【再会】




         、僕ハアナタヲ許サナイ・・・!!]



橋の下から見上げる剣心を一瞥して佐助は欄干を蹴り空に舞い上がる
それを追う剣心の行動に、薫と弥彦は驚きを隠せないでいた

佐助は自分を追う剣心を視界に入れながら
川の中洲にある岩の上に舞い降りる



「・・・っどうしてそんな意地の悪いことを!?
 頼むから・・・っ、頼むから渡してくれっ」


砂利に足をとられそうになりながら
自分が濡れることも省みず、ザブザブと音を立てて川に入る剣心
その形振り構わぬ姿を見て薫達が声を荒げる


「ちょっと剣心!何やってんのよっ、それに、その鳥は一体何なの!?」

「そうだぜ剣心っ、そんな鳥放っておけよ!」


そう叫んでいる二人の声も剣心は聞いておらず、更に川へと入っていく
その必死な姿に佐助の疑心は薄れていき


[・・・・・・・・・]


暫くの間、剣心の行動を見ていた佐助は不意に飛び上がり
剣心の肩に降りると、すまなかったと詫びるようにその十字傷の頬に顔を摺り寄せた



「・・・渡して、くれるのか?」



そい言いながら、佐助の足に結んである文を解き広げる


「・・・歌・・・?・・・・・・・・・意味が、解からん・・・」



その言葉に剣心の肩に乗っている佐助は落ちそうになった
剣心はというとぽりぽりと頭を掻きながら苦笑している



「参ったでござる・・・拙者はのように歌は詠めんのでござるよ・・・
 あの頃にに教わっておけば良かったでござるなぁ・・・」


文を丁寧に畳みながら川岸へと戻れば
薫と弥彦が「その鳥は何なんだ!?」と口を揃えて言う



「そう鳥鳥と言うものではござらんよ、二人とも・・・この者に失礼でござろう?
 鷹でござるよ、熊鷹のように見えるが・・・拙者は昔に一度会ったことがあるのでござる」

「でも、鳥は鳥だろーがっ」

「弥彦・・・それはそうでござるが・・・、それより薫殿・・・
 医者と警察を呼んできてはもらえまいか?斬左は未だ気を失っておるようだし
 比留間兄弟は脱獄してきたのでござろう・・・拙者が見張っておるゆえ、頼めぬか?」

「え?あ、あぁ・・・わかったわ、弥彦、行くわよ」

「お、おぉ・・・」



薫が弥彦を連れて駆け出すのを見届けてから
剣心は近くにあった小さな岩に腰を下ろした



「さて・・・先程は助かったでござるよ」


剣心のその言葉に佐助が首を傾げていると
佐助の翼を撫でながらこう続けた


「痛かったでござろう?自分で羽を抜いて・・・ありがとう
 それにしても、困ったでござるなぁ・・・・・・はこの東京にいるのでござろうか・・・」


剣心の肩に乗っていた佐助がその小さな頭を横に振れば
驚いたように瞠る剣心


「お主・・・拙者の言葉が解かるのでござるか?」


コクリと頷き肩から剣心の膝の上に移動し、剣心を見上げれば
二度目の意思の疎通に驚いている剣心がいた



「では、どこかに留まっているでござるか?」


佐助は首を横に振る
ふむ、と考えてそうであってほしいと願いを込めて剣心は聞いた



「・・・東京に向かっている、とか・・・・・・?」



再び頷けば剣心の表情かおが喜びに満ちる



「では、迎えに「緋村君!」

「小国殿・・・」


剣心の言葉を遮ったのは小国診療所の老医師、佐助がもう一度剣心の肩に乗ると
座っていた岩から腰を上げ小国の元へ歩み寄る



「それは、熊鷹かね?」

「あぁ・・・たぶん・・・それより、そこに倒れている男を診てやってくださらぬか?」

「おぉ、そうじゃった。薫さんから言われて来たんじゃったな」



手際よく左之助の手当てを済ませていく小国に
剣心は控えめに口を開いた



「小国殿は、歌が詠めるでござるか?」

「短歌か何かかね?」

「はい・・・これなのでござるが・・・拙者には意味が解からなくて・・・」

「どれ・・・ふむ、これは恋歌じゃなぁ・・・意味は・・・・・・
 『こうして貴方に会えずに苦しむのも 会ってこの身を滅ぼすのも
  今となっては同じことです それならいっそのこと この命を懸けて貴方に会いたい』
 といったところじゃな・・・これを詠んだ人は緋村君の恋人かの?」

「え?いや・・・はぁ・・・・・・これのことは内密にお願いするでござる・・・」




頬を赤く染め照れ隠しに頭を掻く剣心
そんな剣心を見て、佐助はを思い出し空へと飛び立つ


「もう行くのか・・・?」



剣心のそんな呟きに答えるように一声高く鳴くとの元へ戻っていった
その後直ぐに薫と弥彦が警官数名を連れてやってきた







「『いっそのこと この命を懸けてあなたに会いたい』か・・・俺もだ、・・・」


剣心は懐に手をやり、茜に染まる空を見上げた
その懐には少し古びた文と真新しい文が二通、柳生傘の刻まれた印籠と共に入っていた
























サマ!]

「お帰り、佐助。文を届けてくれてありがとう・・・剣心は東京に居るみたいね」

[ハイ、東京ニ留マッテイルヨウデシタ]



佐助は薫のことは触れずにそれだけをに告げた
東京へと向かう東海道の道中、は「そう」と頷き、足を速めた
その足が東京の地を踏むまであと数日・・・・・・



















「ご、ごめんくださ〜い・・・」

君っ!待ってたんだよっ」

「ね、姐さん・・・」



は東京・神田にある桂の本邸へと来ていた
玄関を覗くなり飛び付いてきたのは幾松だった


屋敷へ迎え入れられお茶を飲みながら話をしていれば
桂の墓所は遺言通り京都の霊山に建てるとの話だった
そこは維新志士達の墓所でもある
それから剣心がこの東京に居るらしいと告げれば



「それじゃぁ、夕食も兼ねて捜しに行こうじゃないかっ」


と声高々に言われ、あれよあれよいう間には連れ出された








一方、剣心はというと『赤べこ』に来ていた
何故か薫の機嫌が良く「夕食は牛鍋よっ」と言われたのだ
鍋をつつきながら食事を進めていれば一組の客が訪れる



「いらっしゃいませ〜」

「・・・って冴さん!?」

「え?あぁ!京都からお出でですか?ウチは冴の双子の妹で妙いいます
 東京でもご贔屓に、よろしゅう」

「そ、そうだったんですか・・・びっくりした・・・こちらこそ
 京都では冴さんにお世話になっていました・・・」


と妙がにこやかに挨拶をしている隣で
幾松は見覚えのある赤い髪を目にとめた



「・・・緋村、君・・・かい?」

「おろ?・・・・・・!い、幾松姐さん!?」

「え・・・?ひ・・・む、ら・・・?」

・・・か?」




いきなり名を呼ばれて振り向いて見れば懐かしく、どこか憂いをおびた幾松
その後ろから姿を現したに剣心は箸を放り出し、草履を履くのも忘れて駆け寄る



だな!?」

「緋村君、あんた目が悪くなったのかい?
 どこをどう見ても君じゃないか」

!!」

「緋村・・・」



ぎゅっと抱き締められる、その懐かしい感覚
ずっと求めてきた感触には瞳を閉じる
幾松も嬉しそうに二人を眺めているが、薫と弥彦は
この剣心らしからぬ行動に目を白黒させていた


・・・・・・こ、の・・・・・・っ」


次にくる言葉がわかっているが咄嗟に両手で耳を塞げば
幾松も時折見ていた光景だけに、に倣い耳を塞ぐ



「馬鹿野郎がぁぁっ!!!」


「あぅ・・・ご、ごめんなさい・・・」

「・・・懐かしいねぇ・・・・・・」

「・・・っ、俺がどれだけ心配したと思ってるんだっ!?」



耳から片手を頬に移し、しみじみと幾松が呟く横で
剣心に米神を拳でぐりぐりとやられているを見る
目を白黒させていた薫達は聞き慣れない剣心の怒鳴り声に心底驚いている


「痛っ、痛いって緋村、謝ってるじゃないか・・・」

「煩いっ」

「ほらっ、いい加減おやめ!緋村君も何度言ったら解かるんだい?
 君に乱暴するなって、しかも店中で!」

「「あ・・・・・・」」



はた、と気付けば注目の的となっている
気まずそうに剣心が離れれば、はほっと一息ついた



「あの・・・・・・剣心・・・?(今、『俺』って言ったわよね)」

「なんでござるか?薫殿」

「え・・・?(『剣心』・・・?ってか『ござる』!?)」

「・・・・・・・・・」



薫が剣心を呼んだことでの表情と雰囲気はがらりと変わり
まぁた厄介なことになりそうだねぇ・・・と幾松は溜息をついた












  


再会できましたっ
次回は結構甘い内容になると思われます(笑

ここで補足というか言い訳なんですが
桂の家は神田ではありません
『本邸は皇居に近い富士見町に・・・』と文献をみつけまして
その富士見町を探してみたのですが・・・判りませんでした(汗
話の都合上剣心の居る本郷に近い場所がいいなと思いまして
神田に決定いたしました。
別邸という手もあったのですが・・・駒込って・・・遠・・・っ
ということで『染井別邸』はやめました

それにこの時すでに幾松姐さんは出家しているはずなんです(滝汗
史実を捻じ曲げてしまい申し訳ないです・・・
でも、『夢』ということで流してください(焦