【序章】


時は寛永十五年、島原の乱も終止符を打ち
船に揺られ、その足を肥前(現在の長崎・佐賀)島原より江戸に向け
山陽道を経て東海道に向かう親子の姿があった

父は頑健な体付きに無造作に髪を高く結い、その顔の右目には刀傷
その隣に少年のような少女のような顔をした子供
父に倣い髪を高く結っているが此方は綺麗に整えられている
着ている着物で男の子だと見て取れる



「父上、今日はどの辺りで宿を取りましょう・・・?」

「・・・この先に宿なんかあるのか?」


父の言葉に道の先を見るが、どこまでも続く山道、町の影すらも見えない


「そう言われると・・・難しいかもしれませんねぇ
となると・・・野宿ですか?」

「そうなるな・・・まぁ、久しぶりの野宿だ。楽しめ」

「大和の国から東海道に行くのにどうしてこんな山道を・・・」

「ぶつぶつ言うな、柳生の里からはこの道が一番近いんだ」



そう、この隻眼の御仁・・・この時代の剣豪、柳生 十兵衛であった。
十兵衛のとなりで頬を膨らませているのは、その娘 
父と共に旅を続けているため娘の着物より動きやすい男の身なりをしていた


そうして暫く歩いていくと、達の鼻を掠める異臭



「父上・・・この臭いは・・・」

「あぁ・・・行ってみるか・・・」

「はい・・・」


その臭いを辿って行くと廃村に行き着いた
荒涼としたその様は酷い有様で、その異臭は酷く鼻を付く


「これは・・・夜盗にあったか何かですね・・・」

「いや・・・この苦無くないは・・・根来ねごろの物だ」

「根来衆が・・・何故・・・?」

「解らんが・・・     どうやら、嬲殺したようだな・・・」



十兵衛の視線の先には擂鉢すりばち状の大穴が掘ってあり
その中には無数の死体が散乱していた


「酷い・・・っ、一体どうしてこんな・・・」


が声を震わせていると、痩せ細った少年が姿を現した
その窪んだ目には何も映っておらず、井戸の元へ行きその水を飲んでいる


「生き残りか・・・水は飲めるようだな」

「父上・・・」

、居心地は悪いかもしれんが・・・今日はここで休むぞ」

「は?・・・まぁ、日も落ちましたし・・・この臭いさえなければ良かったのですが
 ・・・着物に染み付いて暫く取れなくなりそうですよ・・・」


普通の娘なら卒倒してもおかしくないこの状況下でけろりとしているのは
父親譲りの豪胆さと十年近く父と旅をして何度も修羅場を見てきたからか
は辺りに倒れて腐りかけている死体に手を合わせると、一軒の家に足を踏み入れる
荒れ果てた家内だったが、親子二人が座れるくらいの場所はある


「父上、囲炉裏がありますが・・・どうします?」

「やめておけ、奴等が戻ってくるやもしれん」

「はぁ・・・では、このまま食べますか・・・」


懐から干飯ほしいと干肉を取り出し父にも差し出す


「碗があれば良いのですがね」

「無いものは仕方ねぇだろ、水と一緒に食え」


そう言われ、仕方なしに干飯を口に入れ後から水を含む
干肉を齧っていると、先ほどの少年が覗いて見ているのが目に入った


「食べる?」

「・・・・・・」


警戒心を剥き出しにしているが空腹は隠せないでいる
が一歩近づけば、少年は一歩退く
十兵衛は苦笑して干肉を千切って放ってやると、それに飛びつきがつがつと頬張る


「野良猫みたい・・・」

「こんな事があったんだ仕方無い」

「そうかもしれませんが・・・明日になったら埋葬しますか?」

「この数をか?・・・重労働になりそうだ」




完全に日が落ち、辺りは暗闇に覆われる
辛うじて外から月明かりが射し込んでくる、二人は刀を手に浅い眠りについている

夜風がふと二人の頬を掠めると、ぴく・・・と目を覚ます


「・・・父上」

「し・・・っ・・・・・・来る・・・、気配を消せ。一、二・・・七人か、奴等だ」

「はい」


そして眠っていた少年を十兵衛が脇に抱え口を塞ぐ
少年はそれに驚いて目を覚ます


「死にたくなければ黙っておれ」


外を窺い見ていると、僧侶の形をした輩が七人姿を現す


「・・・なんでぇ、ここは前に狩りをしたところじゃねぇか」

「ごみ溜めがくせぇや」

「ここは風があまり吹かねぇからなぁ」


下卑た笑いを湛えながら話しているのが聞こえる


「うああぁぁぁぁっ」


十兵衛が脇に抱えている少年がその言葉に堪えきれずに飛び出してしまう


「ちぃっ・・・・・・あの馬鹿」


「なんでぇ、この餓鬼は・・・暇潰しにもなりゃ・・・」


ズサァッ


「「「十兵衛!?」」」

「父上!」

「お前は其処にいろ!」


そう叫ぶが早いか、襲い掛かってくる輩を斬り倒していく
逃げる隙も与えずに・・・残り一人となった時


「動くな、十兵衛。たいしたものよな柳生新陰流・・・見事我が配下は全滅だ」


その足の下には先程飛び出した少年が倒れている
も気付くのが遅かったか、と舌打をする


「・・・まあよい、貴様等親子に働いてもらうとしよう・・・」

「笑止!拙者達に人形くぐつになれとでも言うのか、面白い冗談だな。黒蜥蜴」

「我が傀儡くぐつの術のほど・・・信じられぬなら、面白い趣向を見せてやろう
 ・・・       ・・・我が術を持ってすれば死者といえども思うがまま」


擂鉢状の穴の其処から這い上がってくる死者達の姿が十兵衛と少年の瞳に映るが
には見えていないようで、訝しげな顔をしている


「・・・おっかあ?・・・っウアアァァァッ」

「な・・・貴様・・・・・・っ!?」


黒蜥蜴の掌から粉末が飛散すると、十兵衛は力が抜けたようにその場に倒れこむ


「父上!?」

「・・・薬か・・・・・・不覚・・・っ」

「クククク・・・動けまい?今やここらには、我が術の源が満ちておる
 殺しはせぬ、生きながらに我が操り人形と化す屈辱、その身で味わうがいい!」

「させない!!」


ザンッッ


は飛び出し、黒蜥蜴に斬りかかる
その太刀筋は見事黒蜥蜴の右腕を切り落とす


「うぎゃぁぁっ・・・・・・おのれっ小童がぁ!」

「うぁぁっ・・・    っ!?」


胸倉を掴まれそのまま横に突き飛ばされる、その先は崖・・・      ・・・
視界から消える父の姿


「父上っ・・・父上       っ!!」

ぁぁぁあああっ!!」


闇の中に消えゆく娘の姿、十兵衛は固く目を瞑り歯を食い縛った
その時既に黒蜥蜴の術は解け、十兵衛は怒りに震える
刀を手にし振り上げる。


「ぎゃぁぁぁっ」


・・・切り落とされたのは黒蜥蜴のもう片方の腕
両腕を失い、痛みに悶え苦しみそのまま自分達の掘ったであろう擂鉢状の穴に落ちていく
十兵衛の肩には気を失っている少年が抱えられている


「・・・・・・っおのれ、十兵衛・・・・・・・・・っっ」

「・・・・・・殺してはやらぬ・・・命尽きるまで思い知るがいい
 殺された者の苦しさ・・・辛さを   ・・・     そして     ・・・
 残された者の哀しみを      ・・・・・・・・・っ」













落ちていく・・・落ちていく・・・・・・・・・???
底は・・・どこだ?・・・底なしの崖なんて聞いた事がない・・・
父上・・・母上・・・・・・このまま死んだら母上に会えるのかな・・・・・・



気が遠のいていく中で、父上と母上が並んで私に笑いかける
そしてそのまま、私は気を失った・・・      








 


るろ剣連載ヒロインの戦国無双バージョンです(笑
もしも・・・とふと妄想したら止まらなくなってしまい
別館を立ち上げてしまいました(滝汗

・・・がっ、序章は加筆修正もなくおんなじです(焦
ほんとスミマセ(汗

同じような内容にならないように頑張ります
本館のるろ剣もどうぞヨロシク(こっそり宣伝)