私に横になるようにと言ってくれた・・・たぶん・・・

〈胡蝶〉を枕元に置いて横になると
彼はベッドの脇に座って私をじっと見つめてくる
・・・金色の髪・・・は喜助さんもそうか・・・
それよりその綺麗な顔はなに?綺麗な顔には免疫があったはずなんだけどなぁ・・・
さんも夜一さんも綺麗で喜助さんもその部類・・・のハズ
さんと並んでると本当にお似合いで・・・そんな人達に囲まれていたはずなのに
免疫・・・薄れてきたのかなぁ・・・さんがいなくなって色々あって
夜一さんは猫の姿がほとんどで喜助さんは目深に帽子をかぶるようになって
100年余りが過ぎた・・・やっぱり免疫が薄れてるんだ・・・
彼の顔をみてこんなにドキドキするなんて・・・

そんなことより、これからどうしよう・・・
彼に言葉を教える?そんなことしても彼としか会話が成り立たない・・・
と、いうことは・・・私が覚えるしかない・・・ってことかぁ・・・
とにかく今は彼しかいないけど、色んな人の会話を聞いて覚えるしかないか・・・
文字はその後にしよう・・・

あ・・・私、まだ名乗ってない・・・彼の名前も知らない
・・・思ったら即実行!



「あの、私・・・・・ って言います」

『・・・ ?』

「そう、・・・貴方は?」



自分を指差して名乗ってから、その指先を彼に向けてみた




『僕は、レゴラスだよ・・・




あ・・・笑ってくれた・・・すごくキレイ・・・
そして暫くの間、頭を撫でてくれた
それがなんだか心地よくて私の意識は深く落ちていった




















『眠ってしまったの・・・?・・・』


僕が暫く頭を撫でていたらと名乗った彼女は安心したように眠ってしまった
この部屋に来た時は何か独り言を言っているようだったけど
やっぱりはエルフのように綺麗だった・・・
何よりその瞳に僕は魅せられた
僕の姿を映し出す少し潤んだような瞳の色は菫色で
今までに見たこともない色だった

声を掛けたらは固まってしまって、言葉が通じないんだと困っていたら
いきなりベッドの上に座って何かを言いながら頭を下げられたのには驚いた
お腹の辺りを触っていたから あぁ、お礼を言っているんだと解かった
僕も彼女のように身振りで横になるように促すと、素直に従ってくれて
あの不思議な剣を枕元に置いていた・・・騎士みたいだと思った

そして少しの間僕の顔を見ているなと思ったら
自分を指差して「」と言った・・・すぐに僕を指差してきたから
あぁ名前なんだと思って僕も名乗った
その時にみたの微笑みに僕の心は湧き立った




あぁ・・・少し前からの胸騒ぎは、このことだったのかもしれない・・・




その次の日から僕はに言葉を教えようと考えていた












  



死神豆知識

尸魂界:現世で命を落とした魂が死神に送られる場所
     その中心部に死神の住む場所『瀞霊廷』がある
ポジティブなヒロインさんが好き・・・
次回はレゴラス先生のエルフ語講座です(笑