【活人剣】




が剣心と再会を果たし数日が経った
その間必ず剣心は時間を見つけ、の元を訪れていた



「通い妻ならぬ、通い夫だねぇ・・・
 そうだ、たまには君の方から行っておあげよ」


そう幾松は言ってを放り出した
朝から放り出されたはというと浅草を歩き
もう一人の尋ね人である蒼紫の事を考えていた



(私は東京にいると思うんだよねぇ・・・元隠密が働ける場所
 時代が変わっても日本の中心は東京なわけだし・・・蒼紫達を雇えるだけの
 資金を持っていて、尚且つ蒼紫達の力が必要な人間は東京に山といるはず・・・)


むー、と考えながら歩いていると前方から大きくて白い塊がぶつかってきた
元々小柄で華奢なは尻餅をついてしまう



「あたたた・・・・・・す、すいませんっ、俺・・・考え事してて・・・」

「お?おぉ・・・大丈夫か兄ちゃん、すまねぇな。」


がその白い塊を見上げれば、つんつん頭に赤い鉢巻をした青年だった
とりあえず立ち上がり袴についた土埃を払っていると
その青年は「相良 左之助」と名乗り、も「 」と名乗った



「ぶつかっちまった詫びと言っちゃぁなんだが・・・
 今から飯を食いに行くんだ、お前も連れて行ってやる」


そう言うが早いか、ひょいとを担ぎ上げスタスタと歩き始める
は何がなんだか判らず「下ろせ」と言っても「いーからいーから」とあしらわれる
何を言っても無駄だと諦めかけた時、左之助派「着いたぜ」と一言言い
を担いだままその場所へと入って行く



「お、今日は魚か?」

「左之助!?・・・・・・ってアンタ何を担いでんのよ・・・」

「・・・その刀は・・・・・・か!?」

「はぇ?緋村!?」

「お、なんでぇ・・・お前等知り合いか?」



左之助に担がれたを唖然と見つめる薫と弥彦
剣心はというと左之助を刺すように見据える


「左之・・・を下ろすでござる・・・・・・」


地を這うような低い声にも左之助もびくりと反応して
顔を蒼褪めさせながら左之助はを下ろし、は伺うようにそろ〜っと剣心を見た


「何で、左之がを担いできたのでござるか?」

「あぁ?さっき浅草でぶつかっちまってよ・・・
 んで、詫びに飯でもってんでここに連れてきた」

「浅草?、どうしてそんなところに?」

「えーと・・・たまには出歩けって、姐さんに放りだされた・・・」



の言葉に剣心はがっくりと肩を落とし
薫は「ウチは食堂じゃないのよ」と左之助に怒鳴っている
剣心はの頭をぽんぽんと撫でておいでと自分の隣に座らせた
その行動に怒ってはいないのだと安心して辺りを見回すと
の目の前には七輪と金串をさしてある魚
左之助の隣では無言で焼けた魚をはぐはぐと食べている弥彦がいる
団扇を持ち魚を焼いている薫のその必死な姿には首を傾げる


「ねぇ、緋村・・・薫さん、だっけ・・・なんであんなに必死になってるの?」

「ん?あ・・・あぁ・・・・・・何故でござろうなぁ・・・」


剣心にしては珍しく歯切れが悪い
ますます首を傾げて薫を見ていれば、先に魚を齧りだした左之助が一言


「まっじぃ・・・ダメだぜ嬢ちゃん、ちゃんと料理の修業もしとかねぇと
 なんなら俺が教えてやろーか?毎日こうじゃ、お前もつれえだろ、剣心」

「そうでもござらんよ、薫殿の料理は食べる毎に味を増す、いい料理でござるよ」

「ふーん、一種の珍味みてーなモンか」



先ほどから左之助の言葉にぴくりぴくりと反応していた薫も
ついに堪忍袋の緒が切れた


「嫌なら食べにくるなーっ!!
 何よう毎日毎日ただ飯喰らいにやってくる身のくせして!!」



手当たり次第に物を投げつける薫と剣心を盾に逃げる左之助
はとりあえず自分で魚を焼くことにした


「あ、あら座ってていいのよ?確か・・・・・・君?さん?」

「あははっ、でいいですよ。薫さん、魚っていうのはねこうして・・・
 身の厚い所から火を入れるんです・・・」

「へぇ・・・それから?」

「え・・・それからって・・・・・・あの・・・こう徐々に身の薄い方へずらしていって
 片面が焼けたら裏返して・・・何度も返すと余計な油まで落ちてしまって
 魚がぱさつく原因にもなりますから・・・・・・」


の説明を真剣に聞く薫、先ほどなぜあんなに必死になっていたのか
瞬時に理解するだった。

ふとと薫が立ち上がると、左之助が面白そうに口を開いた


、お前・・・嬢ちゃんより背が低いのな・・・お前、幾つだ?」

「む、好きでこの身長に生まれたわけじゃないし・・・
 えーと?緋村ぁ・・・緋村は今年で幾つになった?」

「拙者でござるか?拙者は二十八でござるが・・・」

「じゃぁ、俺は二十六だ」

・・・拙者で自分の歳を計算するのはやめるでござる・・・」

「だって・・・」



のその言葉に、は、と気付く
そう、には三年の空白がある。しかし、それを薫達に話すことはできない
だから剣心の歳を聞いて合わせたのだ

その時、左之助、薫、弥彦は愕然とした表情でを凝視していた


「「「に、に、二十六      !!!?」」」


「えぇっ?そ、そんなに驚くこと・・・かなぁ・・・」



「元維新志士ってみんなこう若いのかしら?」
「そんなことねぇだろ・・・剣心とがおかしいんだ・・・」
「いや、そんなことより・・・」
などと頭を突き合わせて話している
と剣心は互いに苦笑しながら視線を合わせる

薫の言葉にあん?と左之助が反応してを見れば
は珍しそうに道場を見ていた


、お前も維新志士だったのか?」

「へ?あ、あぁ・・・そうだよ。それより・・・・・・道場を開いているって言ってたね」

「えぇ、流儀名は神谷活心流といって父が拓いた流儀なの・・・」

「へぇ・・・心を活かす、かぁ・・・いい流儀名だね。その父上は?」

「あ、ありがとうっ。ウチの流儀は幕末の動乱を生きてきた父が、明治になって開いたの
 父は殺人剣をよしとせず『人を活かす剣』を志てきたんだけど・・・半年前の西南戦争で・・・」

「・・・ごめん・・・・・・辛い事を聞いちゃったね」

「い、いいのよっ、気にしないで。」


『人を活かす剣』と聞いてはどこかひっかかることがあって、口を噤む
剣心を始め、薫達も不思議そうな眼でを見ている


「うーん・・・どっかで聞いたことあるんだよなぁ・・・『活人剣』・・・・・・」

・・・?どうしたのでござるか?」

「うん?『活人剣』ってどこかで聞いたことがあるんだよ・・・どこだったかなぁ・・・」

「えぇ!?ウチの他にもあるの?」

「うん・・・、・・・・・・っあぁ!思い出した!!俺の流儀だ!」


の発した言葉に一同、すっこけそうになる
「そういやぁ、そんなのもあったなぁ」と一人納得している


「本当に!?」

「うん、あぁ・・・でも、薫さんの父上が説いた『活人剣』とは全く違うよ
 えぇっと『人を殺すことは悪であり、これは殺人刀である。しかし万人を活かす(生かす)ために
 一人の悪を殺すのであれば、それは活人剣となる』だったっけ?ま、物は言いようだよね
 んで、俺が教わったのは二種類あるんだけど・・・」

「お前・・・教わってたのか?」

「うん、どちらも緋村は無意識に使ってるよ。俺もだけどさ」

「拙者がでござるか?」

「そうだよ、『自分が設計した場所の中で、自分が書いた筋書きにしたがって
 相手に自由に動いてもらう、そしてその筋書きにしたがって自然に勝ちを得る』
 んと、相手を圧倒して抑えつける一方的な剣を殺人剣
 活人剣は相手、つまり人が自由に動く、活きるから『活人剣』っていうんだ
 緋村だって戦いの場で自分なりに筋道を経てて先を読むだろ?」

「・・・確かに、そうでござるなぁ・・・」



と剣心が頷きあうその隣では、訳が解らないといった顔の弥彦と左之助
薫は「そういう考え方もあるのねぇ・・・」と感心していた
「んで、もう一つは何だよ」と左之助が言えばは剣心と向かい合い距離をとる


?」

「もう一つは剣客なら誰でもすることだよ。」


そう言い剣心に向かって『殺気』と『剣気』を一気に放つ
剣心は驚くが懐かしいその『剣気』に頬を緩める


「・・・とまぁ、こうやって相手を威嚇して退散してもらう
 無駄に人を斬らなくて済むから『活人剣』なのかなぁ・・・
 緋村は慣れてるからああやって笑ってるけどね」

「・・・すげぇな・・・お前・・・」



そう?と左之助の言葉をさらりと流せば
弥彦が瞳を輝かせて駆け寄ってくる


「すげぇなっの流儀はなんなんだ?」

「俺の?俺のは・・・」

「新陰流でござるよ、弥彦・・・は兵法も学んでいたでござるからなぁ・・・」

「「「兵法?」」」

「あぁ、兵法ってのは戦い方だよ。新陰流は武術と戦術とあるんだ」

「どっちも一緒じゃねえのか?」

「うーん・・・」

「武術というのは拙者達で言うと剣術、戦術というのはその剣術をもって
 どう戦うかというものでござるよ」



剣心がにこやかに左之助に説明すると「よくわからねぇ」と顔を顰める

神谷道場の庭では兵法についての講義が始まろうとしていた



「お取り込み中申し訳ありません、緋村さんはご在宅でしょうか・・・」


庭先に現れたのは警官の服を着たにも見覚えのある男


「しょ・・・署長さん!」


薫が慌てて席を薦め弥彦に全員分のお茶を持ってくるようにと言いつける
薫に署長と呼ばれた男は切羽詰ったような表情で口を開いた


「お願いがあります、緋村さん・・・!それに、殿ではありませんかっ」

「おろ?」

「・・・?・・・あぁっ、浦村さんでしたっけ?お久しぶりです」

、署長殿と知り合いでござるか?」

「ん?あぁ・・・俺ね、刀持ってるだろ?
 廃刀令が出た後にさ桂先生が特別にって許可証を発行してくれたんだ
 その時に会ったんだよ」

「許可証・・・(あの人はどこまでに甘いんだっ)」


剣心が今は亡き桂に向かって拳を握っていれば
弥彦からお茶を受け取った浦村は控えめに話し始めた



「拙者に願い事とはいったい?」

「それなのですが・・・話す前に一言、これは警察の威信に関わる問題
 新聞各社にも箝口令を布いている事件、なので皆さんくれぐれもどうか御内密に・・・
 お願いとは他でもない、緋村さんにある兇賊を倒してほしいのです」

「兇賊?」



訝しげに左之助が浦村を見れば、一口お茶を啜って再び口を開く


「通称・『黒笠』 現在、政・財・官界で活躍する元・維新志士を狙い
 斬奸状を送りつけて斬り殺す殺人鬼で、この十年、日本全国に出没して
 兇行を繰り返す事、数十回・・・一度も仕損じたことのない凄腕の剣客です」

「維新志士ばかり狙うってことは、つまり恨みもしくは世直しのつもりかしら・・・」

「それもあるかと思います、が・・・それ以上に黒笠は人斬りを楽しんでいます」

「「・・・・・・・・・」」


が無言で剣心を見れば、剣心もまた無言でを見つめ返す
お互いに心当たりがある、と視線を交える


「栄職についた維新志士を狙えば、警察は本腰を入れて警護に動き
 また狙われた当人も権力財力を尽くして護衛に力を入れます
 そうして敷かれた鉄壁の守りを突き崩し、どれだけ人を斬れるかを
 黒笠は楽しんでいるのです・・・」

「悪趣味・・・」


がぽつりと呟く
そんな悪趣味な連中とは父と共に嫌と言う程対峙してきただが
浦村の『権力も財力も尽くして』の言葉にも嫌気がさす
僅かに震えながら話を薦める浦村


「二か月前、ヤツが静岡に現れた時は、当人、警官、護衛合わせて
 三十六人が殺され、五十六人が重傷を負わされました・・・」

「ちょっと待ってください、相手が凄腕とわかってるんだから
 拳銃警官だってそのとき配置された筈でしょう?
 それなのに何で、そんな大被害に・・・」

「それが・・・どういう訳か拳銃警官は銃を抜く前に全員真っ先に斬られてしまったんです
 かろうじて一命を取りとめた者の話によれば、まるで金縛りのように
 体が突然動かなくなり、その隙に斬られてしまったと・・・・・・」

「二階堂平法『心の一方』・・・」

「やはりも知っていたでござるか・・・」

「ん・・・その黒笠とかいうの、きっと血に狂わされたんだろうね」

「あぁ、大方人を斬り続ける余り、本来の目的も意思も失ってしまい
 血の色と匂いだけに心奪われてしまったのでござろうな
 明治も十年を過ぎたのにまだそのような者がいようとは・・・・・・」

「そうだねぇ・・・」

「・・・剣心、・・・・・・」



剣心は口を噤みお茶を啜った
は自分の腰にある『村正』を哀しそうに見つめそっと撫でる
その姿を剣心が思いつめたように見つめていた









  


後半は会話ばっかだな・・・
浦村さんの話が・・・(汗

でもこれでヒロインさんと剣心とゆかいな仲間達(ヲイ を絡ませることができるっ
今回はすこし柳生新陰流に触れてみました
管理人もよく解っておりません(殴
間違いなどございましても読み流してくださいませ(汗
それにしても、今回は甘くも辛くもなかったなぁ・・・(呆
次回、黒笠登場・・・ヒロインさん負傷で剣心キレる!!(笑
甘くできるといいなぁ・・・(願望)