【友達】




「う・・・ん・・・」



眩しい光には顔を顰めて閉じていた瞳を開ければ、そこは林の中だった
記憶にあるような、ないような・・・どこか懐かしささえ感じさせる

辺りを見回しながら道なき道を進めば
眼下に広がる小さな村



「・・・ここは・・・柳生の里・・・?」

「そうだよ、お兄ちゃんはだぁれ?」

「え!?」



小さな気配と共に可愛らしい声が聴こえた
振り返れば十歳くらいの女の子がを見上げている



「お、俺は・・・ 、君はこの里の子供だね?」

「ううん、私は巻町 操、蒼紫さまと爺やが迎えにくるまでここにいるの」

「操ちゃんでいいかな?」

「うんっ、お兄ちゃん」

「じゃぁ・・・操ちゃん、長老の所に連れていってくれるかい?」

「いいよ!お兄ちゃんがここにいるってことは『やぎゅう』の人なんでしょ?」

「・・・そうなるね」



じゃあ早く行こう!との手を取り村へと下りていく
村へと下りれば懐かしい風がを包む

畑仕事等をしている村人は操に手を引かれたをジロジロと見つめるが
はどこ吹く風で気にも止めていないどころか
村の空気を懐かしんで、手を引きながら振り返る操に微笑んでいた
行き着いた先は村で一番大きな屋敷



「長老さまぁ〜、お客さまですよ〜!」

「これ、操・・・女子が大声ではしたない・・・」



屋敷の奥から現れたのは白髪の好々爺
しかし何処か威厳のある風情を醸し出していた



「客人・・・か?」

「こんにちは・・・長老殿でいらっしゃいますね?」

「如何にも、儂はこの村で一番長生きだからのぅ・・・」

「・・・(時代が変わっても喰えない爺なのはやっぱり血筋かっ)」

「何か言いたそうじゃのぅ・・・しかし、ここは隠れ里
 ここへ来たということは『柳生者』かの?」

「はい・・・」



口調は柔らかいが、幾分か視線が鋭くなる長老に
は懐を弄ると小柄を出して見せる


「・・・ってか印籠は・・・あ゙ぁ     っ」

「なんじゃい騒がしいのぅ・・・・・・っ、この家紋はっ」

「印籠・・・俺の・・・・・・(部屋に置きっぱなしにしてたんだっけ・・・
 剣心が持っててくれるといいんだけど・・・)」

「名を・・・聞かせてもらえんか?儂は柏崎 厳至げんじと申す」

「操の爺やのお兄ちゃんなのっ」

「俺は といいます」

「なんと・・・っ、操・・・先程お菊が団子をこしらえておった、貰っておいで」

「うんっ」



操は嬉しそうに厨があるであろう方向へ走って行くと
厳至はすぅっと眼を細めを見据える



「立ち話もなんじゃ・・・こちらへ・・・」

「はい、お邪魔いたします」




父に連れられて幾度か訪れた懐かしい屋敷には足を踏み入れる
通された部屋も、見覚えがある
座布団を薦められ、ゆっくりと厳至と向かい合う



殿・・・その腰にあった刀は『千子村正』ですな?」

「はい・・・どうしてそれを?」

「この里には代々伝わっておる事がある
 我ら柳生の先祖にして、『裏柳生』を精鋭にしたとされる御方・・・
 柳生 十兵衛殿には神隠しにあったとされる娘がいたと・・・
 その娘が持っていたのが『千子村正』・・・その刀の鞘には
 紅い彼岸花の蒔絵が施されている。娘の名は『』と『』の二つ名を持っていると・・・」

「・・・そう、だったん、ですか・・・(神隠し・・・かぁ・・・)」

「貴方様はその神隠しにあったという娘の血筋の方ですな?」

「どうでしょう・・・?そう言えば、俺の名を聞いて驚かれたのは
 『』という名ですか?」

「それもあったんじゃが・・・
 十兵衛殿の一人目の奥方の名を 由良・・・系図が残されておりましてなぁ・・・」

「なるほど・・・確かに、俺は柳生 十兵衛の血筋ですよ。そう聞いています(本人から
 ・・・ってか一人目の奥方?二人目がいるの!?)」



厳至は感慨深げにを見つめていると、操がお茶と茶菓子をもってくる
お礼を言って頭を撫でれば嬉しそうに部屋を出て行く



「この刀は父上から持っていろといわれたんです・・・
 小柄も・・・印籠もありましたが・・・印籠は今手元にないんです」

「そうじゃったか・・・この里の事は?」

「父上から聞いておりました」

「その御父上は?」

「・・・もう、この世にはおりません・・・」

「すまんことを聞いたのぅ・・・」

「いえ・・・あの・・・墓は・・・・・・ありますか?」

「おぉ、あるとも。この屋敷の裏手にの、行ってくるといい」



聞きたい事はまだあったが、それよりも父の魂の宿る場所へ行きたかった
父に会えるわけではないけど・・・それでも行きたかった

厳至に礼を言い、屋敷の裏手へと廻れば
そこには大きな石碑が建っている
なにも刻まれていないそれは遠目から見ればただの岩だろう
そこに片膝をつき頭を垂れる



「父上・・・母上・・・柳生 、唯今戻りました・・・・・・父上・・・っ
 長らく不在にした事・・・お許しください・・・っ・・・・・・っぅっく・・・ふ・・・っ」



瞳を閉じれば父と母が並んで笑いかける姿が浮かぶ
は暫くの間、肩を震わせていた。



サマ・・・!]

「へ・・・?」



バサリと翼を羽ばたかせ、舞い降りてくる一羽の鳥
それは大きな熊鷹だった


サマデスヨネ?]


目の前の熊鷹が語りかける

の眼にはその鷹の後ろに一人の少年の姿が見える



「君は・・・」

[僕ハ佐助トイイマス、様ガ神隠シニ合ワレタ時
 十兵衛サマトサマニ助ケテイタダイタ・・・憶エテイマセンカ?]

「あぁーっ!」

[良カッタ・・・憶エテイテクダサッタンデスネッ
 ドウイウ訳カ、僕ハ記憶ヲ持ッタママ生マレ変ワッタヨウデ・・・
 十兵衛サマモズットサマノ事ヲ探シテイマシタ・・・
 マサカコノヨウナ場所デ会エルナンテ・・・!]

「うん、私もよく判らないんだけどね・・・気がついたら二百年以上経った
 この時代に来ていたんだ・・・もう、この時代に来て三年は経ってるけど・・・」

[僕モ最初ハ驚キマシタ・・・マサカサマ本人ダトハ考エラレマセンデシタカラ・・・]

「まぁ、幕末に来てしまった私が一番驚いたけどね」

[ソレデモ、生キテイテクダサッタ・・・ッ
 十兵衛サマハズットソレダケヲ願ッテイマシタカラ・・・]

「そっかぁ・・・」



少し哀しそうにの瞳が揺れた
跪いたままのに佐助は近寄り頭を摺り寄せる


[コノママ僕ヲ貴女ニ仕エサセテクダサイ・・・
 昔、十兵衛サマニ仕エテイタヨウニ・・・]

「うーん・・・私としては・・・友達、がいいなぁ・・・」

「ソンナッ、僕ハ貴女ニモ助ケラレタノニッ]

「それは昔の話でしょー?」

[デモッ]

「じゃぁ・・・友達も兼ねてよ」

[ソレナラ・・・]

「決まりねっ、でさ・・・佐助の言葉って、私以外の人にも聞こえるの?」

[イエ・・・聞コエナイト思イマス]

「なんだー残念・・・佐助に人を探してもらって伝えて欲しい事があったのに・・・」

[ソレナラ・・・文ヲ出サレテハ?届ケマスヨ?]

「その手があったね」



行こう、と佐助を腕に呼べば器用に腕から肩へと移動する
華奢なには少し重いが“恋人”ではなく“仲間”でもない“友達”がには嬉しかった











厳至の屋敷に戻り、少しの滞在を願うと二つ返事で了承された
用意された部屋に入り窓際の文机に向かう
墨を溶き筆を持ち、文など書いた事のないは考える・・・


聞けば今は明治三年・・・鳥羽伏見の戦いから三年は経っているということだ
さて、どうしたものかと筆を片手にうーんと唸ってしまう



「柳生の里に居ると書いても場所は教えられないし・・・
 何より待つのは好きじゃない・・・私も旅に出たいしなぁ・・・
 うーん、私の事が判れば剣心も探してくれるか・・・
 ・・・・・・!そうだ・・・」

サマ?]



さらさらと筆を動かし一首の歌を書く


『身はかくて さすらへぬとも
   君があたり 去らぬ鏡の かけははなれじ』

(鏡を見れば必ずあなたの姿が映るように
 私の心もいつでもあなたと一緒にいるのですよ)



嘗て母が父に贈った一首だ
何時だったか剣心に聞かせたことがある
きっと憶えてくれているだろうとその歌だけを書くと
墨を乾かし佐助の足にしっかりと結ぶ



「ごめんね?出会って早々遣ってしまって・・・」

[イエ、オ任セクダサイ。ドチラニ届ケレバ?]

「それがねぇ・・・何処に居るか判らないんだ・・・緋色の髪に・・・」

[アァッ、サマ・・・僕ハ色ハワカリマセン・・・]

「へ?そうなの?」

[ハイ、スミマセン・・・]



しゅんと項垂れる佐助には初めて知った・・・と驚き
申し訳なさそうに項垂れた頭を撫でる



「ごめんね・・・知らなくて・・・」

[イエ、ソンナ・・・目印ニナルモノハ、アリマセンカ?]

「んーと、左頬に十字の刀傷があるくらいかな・・・
 背丈は私より少し高いの・・・緋村 剣心という名よ
 流れると言っていたから、本当に何処にいるか判らないの
 それでも大丈夫?」

[ハイ、探シマス。少シ時間ガカカルカモシレマセンガ・・・]

「無理はしないでね、疲れたら休む事。ちゃんとご飯もたべること
 約束してくれる?」

[ハイッ、ヤッパリ・・・十兵衛サマノ娘デスネ。ソンナ所ハソックリデス]

「親娘だからね〜」

[ソレデハ、行ッテキマス!]

「気をつけてね」




大きく翼を羽ばたかせ空に舞い上がる佐助を見送りながら
今何処を歩いているのかも判らない恋人を想った・・・









  


会話多っ(汗
原作捏造しまくっててます・・・柏崎念至(翁)さんの兄を勝手につくったり
御庭番衆を勝手に柳生の里の者にしたり・・・スミマセン(平謝

しかも今回剣心でてこないし・・・(汗





羅刹用語・豆知識

【裏柳生】
新陰流を道統とする剣術及びその一門を表柳生と称すのに対し
伊賀・甲賀の忍びを取り入れ、主に将軍(幕府)の影働きを行った柳生一門を指す
十兵衛様が係わったとするのは管理人の捏造です・・・悪しからず(汗


【柳生一族の墓は一つ】
柳生一族は『一つ墓』という形態を取っていたという。
要するに「いつどこで死のうとも、この墓のもとに柳生の士として眠る」という考え方からくる
隠密として諜報活動などをしていたので一族として『どこで誰が死ぬかわからない』
という覚悟が伺える


ちなみに柳生の里は奈良の山中にありました