この日、剣心は薫から買い物を頼まれ街に出ていた
賑わう人々の波をぬい夕飯は何にしようかと考えながら歩いていると
見知った姿が目に入る。長身痩躯の宿敵、斎藤 一

京都で生死不明となっていたが、やはり生きていたかと少し安堵の溜息を漏らす
そこでふと気付いたのは、その側に少女がいて何かを手渡していた
そして少し緩められた斎藤の口元に剣心は驚いていた


(斎藤が・・・あの斎藤があんな顔をするなんて・・・!!
 あの少女只者ではござらんな・・・まさか、斎藤の娘!?)


愕然としながら斎藤を凝視していると、斎藤がその視線に気付く
目の前の少女の頭を優しく撫で一言二言言葉を交わすと
その少女はくるりと剣心の方を向いて走り出す
その少女の姿に剣心はさらに驚く


「・・・!!(!?)」



剣心のその表情を斎藤は見て取り、ニヤリと口角を上げ
今、己の元から離れた少女に声をかける


美桜みお!母様に晩飯を用意しておけと言っておけ」

「はいっ!」


美桜と呼ばれた少女は振り返り、嬉しそうに返事を返す
斎藤に手を振り剣心の前を通り過ぎるとき
ふわりと香る桜の香りと鈴の音が剣心の感情を昂らせる
美桜を目で追い、斎藤へと視線を戻せばその姿はすでに消えていた






目の前を通り過ぎた少女は忘れえぬ恋人に生き写しであった
年の頃は弥彦と同じくらいであろうか
無邪気にあの斎藤に笑いかけ、手を振る姿が愛らしかった

そこで剣心は考える
美桜と呼ばれた少女はの娘ではないかと
ならば父親は誰だ?年の頃が弥彦と同じくらいなのを見ると
身に覚えがない訳ではない、それならば何故は自分に話さなかった?
それかあまり考えたくはないが斎藤の娘なのか?
となると、は斎藤と・・・確かに斎藤は妻がいるとは言っていたが
名前が違う・・・しかし斎藤も名を変えているのだからも変えているのかもしれない
そして斎藤のあの言葉・・・


剣心はぐるぐると考えを巡らせながら悶々とした日々を過ごした
そんなある日、転機はやってきた

出稽古に行っていた薫達が先日の少女を連れて帰ってきたのだ
どうやら道に迷って家に帰れなくなったらしい
居間に通され薫に待っていろといわれたのか所在なさげにそわそわしている
剣心がお茶を煎れて部屋へ入れば、びくりと反応する


「はじめまして、でござるな。拙者は緋村 剣心と申す、美桜殿でよかったでござるかな?」

「ど、どうして、私の名前・・・・・・っ」


おずおずと美桜が剣心に視線を向けると、驚いたように目を瞠る
美桜の表情に首を傾げ、お茶と菓子を薦める
着替えを済ませた薫が入ってくるとその背後に隠れてしまう


「あ、あら?どうしたの、美桜ちゃん。
 ・・・ちょっと剣心、あんた何かしたんじゃないでしょうね!?」

「お、おろ?拙者は何も・・・」

「じゃあ、なんでこんなに怯えてるのよっ」



剣心の胸倉を掴みガクガクと揺さぶる薫に遅れて入ってきた
弥彦は溜息をついて美桜に茶を薦める
その弥彦の頬が少し赤らんでいるのを薫は目敏く見つけからかい始める


「弥彦ったら、何赤くなってんの〜?燕ちゃんに言いつけるわよ〜」

「う、うるせぇっ」



今度は薫と弥彦が言い合いを始め、美桜はおろおろと見つめるばかりだった
剣心は苦笑して美桜の頭をぽんぽんと撫でにこりと笑う


「いつものことでござるよ・・・拙者、美桜殿に聞きたいことが・・・」


剣心の言葉を遮るように剣呑な殺気が放たれる
庭を見れば何所から入ってきたのか、斎藤が立っていた


「あ・・・せ「美桜っ、・・・ったく、こんな所にいたのか・・・」


嬉しそうに顔を輝かせる美桜に履物を取ってこいと促すと
こくりと頷いて履物を取りに行く

美桜はそのまま居間に戻らず、庭先へ姿をみせると
斎藤と剣心が睨み合っている


「あ、あの・・・」

「お前の片割れが血眼になって探していたぞ・・・
 それに母様も、時尾も心配していた・・・」

「ご、ごめんなさい・・・」

「それはあいつ等に言うんだ・・・・・・帰るぞ
 ・・・・・・こいつが世話になったな・・・」


斎藤は美桜の手を引き踵を返すと、慌てて美桜は薫達に頭を下げた
薫と弥彦は突然の斎藤の登場と目の前の光景に唖然としている


「・・・っ、待つでござるっ斎藤!!」

「・・・なんだ?」



足を止め剣心を振り返る斎藤の眼は酷く冷たい


「聞きたい事が、あるでござる・・・」

「・・・今のお前に話すことなぞ、何も無い」

「斎藤!!」


今度こそ振り返ることなく斎藤は美桜を連れて神谷道場を後にした

残された薫達は信じられないと口にする



「あいつ・・・生きてたんだ」

「っていうか、何あれ!?勝手に人ん家入って来てっ
 それに・・・まさか、ひょっとして・・・美桜ちゃんって斎藤の子供!?」

「マジかよ!?・・・剣心は知ってたのか?」

「いや・・・斎藤が結婚していたのは知っていたでござるが・・・」

「はぁ!?あんなのでも結婚できるのか!?」

「そんなことより、なんであんな可愛い子が、よりにもよって斎藤の子供なのよっ」



この後神谷道場では、斎藤と美桜について延々と論議されたそうな・・・

















そんな事を知る由もなく斎藤に手を引かれた美桜は家へと向かっていた
そこに美桜より少し背の高い少年が仁王立ちして待っていた
赤茶色の髪に腰には木刀、いつも竹刀を背負っている弥彦のようにも見える


「美桜っ」

「け、剣護・・・ごめん、ね・・・?」

「どれだけ捜したと思ってんだっ、お前は方向音痴なんだから
 あんまり一人で出歩くなっ」



わしゃわしゃと美桜の黒い髪を掻きまぜる
美桜は自分の片割れ、双子の兄をまじまじと見つめる


「?俺の顔になんかついてるか?」

「ううん・・・あ、あのねっ・・・剣護によく似た人に、会った・・・
 ・・・・・・先生、あの人は・・・っ」

「美桜っ、良かった・・・心配してたのよ?」

「ごめんなさい・・・母様・・・」


剣護の後ろから現れたは美桜を抱きしめ斎藤に頭を下げる
斎藤は眼で先に家に入っていろと促せばは頷き美桜を連れていく
その場に俯き、何かに耐えるように立っている剣護を斎藤は見据える


「・・・どうした?」

「い、今更・・・父様なんて、俺達には必要ない・・・っ
 俺が・・・っ、俺が護るんだっ、美桜も母様も・・・俺が強くなって護るんだっ」

「・・・・・・そうか・・・なら、もっと強くなれ」



斎藤は先ほど向き合っていた幕末からの宿敵によく似た少年の頭を
乱暴に撫でて家に入っていく
一人残された剣護は唇をきゅっと噛み締め、意志の強い眼差しで空を見据えてから
家族の待つ家へと入って行った





・・・」

「はい?」

「美桜が抜刀斎に会った」

「・・・そうですか・・・・・・」



子供達を寝かし付けて斎藤夫妻と共には軽く酒を飲んでいた
そこで斎藤が今日の事を話した
は哀しそうに眉を顰め酒を口に含む


さん、そろそろ素直になったら?」

「・・・私は素直ですよ?剣心の・・・緋村の今の生活を壊したくはないんです・・・」

「・・・・・・阿呆が・・・」









  


弐萬打hitありがとうございます!!
なんか・・・ヒロインさんと剣心、というより
お子様と剣心の話になりそうな予感・・・(マテ