【嫉妬】
「あの・・・・・・剣心?」
「なんでござるか?薫殿」
「その人達は、剣心の知り合い?」
「そうでござる、拙者と同じ長州派の維新志士でござった
、それから桂先生・・・桂 小五郎殿の恋人で・・・」
「緋村!姐さんは桂先生の奥さんだよ」
困惑気味な薫の問いに剣心はにこやかに答え
達を紹介するが、幾松のことでが剣心に耳打ちをすると
幾松はやれやれと肩を竦めながら剣心を見る
「おろ?夫婦になられたのでござるか?」
「そうだよっ、まったく・・・」
「まぁまぁ、で・・・そちらは?」
幾松が切れ長の眼を薫に向ければ
維新三傑の一人の奥方であると聞いて驚きつつ自己紹介を始める
「あ、私は神谷 薫です・・・本郷で父の拓いた道場を継いで師範代を勤めています」
「若いのに偉いねぇ・・・じゃぁ、そこの坊やは門下生ってところかしらね?」
「あ、はいっ。弥彦、挨拶しなさい」
「あぁ?俺は東京府士族 明神 弥彦だ」
『坊や』と言われたのが癪に障ったのか弥彦のぶっきらぼうな物言いを
薫が嗜めていると剣心は苦笑を漏らし、こう繋げる
「拙者は今、薫殿の所で食客として居候しているでござるよ」
「へぇ・・・・・・緋村君・・・今夜ウチにおいで
そこのところを詳しく聞かせてもらおうじゃないか・・・」
「ね、姐さん?・・・薫殿、行っても良いでござるかな?
色々と話をしたいでござるし・・・」
「え、えぇ・・・いってらっしゃい」
薫に礼を言いながら、先程からは口を開こうとはしないのを
剣心は不思議に思いその顔を見ればどこか哀しげな表情をしていた
と幾松が食事を終えるのを待って、共に神田の桂の本邸へと向かった
その間、の口数は少なく剣心は首を傾げた
桂の位牌を前に、手を合わせると剣心
静かに前を見据えるの横顔は儚く凛として剣心の視線を奪う
はただ桂を思い出していた
その間に幾松はお茶を用意し、二人を居間へと招く
「さて・・・緋村君」
「は、はい?」
「あの薫さんとかいう娘さんとはどういう関係なんだい?」
「か、関係・・・って・・・先程も話したように
家主と食客でござるが・・・それが?」
幾松はさも、呆れた・・・とばかりに盛大な溜息をついた
それを見ては苦笑する
「まったく・・・(この朴念仁で唐変朴な鈍感男っ、君のことになると
鋭くなるのにねぇ・・・自分には無頓着だとかウチの人が言ってたっけ?)」
「姐さん・・・?」
「いや・・・それならいいんだよ・・・それより、今の今迄挨拶にもこないで
どこで何をやっていたんだい!?」
幾松曰く朴念仁で唐変朴な鈍感男・剣心は今迄何をしていたか
そして、薫の所に居候することになった経緯などを話した
何日も泊めてもらい只で食事をもさせてもらっているとなると
そう簡単に何もせず、再び流れるわけにはいかない。と剣心は言う
と幾松はそれもそうだと頷いた
そしては「どれだけ捜したと思っているんだ」と
剣心から説教をされる羽目になった
幾松はそれを微笑ましく見つめ、剣心のへの想いは
幕末のあの頃より寸分も変わっていないと安心し微笑んだ
「それじゃあ、後は二人で話しなよ。私は寝るから
客間に二人分の布団を用意させたから・・・じゃ、おやすみ」
「ありがとうございます、姐さん。おやすみなさい」
「かたじけのうござる、おやすみなさい。姐さん」
幾松と挨拶を交わし侍女のお光に案内され
襖を開ければ二組の布団がぴたりと合わて敷かれている
「「・・・・・・・・・(姐さん・・・)」」
二人の脳裏には意地の悪い含み笑いをした幾松が映し出された
「それではおやすみなさいませ」とにこやかに去るお光に礼を言い部屋に入ると
は背後から剣心に抱き締められる
まるでの存在を確かめるようにきつく、力強く剣心は抱き締める。
「、・・・・・・ずっと、会いたかった・・・」
「剣心・・・私も・・・・・・ずっと捜してた・・・会いたかった・・・」
剣心が腕の力を緩めれば、はくるりと反転して剣心の胸に顔を埋める
懐かしい匂いと感触、そして鼓動と温もり
会いたくて、焦がれて、捜し求めた互いを確かめ合うように唇を重ねた
何度も何度も、深く、貪るように口付けを繰り返せば
から甘い声が漏れ出し、剣心の理性はぷつりと切れた
柔らかい布団の上に押し倒すように組み敷けば
驚いたように剣心を見上げる
「もっと、を感じたい・・・」
「ちょ・・・待、って・・・」
「待てない、心も身体もずっとを求めていた。ずっとだ・・・
もう、待てない・・・俺は、がここにいると感じたい」
「剣心・・・」
が剣心の背に腕を回せば、再び唇が塞がれる
帯を解き、晒しを解けば数箇所にある古傷。どれも剣心を庇って付けられたものだ
それを確認するように唇を舌を這わせれば、から嬌声があがる
まるで傍にいることのできなかった十年間を埋めるように、剣心はを深く求めた
深く愛しあった後、けだるい身体を剣心に預け、その胸に甘えるように擦り寄る
そんなを剣心は愛しげに見つめ、乱れた黒髪を優しく整えている
「・・・この十年間、何をしていたんだ?」
「あぁ・・・剣心には十年なんだね・・・」
「どういう意味だ?」
「んとね・・・あの後、気がついたら世界と時空の狭間とかいう所にいたんだ
そして、決断を迫られた・・・元いた時代に戻るか、剣心の元に残るか・・・
私は・・・剣心の元に残ると決めた。元の時代を忘れたわけじゃないし
父上にも会いたかった・・・でも、それ以上に剣心の傍にいたかった・・・・・・
その時、どうもその場所に長く居過ぎたみたいで・・・時間にずれができたらしいんだ
で、この世界に戻ってきたら明治三年だった・・・その時、私は柳生の里にいたんだ」
剣心の胸をつつ・・・っと指でなぞりながら話す
それをくすぐったく感じながら自分の傍にいたかったと話すをそっと抱き締める
それから里で出会った人を頼り、京都を拠点に旅を始めたこと、佐助のことも話し終えると
「そうか・・・」と呟きふと思いついたこと・・・それはがその狭間とやらに飛ばされる前に
自分を庇って撃たれた事、それなのにの身体に刀傷はあれど弾傷が見当たらない
「あの時・・・俺を庇って撃たれたよな?傷はどうしたんだ?」
「あー・・・、もって行かれた・・・『村正』の魔性と一緒に・・・」
「は?誰に?」
「・・・・・・四郎・・・に・・・」
「・・・四郎・・・・・・?」
幕末のあの頃、時折が呟いていた名前
剣心の心がざわりとざわめいた
何気に嫉妬深いと感じ取っていたは最初は言わないでおこうと思っていた
初恋の人に会ったということを
「えと・・・『村正』の私の前の持ち主で、益田四郎時貞・・・
天草の四郎とも呼ばれていたっけ」
「天草 四郎・・・とは、あの?」
「うん、島原で出会った。そして、私の目の前で自刃した
・・・一緒にいた時は短かったけど・・・」
「好きだった・・・のか?」
「・・・うん・・・・・・初恋の・・・人、だった・・・」
の言葉に剣心の胸の内はどす黒く染まっていく
自分とて妻がいた身だ、と自分に言い聞かせても収まらない
それは・・・『独占欲』
自分は護られてばかりなのに、その男はを助けた。
魂となった今でもきっとを護っているのだろう・・・
そう思うと自分の不甲斐なさに腹が立ってくる
きゅっと唇を噛み締めれば、が胸から耳元へ顔を移動させて囁いた
「でも・・・今は、剣心だけだから・・・こんなに好きなのも、愛してるのも・・・」
「・・・っ、っ・・・俺も、好きだ・・・愛してる・・・・・・だけを・・・
これからは俺が、お前を護る・・・」
男の心はなんて単純なのだろう、の一言で黒かった胸の内は晴れ渡り
剣心は力強くを抱き締めた
「これからも、護っていこう?私たちを・・・私達の心を・・・」
そう言いながら花が綻ぶような笑顔を間近で見せられ
剣心は再びを組み敷いた
日が高くなりつつある頃、剣心は目覚めた
腕の中にはが未だ静かな寝息をたてている
ふっと目を細めようやく再会できたのだと、は今、自分の腕の中にいるのだと
感慨に耽っていれば、今いる場所は幾松の家であると思いつく
「・・・・・・(今、何時だ?日が高い・・・な、まずい・・・からかわれる・・・)」
そう思いながらを見れば、昨夜かなり無理をさせたのであろう
起きる気配すらないのを見て取り、自分だけ起きようかとも思うが
自分だけ起きようが、二人揃って起きようが、からかわれることに違いはないと
考え直し、の柔らかな黒髪に頬をよせ瞳を閉じた
次に目覚めたのはだった。昨夜、さんざん啼かされたのを思い出し
顔を赤らめてもぞりと動けば、何も着ていないことに驚く
剣心もそれは同じで、触れ合う素肌とその温もりが心地よかった
自分よりもはるかに多い古傷を、一つ一つ指でなぞっていると
頭の上からクスクスと笑い声が聞こえてくる
「、くすぐったい・・・誘っているのか?」
「剣心っ・・・お、起きてたの?」
「つい先程、な・・・そろそろ起きないと姐さんに怒られそうだな」
そう言い、掠めるように唇を合わせて起き上がる
完全に日が昇っているのには気付くと顔色を変えた
剣心はくっくっと笑いを噛み殺しながら、脱ぎ捨てられた着物を引き寄せた
二人が着替え、幾松の元へと行けば、呆れたように二人を交互に見る
「「おはようございます・・・」」
「あぁ・・・おはよう、二人とも遅い目覚めだねぇ・・・」
「ご、ごめんなさい・・・」
「君はいいんだよ?昨日京都から着いたばかりだし・・・疲れてたんだろ?」
ニヤリと笑いながら幾松が剣心を見れば、あらぬ方向を見ている
その隣では真っ赤になりながら俯いているだけだ
「・・・若いっていいねぇ・・・・・・」
「「姐さん!!」」
その後、剣心の考えは見事に的中して
散々からかわれ昼過ぎに神谷道場へ戻れば
「朝も昼も薫の手料理だったんだぞ!」と弥彦に愚痴られる剣心であった・・・
その夜、一人布団に入る剣心は何処か落ち着かないでいた
の傍にいたい、でも自分は居候の身
この家にを住まわせるわけにはいかない
(・・・暫くの間、姐さんの所にいるとは言っていたが・・・・・・)
共に流れるのもいい、しかし、今日幾松にを連れてふらふらするなと
釘を刺された、つまりは二人一緒にいるなら何処かに落ち着けということだろう
これからどうするか、と思考を巡らそうとするが落着かない
(一人寝るのは慣れていたはずなんだが・・・どうもいかんなぁ・・・
がいないと落着かん・・・)
を想えば疼きだす己の身体に苦笑を漏らし
剣心はなんとか眠りについた
ヒロインさんも神谷道場に居候させようかと思ったんですが
やめました(笑 一人悶々としてください剣さん(爆
ヒロインさんが女であると薫達にバレる時期を考えているのですが・・・
いつにしよう・・・京都編にするか、人誅編にしようか・・・迷ってます(汗
どちらがいいですかね?(自分で考えろ
ちなみに蒼紫達もまだ知りません