![]()
いつも見る夢の中で、綺麗な人が私を見ている
あれは誰なんでしょう・・・菫色のとても優しい瞳をしている人・・・
夢だとは思えない出来事もあった
それは幼い時から何度も
暖かい何かが私を包んで、何時の間にか私は眠ってしまう
眠りに落ちるほんの一瞬・・・あの優しい菫色の瞳が見える
はっきりとした姿は夢の中でしか見れないけれど
女性・・・なのだと思う
貴女はいったい誰なんですか・・・・・・?
教会の孤児院にいた時も
ワイミーズハウスに引き取られ生活している間も
そして『探偵』として活動をしている今も
あの暖かい雰囲気が私を包む時がある
私が唯一、安堵し幸福というものを感じることができる時
そして眠りに落ちる時に垣間見る菫色を見て嬉しく思う
名前も、何処にいるのかも・・・生きているのかさえも知らない
ただ彼女が存在するということだけは知っている
幼い頃、私は何を思ったのかキルシュ・・・ワタリから貰ったビー玉を
彼女に渡すことができた、のだと思う
よく覚えてはいないけれどビー玉を握った手を差し出した時
菫色の瞳が嬉しそうに細められたように見えたから
翌日、何処を探してもビー玉は見つからなかった
そして数日後、枕元に小瓶に入った砂糖菓子が置かれていた
ワタリに聞いても誰がくれたのか判らなかった
訝しんだワタリが色々と調べていたようだが
何も判らず、その砂糖菓子も返してもらった
後で調べたらその菓子は『金平糖』という日本で作られている菓子だった
中身は全て食べてしまったけど、その小瓶は今でも持っている
幼い頃から私は周囲とは違う存在だった
子供が喜ぶような玩具や屋外に出て遊ぶといった事にも興味はなく
本を読み知識を吸収してパズルを解く。それが唯一の私の興味を引いたものだった
最初は紙面での謎解き、推理小説をパズルに見立てたこともあった
そしてフィクションでは飽き足らずテレビなどで報じられる事件の推理に没頭していった
謎解き、推理をしている時だけが楽しかった。
その後の達成感が自分は生きていると、自分の存在を実感させてくれた
そんな『異質』な私を彼女は暖かく包んでくれる
彼女の存在があったから私は人間の温もりというものを知ることができたのだと思う
自分の部屋に監視カメラを付けてみたりもしたが
彼女の姿を捉えることはできなかった
ただ、彼女を感じる事ができた日の映像には
黒い揚羽蝶が一羽何もない空間から現れて
暫く私の周りを漂いそして空間に吸い込まれるように消える
なんとも不思議でどこか幻想的な映像だった
非科学的な事は全く信じない私だが、彼女の事は別だ
実際に自分自身が体験しているということもあるのだろうが・・・
ぼんやりとパソコンのモニターを見ながら彼女の事を考えていた時
ワタリがケーキと紅茶を用意して持ってくる
「L・・・」
「なんですか?」
「本当にまた捜すのですか?」
「もちろんです」
「名前も、住んでいる場所も分からない人間ですよ
世界人口は知っていますよね?それに何度目ですか?」
「えぇ、今年は2001年ですから推定で62億人くらいでしょうか
それから4度目・・・ですね」
私が淡々と答えながらケーキを受け取ると
ワタリは眉間に皺を寄せて溜息を吐いた
「今回は日本を重点に探してください」
「・・・分かりました」
渋々といった感じでワタリは頷いてくれた
ほとんど、全くといってもいい程手持ちの情報がない人物を捜すのは
雲を掴むようで、何も分からないまま時間は過ぎる
たとえ亡くなっていたとしても
私は貴女の存在をこの目で確かめたい
そして貴女を感じることができる時に速まる鼓動の理由を知りたい
ワタリが淹れてくれた紅茶に砂糖を入れようと
シュガーポットに手を伸ばした時
テーブルを挟んだ向かい側のソファの上に光る球体が現れた
「「!!?」」
驚き時間が止まったかのように固まり目を見開く私達の前で
その球体は大きさを、形を変えていく
そしていつしか光は消え、音もなくソファの上に落ちたのは
黒く長い髪をした人間だった・・・
警戒しながらソファに横たわる非現実的に現れた人物に近付き
その顔を見て私は息を呑んだ
「っ!!!」
彼女だ・・・!夢の中に現れる菫色の優しい瞳を私に向けてくれ
私の『孤独』を癒してくれる、ずっと探し続けていた女性・・・・・・
そう私の直感が告げている
震える手で彼女の頬に触れてみると
ひんやりとしたその冷たさに背筋が粟立った
慌てて口元に手を持っていくが、呼吸を確認できない
頭の先から爪先まで冷たいものが駆け抜ける
そして首筋に手を当ててみても感じられない
彼女が生きているという証が・・・
ワタリも私の様子を見て彼女の手を取り顔を顰め
次に彼女の瞼を押し上げ瞳孔を確認している
その時見えた菫色・・・やはり彼女は・・・・・・っ
「そ・・・んな・・・・・・やっと・・あ、なたを確認、する事が・・できたのに・・・
やっと・・・貴女が私の前に現れて、くれたのに・・・・・・何故・・・っ」
「L・・・この方が・・・・・・あなたの探していた方なのですか?」
「そう・・・です・・・・・・っ」
瞳を・・・瞳をあけてください・・・っ、私を見てください・・・
あの優しい眼差しで・・・私を・・・・・・っ
呼吸すらままならない
彼女を抱き締めてもあの温もりを感じられない
確かにこの腕の中にいるのに・・・
「何故、こんな・・・・・・っ・・・・・・あ、んまりです・・・酷い、です・・・っ」
私から零れる涙が彼女の頬を濡らす
私、泣いてます・・・悲しんでます、苦しんでます・・・辛いです
そんな時、いつも貴女は現れて暖かく包んでくれた
なのに今・・・貴女は冷たいままだ・・・・・・
「起きてください、よ・・・お願いです・・・・・・起きてくださいっ」
「L・・・彼女は、もう・・・・・・」
「嫌ですっ・・・認めません、認めたくありません・・・っ」
私に初めて温もりをくれた人なのに
貴女の名前を聞く事もできないのですか・・・・・・!?