Moonlight Affection 03
「月が二つ見える場所にいるよ」
「月が二つ・・・あるわけないですし・・・
でも二つ見えるって・・・さて・・・」
執務室に帰ってくるなりブツブツ言い出す喜助に
隊員達もついに隊長がおかしくなった?!
いや
もともとおかしいが・・・さらに?!
などと声を潜めて話している。
そんな中を黒い風が横切った
「何を訳の解からぬことをブツブツと言っておる?喜助よ」
「・・・夜一サン・・・」
呆れ顔で溜息を漏らしつつ喜助に近寄る
喜助といえば あー・・・ とか うー・・・だとか言葉にならない声を出している
誤魔化しのきかない友人には何を言っても無駄なことだとは解かっている
「・・・で、何を悩んでおるのだ?貴様は」
「いやぁ〜、たいした事じゃないっスよ〜」
「・・・で、なんなのだ?」
ずいっと顔を近づけて睨みをきかせる夜一に
溜息をつきつつ顔を緩ませる
「夜一サンには敵わないっスねぇ・・・」
やれやれと肩を竦める
「いやですね、今日会った人に月が二つ見える場所があると聞いたんです
でも、どう考えても月は一つしかアリマセンし・・・」
ぽりぽりと頭を掻きながらヘラっと笑ってみせる
「ハッ・・・馬鹿かお主は」
「酷いっスね・・・相変わらず」
「浦原 喜助とあろう者が、何を真剣に悩む?
子供の謎掛け遊びと同じじゃ」
「・・・はぁ・・・?」
きょとんと夜一を見上げると
フフンと鼻で笑いながら言葉を繋げた
「なにも月が二つあるわけではない、見えると言ったんじゃろ?その者は・・・」
「はぁ・・・」
ここまで言ってもまだわからぬのか?
と夜一は懐から手鏡を出して喜助の方へ向ける
「これでも解からぬか?」
「へ?」
「・・・はぁ・・・これでお主は何人に見える?
儂からみればお主は二人に見えるがのぅ・・・」
「あ・・・そういうことですか・・・」
「お主は複雑に考える時がある
答えが単純であれば単純であるほど・・・の」
「やっぱり夜一サンには敵いませんねぇ」
「して・・・今日会ったという者は何者じゃ?女か?」
ニヤリと笑いながら意地悪に喜助を見つめる
「さて・・・どうでしたっけ、それより夜一サンは何の用でここに来たんです?」
質問を質問で返す喜助に チッ と舌打しながら
喜助の元に来た理由を話し始める
「・・・最近、王族どもの動きがおかしい・・・何かあったのか・・・それとも・・・」
「これから何かがおきる・・・かもしれない・・・と?」
夜一の話を繋げるように喜助が呟く
「・・・そうじゃ・・・はっきりとはわからぬが・・・」
「どちらにしても、アタシ達には関係ないんじゃないっスかぁ?」
「たしかにの・・・それでも・・・だ、用心をするに越したことはない」
「そりゃそうですが・・・
ん?
夜一サン、その動きがおかしくなったのって何時頃です?」
「たしか・・・ここ2・3日だったか・・・喜助、思い当たることでもあるのか?」
「いえ、そうじゃないんですけど・・・」
「なんじゃ、歯切れがわるいの・・・思い当たることがあったのだな?申せ・・・」
「いや、違いますって」
「やかましい、お主の考えていることを今すぐ申せ
儂を怒らせたいか?ん?」
だんだん夜一の霊圧があがっていく
喜助は気にすることもなく飄々としている
「2・3日ということは、その辺りで大きな事は何もおこってない
それに何かあったのなら、隊首会が開かれているはずです」
自分が考えていたこととは違うことを
夜一が納得するように話す
「そうじゃの・・・ということは、これから何かがおきる」
「かもしれないですねぇ・・・ただ良い事なのか悪い事なのかは解かりませんが」
「ふむ・・・確かにの・・・しかし・・・茶も出んのかここは・・・」
「夜一サン・・・」
がっくりと肩を落とし夜一と自分の分のお茶を用意した
それから暫く他愛もない会話をして夜一は帰っていった
王族が動いている・・・サンのことですかね・・・
でも、まぁいずれわかるでショ
さて・・・月が二つ見えるということは解かった。あとは、その場所・・・ですねぇ
鏡・・・もしくは鏡のようなもの・・・窓・・・窓はいっぱいありすぎて特定できない・・・
ふぅ、と溜息をついて湯飲みを手に取ると
中で揺らめいているお茶に自分の瞳が映った
あぁ・・・水面・・・湖・・・湖なんてありましたっけ・・・?
確か・・・十三番隊の浮竹サンの部屋は湖の上に建てたんでしたねぇ・・・
今夜行ってみましょうか・・・雨乾堂へ・・・
今夜は見事な満月だった
病気がちな浮竹のために建てられたという雨乾堂
その下の湖が月を映し、月明かりを反射し幻想的な空間を作り出していた
は薄絹を身に幾重にも纏い月を見上げていた
ふわりと月に向かい微笑むと 湖に映る月に向かい歩を進める
の身体を湖が飲み込むことはなく
水面の上に立ち月明かりを浴びるはまるで天女のようであった
・・・喜助さん・・・見つけてくれるかな・・・
一度目は驚き、二度目は安らぎと仄かに灯った心の灯り
は喜助に会って確かめたいと思った
その心に灯った灯りはなんなのか・・・
それだけではなく、ただ喜助に会いたかった。ただそれだけだ
だけどそれを伝えるのは少し癪で謎掛けを残して消えた
一度目は偶然、二度目は喜助が自分に会いに来てくれたと思いたいから・・・
水の舞台で袖を、裾を翻し舞う
腕に通した金銀の細い腕輪が乾いた音をだす
裸足の爪先が水面に触れれば、波紋が月を揺らす
まさに天女の舞いであった
喜助は屋根伝いに雨乾堂へ向かっていた
に会いたい、昼だけでなく夜も・・・
募るこの想いはなんなのか
興味、関心・・・そんなものではない
これは・・・恋心・・・
「・・・らしくないっスねぇ・・・」
苦笑しながら雨乾堂の屋根に着くと、聞こえてくる金属音
目を向ければが湖の上で舞っていた
呼吸をすることも忘れてしまうくらい見入ってしまう
が視線を巡らせると屋根の上に人影が映った
舞うのをやめて喜助を見上げ、嬉しそうに笑う
喜助は軽く跳躍して対岸の木の枝に移る
も喜助を追ってその隣に座る
「こんばんわ、喜助さん」
「こんばんわ、サン」
視線を交わらせればどちらともなく笑いあう
「よく此処がわかりましたね?」
「難しかったですよ〜あの謎掛け」
「そうですか?」
「そうです。それにしても・・・先程はキレイでしたよん」
「それはありがとうございます」
ふふっ、と恥ずかしそうに微笑み月を見上げた
「月が綺麗ですね・・・」
「そうですねぇ・・・月見酒をと言いたい所ですが
今日はお酒を持ってきてないんですよ」
「あはは、そうですね私も持ってません
でも・・・きっと明日も綺麗な月夜になるだろうから・・・
もしよろしければ お付き合いしてもらえます?」
「アタシでよければ何時でも」
「ありがとう・・・でも・・・不思議」
「何がです?」
「こうして喜助さんと話ができていること・・・」
「そうですかぁ?」
「そうです、本当なら私はまだ此処にはいない存在なのに
喜助さんには私の姿が見える・・・なにか私達って不思議な繋がりがあるのかも・・・」
「アタシもそう思いますよ、なぜアタシだけに見えるのか
それはアタシにも解かりませんが・・・でも、アタシは嬉しいですよ
サンに出会うことができて」
「本当、ですか・・・?」
「えぇ・・・」
なぜか寂しそうに微笑むをそっと抱き締める
は驚いたように身を竦ませるが、ゆっくりと両手を喜助の背に回す
「サン・・・貴方を好きになりました
どうか、アタシと一緒にいてくれませんか?」
喜助の言葉で自分の心に灯った灯りがなんなのか気付いた
それは、恋心・・・
「・・・喜助さん・・・私も貴方のことが好きです・・・
でも、今私のことは話せないあと2・3日待ってくれませんか・・・?」
その言葉に喜助の腕に力がこもる
そうだ、自分はの事を何も知らない・・・それでもいいと思った
傍にいてくれるなら・・・
「いくらでも待ちますよ・・・貴方のためなら」
「ありがとう・・・」
「じゃあ・・・約束の印に」
抱き締めていた細い身体を開放して
両手をの頬に添え親指で桜色の唇をなぞる
は次の行為を察して瞳を閉じた
喜助はゆっくりと口付けた まるで神聖な儀式のように・・・
