【疑心】
「人斬り 抜刀斎と修羅童子が東京に?
・・・・・・って俺、京都にいるんだけど???」
「・・・そうなんじゃよ、君はここにいる
ということは、別の誰かがその名を騙っているということになる
しかも辻斬りをしているという情報もある・・・」
「辻斬り、ねぇ・・・別に『修羅童子』の名に未練も愛着もないけど
不本意な呼び名だしね・・・でもその名で辻斬り働きとなると、迷惑だなぁ」
京都、『葵屋』で念至に呼ばれ話を聞くと、は顔を顰める
念至も難しい顔をしてを見ている
「う〜ん・・・路銀も貯まってきたことだし・・・」
「東京に行かれるか?」
「うん、去年の秋に亡くなった桂先生の墓前にも行きたいし・・・
行方をくらました蒼紫も探さないと、操と約束したからね
(この噂を聞いて剣心も東京に行っているかもしれないし)」
「直ぐにでも発つかの?」
「そうだね・・・明日の朝にするよ
いきなり旅に出ると言うと操が怒るから」
苦笑交じりにそう言い、部屋に戻れば佐助がの元にやってくる
[サマッ、旅ニ出ラレルノデスネ!?]
「うん、明日の朝ここを発つよ」
[今度ハドチラヘ?]
「東京・・・私と緋村の通り名を騙って辻斬りをしている輩がいるらしい」
[ナンデスッテ!?]
「私が着くまでに捕まってればいいんだけど・・・
桂先生の墓前にもいきたいし・・・あと沖田さんの墓参りも・・・」
[デハ・・・]
「うん、幾松姐さんに文を届けてくれるかな?」
[ワカリマシタ、アト・・・緋村サンニモ文ヲ書カレテハ?
ヒョットシタラ東京ニイルカモシレマセンヨ?]
「そうだねぇ・・・この噂が耳に入ってれば東京に向かってるかもしれないね」
これまで再三佐助に剣心に文を書けと言われ続け
幾松からの文にも毎回最後には文を書いたのかと書かれていた
は幾松に東京に向かう知らせを書き、剣心には一首の歌を書いた


(こうやって貴方に会えずに苦しむのも 会って身を滅ぼすのも
今となっては同じこと それならいっそ この命をかけて貴方に会いたい)
二通の文を佐助の両足に結ぶと、一鳴きして空へ舞い上がった
が剣心に文を書かなかったのには訳があった
自分が舞い戻ってきたのは、姿を消してから三年も後のことだ
ずっと傍にいると約束したのに果たせなかった約束
今更、剣心の傍に戻っても良いのか?そう考える自分と
剣心に会いたい、剣心の傍にいたいと思う自分が鬩ぎあっていた
幾松は何度も背中を押してくれた
それでも行動に出れなかったのは怖かったから・・・
佐助の舞い上がった空はの心とは裏腹に高く澄み渡っていた
−東京−
「 ・・・どうやら、拙者の知らない所で
事が生じているようでござるな・・・『修羅童子』と聞いて来たのでござるが
が辻斬りなぞするわけないでござるし・・・ここも人違いでござったか・・・
だが、このまま放って置くわけにもいくまい」
剣心はひとつ溜息をついて先ほどの賑やかな少女の後を追った
この騒動が神谷 薫との出会いだった
その数日後に薫の自宅でもある道場が襲われ助けに入る剣心
自分の名を騙られるより、を騙っていたことに怒りが収まらなかった
自分よりはるかに大きい比留間 伍兵衛を軽々と倒し
残った比留間 喜兵衛を見据える
「抜刀斎の名に未練も愛着もないが
それでもお前の様な奴には譲れんよ・・・さて、残るは一人
黒幕のお前はこの程度では済ませられんな・・・
何より俺の大切な者の名を騙った・・・・・・
この逆刃の斬れ味、試してくれようか・・・」
剣心がそう凄めば喜兵衛は失禁して気絶してしまう
拾い上げた証文を破り捨て「出来れば語りたくなかった」と哀しげに微笑んだ
そんな剣心を薫は引き止めた
「『緋村 剣心』それが拙者の今の名前でござる
拙者も少し旅に疲れた、流浪人ゆえまた、何時何処へ流れるかわからないが
それでよければ、しばらく厄介になるでござるよ(一つ処にいればも俺も
互いを捜しやすいやもしれぬ・・・)」
こうして剣心は東京の下町、本郷は神谷道場に居候することとなった
それから直ぐにもう一人の居候として明神 弥彦が加わった
佐助が幾松の元へ文を届け、剣心を捜すべく空を舞っていた時だった
パァン!!
「いやあ!!」
[・・・銃声ニ悲鳴・・・?]
音と声がした方へ向かってみれば
川原で決闘紛いのことをしているようである
一人は長身の青年、もう一人は見覚えのある人間だった
[アレハ・・・緋村サン!?]
他には妙な男が二人(大・小)と娘に子供
その妙な男(小)の手には拳銃が握られている
佐助が空から様子を伺っていれば
長身の青年が妙な男(大)の顔に斬馬刀を投げつける
何やら話しているのだが良く聞こえない
妙な男(小)が懐から拳銃をもう一丁出して剣心に向けるのを見ると
佐助は自分の羽を一本抜き取って器用に飛ばす
「ほざけェ!この至近距離なら今度こそ・・・・・・アァッ!?」
佐助の飛ばした羽は妙な男(小)・喜兵衛の腕を掠める
その一瞬を剣心が見逃すはずもなく攻撃は仕掛けられる
「飛天御剣流 『土龍閃』!!!」
剣心の逆刃刀が土を抉り、石礫となって喜兵衛に襲い掛かり
血塗れになった喜兵衛は呻き声をあげてその場を転がりまわる
その間に佐助は近くにある橋の欄干に降りる
「本当の悪一文字は貴様の様な輩が背負うべき・・・
いや・・・それは拙者等維新志士か」
「・・・・・・決着を着けようぜ、最強の維新志士サンよォ!!」
「相良 左之助、赤報隊の生き残り・・・
・・・わかった、決着を着けるでござるよ」
剣心が逆刃の刃を返せば薫と弥彦が驚き声を上げる
「・・・・・・決着を着けようぜ 抜刀斎!!!
、その強さで今、最強の維新志士を倒す!!」
「そんなしみったれた強さでは拙者は倒せんよ」
「「おおおぉぉぉぉおおおお!!!!」」
左之助は巨大な斬馬刀を頭上で回転させ一気に剣心目掛けて振り下ろせば
剣心はいとも簡単に斬馬刀を切り落とし、力強く地を蹴ると空に舞い上がった
「!!」
「あれは!」
「比留間を倒した・・・!」
「飛天御剣流『龍槌閃』」
[・・・!!サマカラ聞イテイタケド・・・コレホドトハ・・・
コレデ体格ガ良ケレバ刀デナクトモ、人ヲ殺セル・・・
流石ハサマノ大切ナヒト]
佐助が満足げに呟いていれば
左之助の肩口に逆刃が振り下ろされる
それでも左之助は立っていた
「・・・流石に頑丈だな、『龍槌閃』を喰らって倒れなかった男は
お主が始めてでござるよ。けれどもう、立っているのがやっとでござろう
今、医者を呼ぶから待っているでござるよ」
剣心が左之助に背中を見せれば、肩で息をつきながら左之助は吼える
「まだだ!まだ終わっちゃいねぇ、俺は倒れてねェ!!負けてねェ!!
『相良』と『赤報隊』の名にかけて殺されようと維新志士てめえには負けられねェ!」
剣心は左之助に向き直り、歩み寄って拳を振り上げる
大きな音をたてて殴られた左之助はその行動に驚いた
「喧嘩の相手が違うのではござらんか、赤報隊がお主に教えたのは
維新志士を倒すことか、それとも維新を達成することか」
「うるせえ、てめえが言うなッ!四民平等と抜かしときながら欲に溺れ
てめえらだけでふんぞり返る、偽りの新時代をでっち上げて満足してる
維新志士が言うんじゃねェ!!」
「違うわよ!!」
薫が剣心を庇い左之助に食って掛かるのを見て、佐助の身体が僅かに膨れる
腰を抜かした様に地に座り込んでいる薫に剣心が手を差し伸べる
それに嬉しそうに手を重ねる薫
佐助の疑心が膨れ上がる
何か思いついたように弥彦が剣心に向かって口を開いた
「そういえばさぁ、あのジジイが剣心に拳銃を向けた時になんか飛んできたよなぁ?」
「そうでござったな・・・なんだったのでござろう?」
痛みに気を失っている喜兵衛の近くに一枚の羽が落ちている
それを拾い上げて首を傾げる剣心
弥彦が佐助を視界に入れて指を指す
「おい剣心、あいつの羽じゃねえのか?」
「うん?・・・・・・っ、あの鷹は・・・!」
「「剣心!?」」
薫と弥彦を置いて佐助の元へ走り寄る
橋の下から自分を見上げる剣心を見下ろす佐助
その足に文が縛り付けてあるのが剣心の眼に入り声を張り上げた
「お主、あの時の鷹であろう!?その足の物はからの文ではござらんか!?
頼む、渡してくれ!」
「ちょっと剣心、鳥に話しかけたって通じないわよ」
驚きながらも剣心の隣に薫が歩み寄れば
佐助の身体は膨れあがり、頭の羽毛は逆立ってしまう
[・・・・・・緋村サン、ソノ隣ニイル女ハ誰デスカ・・・?
モシアナタガサマヘノ想イヲ忘レテソノ女トイルノナラ・・・
サマヲ裏切ルノナラ、僕ハアナタヲ許サナイ・・・!!]


鳥、怒る・・・(笑
カタカナいっぱいで読みにくくてスミマセン(汗
『わびぬれば・・・ 』は百人一首より 元良親王