【恋文】
佐助が剣心を探しに旅立って早一週間が過ぎた
その間に操はに懐き、の傍を離れようとしない
「操ちゃんのお迎えはいつくるんだろうねぇ・・・」
「爺やが来ても操、行かないもん、蒼紫さまだと判らないけど・・・」
「操ちゃんはその『蒼紫さま』が好きなんだね」
「うんっ、大好きっ」
戊辰戦争も終結したばかりで、今だ慌しいのであろう
幕府側も新政府側も落ち着くのはもう少し先だろうと厳至は言っていた
が自分の事を『元・維新志士』だと告げたら大層驚かれたが
人の考えは千差万別と厳至は笑っていた
「兄は?」
「うん?」
「兄はずっとここにいるの?」
「そうだなぁ・・・操ちゃんのお迎えが来たら、旅に出るよ
大切な人を探さないといけないからね・・・」
「大切な人・・・?」
「そう、操ちゃんの『蒼紫さま』みたいに俺にとって一番大切な人だよ」
「操、兄も大切だよ?」
「ありがとう、俺も操ちゃんが大切だ。大切な妹だよ」
「ほんとにっ?」
があぁ、と笑いながら頭を撫でてやれば
嬉しそうに満面の笑みでに抱きつく
先日『兄、操のお兄ちゃんになって』と言い出して
厳至も『それは良い』と微笑ましく頷いていた
佐助は剣心を見つけられたかな・・・ 、そう思いながら
高く澄んだ青空を見上げた
その頃、佐助はというと・・・
[ハヤマッタカモ・・・全然見ツカラナイ・・・]
後悔していた・・・
の元を飛び立って、とりあえず西に進路を決めてここまで来た
今佐助が居るのは備中(岡山県西部)街中では屋根の上から
旅人の通る畦道では木の上から、と目を凝らし目印の左頬の十字傷を探すが見当たらない
[一週間カ・・・コノ広イ日本全部ヲ探サナイトイケナイ・・・
ヤッパリ、ハヤマッタカナ・・・]
屋根の上で小さな頭を垂れると、そう言えば・・・との言葉を思い出す
『・・・緋村 剣心という名よ、流れると言っていたから・・・』
流れるとは・・・流浪人の事であろう、ということは街中に宿をあまり取ったりはしない
いるとしたら・・・橋の下とかだ・・・っ。
と考えが至り、佐助は空へ舞い上がった。向かう先は河川
丁度喉も渇いていたし・・・と川岸に降り立って見れば
近くに大きな橋、その下には人影も見える
ぴょこぴょこと近寄ってみれば、痩せた小柄な男が座っていた。
方向から左頬は見えない
[・・・違ウ、カナ?座ッテイルカラ身ノ丈ハ判ラナイケド・・・
サマガ大切ニ想ワレル方ダ・・・モット、コウ・・・]
くるるっと喉を鳴らし首を傾げての想い人を想像していれば
座っていた男が佐助に気付き正面から顔を見せる
[・・・!左頬に十字傷!・・・・・・・・・マサカ・・・
デモ・・・・・・サマッテ・・・]
遥かな昔、十兵衛が『は面食いかもしれん』と言っていたのを思い出した
それほどに、佐助の目の前に居る男は『優男』以外の何者でもなかった
「鷹・・・?水を飲みに降りてきたのか・・・珍しいな・・・」
立ち上がって佐助に近付いてくると
より少し背が高い事が判る。そして本能が知らせる
[間違イナイ・・・!コノ人ダ!]
現実を認めたくない気持ちもあったが
とりあえず嘴で足に結ばれている文を指して知らせてみる
「・・・?何か知らせを運んでいる途中なのか?
伝書鳩はよく聞くが・・・鷹を遣っているとは本当に珍しい・・・」
[アンタヘノ知ラセダヨ!]
叫んでみるが伝わる筈もなく、しっかりと結ばれている文を
なんとか嘴で解こうとするが、破ってしまいそうでそれが怖い
「取りたいのか?どれ・・・貸してみろ」
目の前に跪く男に佐助は足を差し出す
解かれた文を男は佐助に『ほら、取れたぞ』と見せる
焦れったくなった佐助は男の持っている文の端を銜えてそれを広げて見せれば
男は目を見開いて驚いている
「この筆跡は・・・それにこの歌・・・・・・」
佐助は確信した『この人が緋村 剣心だ』と
文を片手に剣心は思いを巡らせる
この歌をいつだったか聞いた事があると・・・
「・・・その歌はどういう意味だ?」
「んとね・・・『鏡を見れば、必ず貴方の姿が映るように、
私の心もいつでも貴方と一緒にいるのですよ』・・・だったかな・・・?
父上の懐に入っていたんだ・・・お守りみたいにさ・・・盗み見した時は怒られたなぁ・・・」
「まさか・・・・・・?・・・はこの時代にいるのか!?」
剣心の問いに佐助は声高く一鳴きすれば、剣心はその場に力が抜けたように座り込み
食い入るように文を見つめに想いを馳せる
「・・・・・・っ」
涙を堪え、何度もの名を呟く剣心に佐助は擦り寄ると
「ありがとう・・・」と翼を一撫でされた
ふいに剣心に抱き上げられ驚き翼をばたつかせようとすれば
「疲れただろう?何処に居るのかも判らない俺を探して・・・
の元に戻りたいかもしれないが、今日は休んでいけよ
本当はの居場所を知りたいけど・・・それは俺が探すよ
君が俺を探してくれたように・・・今は文には書けない場所にいるんだろ?」
剣心の澄んだ瞳に見つめられ、暖かい優しさに触れて
佐助はの選んだ男はこういう人間なんだと思い
優しいだけでなく強くもあってほしいと願った
一晩剣心の元で過ごし、朝にはの元へ佐助は飛び立った
剣心は佐助を見送り、羽ばたいて行った方向へ足を向ける
きっとその方角にはいるから・・・
「あ!爺や!!」
「ひょ っ、操ォ!!」
と遊んでいた操は屋敷の門を潜ってきた人影に抱きつく
厳至によく似た老人であった。その後ろから青年が一人付いてくる
背の高い、整った顔立ちで操が「蒼紫さまっ」と抱きついたのを見て
あぁ、あれが操ちゃんの『蒼紫さま』かぁ・・・とついつい見つめてしまう
「操・・・この御仁は?」
「ん?兄だよっ、操のお兄ちゃんになってくれたのっ」
「操や・・・もう少し判るように話してくれんかの?」
厳至によく似た老人が呆れながら操に聞いている横で
蒼紫がに向かって殺気を放つ
「・・・『修羅童子』・・・・・・」
「・・・蒼紫様?」
急に殺気を放ちだす蒼紫に老人は訝しげにを見る
鋭利な殺気をは軽く受け流していると
奥から厳至が出てきて蒼紫に声を荒げる
「やめんかっ蒼紫!この方は我らが先祖、柳生 十兵衛様のお血筋に連なる方!
たとえ『維新志士』であったとしても、それは思想の違い。傷つけることは許さんっ」
「・・・長老!?」
「に、兄ちゃん?」
厳至の言葉に驚き瞠り、自分を凝視する二人には苦笑を漏らす
兎に角話しは中ですると厳至は二人を招きいれに操を頼むと言った
厳至の話に蒼紫達は大層驚いた
その後も呼ばれ、自己紹介を交わす
厳至によく似た老人は厳至の弟で柏崎 念至と名乗り
その隣にいる青年は四ノ森 蒼紫と名乗った
どちらも『隠密御庭番衆』であると厳至から説明を受ければ
は蒼紫が自分の事を『修羅童子』と呼んだ理由が判った
それから暫くして、は縁側に腰掛け空を眺めていると
隣に蒼紫がやってくる
「殿・・・」
「でいいですよ、蒼紫さん」
「・・・俺も敬称はいらん」
「判りました・・・・・・俺に、何か?」
「いや・・・操が世話になった・・・」
「いいえ、本当に妹ができたみたいで嬉しかったんですよ」
「そうか・・・操が言っていたが、旅に出るのか?」
「そうですね・・・友達が帰ってきたら、旅に出ます
操ちゃんのお迎えも来た事ですし・・・」
そう言いながらもう一度空を見上げれば影がさした
[サマ!]
「佐助っ」
立ち上がり腕を差し伸べれば、そこに舞い下りる一羽の熊鷹
その足を見れば文がない事に気付きは微笑む
[チャントオ届ケシマシタヨ!備中ノ橋ノ下ニオラレマシタ]
「備中!?そんな所まで行ってくれたのか・・・ありがとう、佐助・・・」
そっと労わるように翼を撫でると佐助は嬉しそうにの頬に擦り寄る
蒼紫は不思議なものを見るような顔でに近付くと
「お前・・・鳥と会話が出来るのか?」
「ん?あぁ・・・この鳥だけだけど・・・さっき言ってた友達です」
珍しそうにと佐助を蒼紫は見つめるが、操がやってきて話はそこで終わる
は「備中かぁ・・・」と呟き自室へ佐助を連れていくと
厳至が念至を伴ってやってきて「これからどうするのか?」と聞いた
「そうですねぇ・・・旅に出るつもりではいますが・・・
何分路銀の目処がたってませんし・・・」
「それならば、京都の念至の元で働けばいい」
「は?」
「京都探索の拠点とするために儂が開いた料亭がある
そこで働いて路銀を貯めるといい。操も喜ぶことじゃしの」
先日、旅に出るなら路銀を用意すると言われ
はそこまで甘えるわけにはいかないと断ったばかりだった
そしてこの申し出、はこの老兄弟に感謝し、申し出を受けた。
それからは京都『葵屋』を拠点に剣心を捜し求めて旅に出ることになった
その間、佐助は何度もに剣心の元へ文を届けると言ったが
は自力で探すと頑なに首を縦には振らなかった
桂の元へ行った時には幾松に泣きつかれ、桂からは拳骨を貰った
廃刀令が施行されて間もない時期だったので
桂は特別に・・・と許可証を作ってくれもした
旅の途中で土方、沖田の死を知り
自分の知らない三年間を埋めるようにあちこちへと出向いた
剣心は月日が経つにつれて、不安にもなった
しかし懐にある文と印籠を握り、は必ずこの日本の何処かに居ると
信じて各地を流れる
そして、お互いを捜し求めてもうすぐ七年の月日が過ぎようとしていた・・・


次回より原作沿いに入りまーす
やっとですよ(笑
蒼紫さんとヒロインさんが絡んでますが・・・
剣心:おい・・・・・・(怒
りお:うげ・・・っ
剣心:なんだその『うげっ』とは
りお:いやぁ・・・お久し振りですね。剣さん
剣心:蒼紫が出て来るのは何故だ?
りお:・・・・・・・・・(滝汗
剣心:土方が消えたと思ったら・・・
りお:嫌だなぁ・・・別にヒロインさんを蒼紫さんとどうこうしようと
考えているわけじゃないんですよ?
剣心:当たり前だっ
りお:次回!感動?の再会です!
剣心:その疑問符が気になるがな・・・