【解毒】
「、悪いがここは仕切り直させてもらうぜ!!」
左之助とひょっとこの闘いは左之助の勝利であっけなく幕を閉じた
満身創痍の左之助に剣心は苦笑して
薫は恵に頼りになる自慢の仲間達だと話していた
はひょっとこに近付き状態を見る
気を失っているだけだと安堵し、この巨体をどうするかと唸っっていると
そこに奔る殺気、は恵の奪回と聞いていたから油断していた
「ブッ殺す!」
「っっ!!よせっベシ見!」
「そこかっ!」
「あぶねぇ!!」
ベシ見の手から飛ばされた螺旋ビョウを弥彦がその腕で受ける
薫が駆け寄り弥彦に説教を始めるが、弥彦は攻める事はできなくても
守る事はできると言い返していると急に痙攣を始め倒れこむ
「弥彦!」
「ククク、でしゃばった報いだぜ!その餓鬼はあと一時間ともたねぇ!
毒殺螺旋ビョウ!これが御庭番衆ベシ見の真の技よ!」
「ったくアイツはすぐに目の前が見えなくなる・・・やめろっベシ見!」
「次はお前だ赤毛野ろ?」
がベシ見に声を荒げるが、ベシ見には届かず
剣心はベシ見の頭上高く飛び上がり、逆刃を振り下ろす
叩き落されたベシ見の姿は消え新しい気配に目を向けると
般若の面を被った男がベシ見の襟首を捕まえて立っていた
はとにかく弥彦の元へ行き、袖を破り弥彦の腕の付け根をきつく縛り上げた
対峙している剣心と般若の気配を背に感じながらも弥彦の状態をみる
泣き叫ぶ薫と焦る左之助、恵はその場を動けずにいた
剣心が動きを見せると、般若は手を翳し動きを止める
「止そう、この場でこれ以上闘っても高荷 恵奪回は無理と見た
自分としては倒れている二人を回収して一刻も早く御頭に報告したい」
「そちらから攻めて来たんだ、引き止めはせんよ
だが、小さい奴は弥彦の解毒のため置いていってもらう」
「敵方にそうまでする義理はない」
「ならば是が非でもおいていってもらう!」
「待てっ緋村!!」
が静止の声を放つが剣心は既に逆刃を抜き般若に斬りかかっていた
それを拳で受け止め流し、逆に拳を般若は振るう
「涼しげな顔の割には、なかなか激情家だな
あせらずとも高荷 恵を匿う以上、いずれ闘うことになる、それまで勝負はお預けだ」
そう言い立ち去ろうとする般若を止めたのはだった
言葉もなくは村正を抜き刃を返し般若に斬りかかった
「殿!?」
「!?」
「般若・・・一つだけ答えてくれ・・・毒は附子(トリカブト)か朝鮮朝顔か?」
剣心は驚き瞠り、般若は軽くの刃を受け止める
続いて般若の攻撃を受け流しながら再び「頼む、教えてくれ」と告げると
すれ違い際に一言般若は囁いた、それにふと表情を緩めると
般若はベシ見を掴み、ひょっとこを担いでその場から飛び去った
その頃、弥彦の側に剣心は向かいの応急処置を見ながらどうすればいいのかを話し
それに恵が口を挟んでいた
「素人の出る幕じゃないわ下がって!・・・・・・これは・・・」
「毒は朝鮮朝顔・・・曼陀羅葉だ」
が刀を鞘に戻しながら近付いてくる、その側には見慣れない青年が一人
「すまない・・・解毒薬は持っていない・・・が、あんたにはなんとか出来るだろう?
高荷 恵さん・・・・・・緋村は湯を沸かしてくれるか?新しい晒しも用意して・・・
それから氷が必要か?それくらいしか俺には知識がない」
「え、ええ・・・・・・お嬢ちゃん、ここは道場なんだからかかりつけの医者がいるわよね
薬剤を書くからその人に持って来てもらって、それから剣さんはそこの人が言ったように
湯を沸かして手ぬぐいか晒しと置き薬を用意して、つんつん頭の君は氷屋へいって
氷をありったけ買ってきて!解毒治療は時間との勝負よ!急ぎなさい!!」
細やかに指示を出しそれに従い各々動き出す
は側に立っていた右近を帰すと剣心の元へ向かった
「緋村・・・」
「か、先程一緒にいた男は以前言っていた者か?」
「うん、ちょっと頼みごとをしていてね。ごめん・・・」
「何故あやまる?」
「俺はあいつ等を止めることができなかった・・・」
は俯き唇を噛み締める、剣心は火の加減を見てからに向き直りそっと抱きしめた
「すまなかったな・・・俺と奴等が闘って一番辛いのはお前だ、それでも俺は・・・」
「うん・・・いいんだ、解ってる。間違っているのは蒼紫達だ
だから、俺は緋村達を止めない。そして俺は俺のできることをする」
「・・・・・・無茶はするなよ?」
「ん・・・」
剣心は抱きしめていた腕の力を緩め掠めるようにの頬に唇を寄せた
そして疑問に思った事をに問いただした
「先程・・・何故弥彦に使われた毒が解ったんだ?」
「般若から聞きだしたんだ・・・解毒薬は持っていなかったけど」
「・・・そうか、それから恵殿の事だが」
「あぁ、彼女は医者だ・・・ちょっと気になる事があったから右近に調べさせたんだ
なぜ観柳は彼女にあそこまで固執するのか・・・そして彼女が持っていた阿片・・・」
「なるほど・・・会津の訛があるように思えるが」
「うん、彼女は会津の人だよ。そして会津藩の『高荷』・・・かなり有名な医者の一族
そして彼女は会津戦争で家族を失っている・・・父は戦死、母と兄弟は行方不明だそうだ・・・
それから身を寄せていた医者がこの騒動の阿片を作り出していたが・・・
その医者は観柳に殺されている・・・ここまで言えば解るだろう?」
「あぁ・・・事の全貌が見えてきた」
「・・・あまり人の過去を探りたくはなかったんだけど、今回だけはどうしても
やらなければならない事があるから・・・」
「蒼紫のことだな?」
「うん、妹分と約束したからね。必ず探しだすって・・・だけど今の蒼紫の事を知らせる事はできない
今あいつ等がやっている事は・・・っ蒼紫の考えている事も解らないわけじゃないけど
それでもきっと操は悲しむだろうから・・・」
「解った・・・だが、本当に無茶はするなよ?」
きつく拳を握るに剣心は念を押した
ぽんぽんと頭を撫でて沸いた湯を手桶に入れ弥彦の元へ運ぶ
は何も言わず剣心の後を追った
弥彦が寝かされている部屋には小国が駆け付けていて
なんとか一命を取り留めた弥彦にと剣心は安堵の溜息を漏らす
それからふと剣心はに視線を巡らせと共にその部屋をそっと出る
行き先は道場の外、姿を消した恵を追ったのだった
「どこへ行くでござる?」
気配と足音を消して行き成り目の前に現れた剣心に恵は驚きを隠せないでいた
女性の夜歩きは危険でござる、などとにこにこと笑いながら言っている剣心を
は呆れた顔で見ていた
そして剣心と恵の話しを黙って聞いていた
「無理矢理作らされるはめになった・・・・・・自分が作っていたのが
人を救う薬じゃなくて、その逆だと聞かされた時は死のうかと思ったわ
けど、死にきれなかった、生きて・・・・・・医学にたずさわっていれば、いつかどこかで
離れ離れになった母や兄に再会できるかも知れない、そう思って・・・
人を死に追いやる薬を三年間も・・・・・・」
「けれど、恵殿が観柳に追われるのは未だにその精製法知る者が
他にいないからでござるよな、蜘蛛の巣の生産を最小に抑えて
せめて犠牲者を最小にしようと、その罪悪を放り出さず敢えて
自分一人で背負い込んでいたのでござろう」
「「そうして三年間も苦しみ続けたのなら、そろそろ許されて自由になっても
いい頃だよ(でござる)」」
恵の心を癒す最後の言葉はと剣心が同時に発した
いつの間にかは剣心の後ろからその隣にきていて
二人は恵に微笑んでみせる
「連中がそう易々と手を引く訳ではござらんもうしばらくここにいたほうがいいでござるよ
そうでござろう?」
「そうだね、まぁ・・・しばらくはあいつ等も動かないと思うけど、ねぇ・・・」
「でも・・・」
「いいでござるな、薫殿」
薫の承諾を得て、この日からしばらくの間恵は神谷道場に居候する事になった
「じゃ、俺は帰るよ」
「待つでござる、」
話もまとまった事だし・・・とが踵を返すと剣心に止められる
夜もかなり更けてしまっている、これ以上遅くなると幾松の説教が待っているのに、と
が剣心を見やると剣心は薫と左之助になにやら話しをしていて
二人は渋い顔をしながらも頷いて見せた
「緋村?」
「いくでござるよ、」
「は?」
「色々と話がしたいのでござる」
「ちょ・・・緋村?」
にこにこと笑いながらの手を引き幾松の待つ神田の屋敷へと足を進める
しばらくの間沈黙が二人を包んでいたがが口火を切った
「で、話しって?」
「いや・・・たいした事はないんだが・・・」
「は?たいした事ないって・・・」
は訝しげに眉を顰め剣心を見ると、片手はの手を握ったまま
空いた手で頭をぽりぽりと掻いている
「緋村・・・?」
「あー、いや・・・その、右近と言っていたか?この前は左近とか・・・
お前の側に何人の忍がいるんだ?」
「・・・・・・」
「なんだその目はっ」
呆れた・・・とばかりに剣心を見つめ大きな溜息を一つ
「二人だよ・・・左近と右近の二人だけだよ。それよりも、ねぇ緋村・・・
俺だって緋村と同じ気持ち、あるんだけど?」
「?」
はて?と小首を傾げる剣心にもう一つ大きな溜息を零す
ここに幾松がいたら笑顔で剣心を張り倒していることだろう
はふるふると首を振って肩を落とした
「・・・・・・(解ってない・・・喜んでいいのか薫さん達に同情していいのか・・・)」
「どうした?」
「・・・はぁ・・・・・・なんでもない、姐さんが待ってる」
邸に戻ると幾松が剣心の姿を見てそれはそれは鮮やかな笑顔を見せた
その背後にはどす黒いオーラを纏っていたが・・・
「・・・どうしたんだい?その傷は、緋村君」
「あ・・・いや、これはでござるな・・・・・・」
「ね、姐さん・・・」
「おや、今日は君は無傷なんだねぇ・・・・・・また厄介事かい?」
「いや・・・実はですね・・・」
が幾松に事の仔細を話すと、幾松の笑顔がひくひくと引き攣っていく
「あんた達はなんでこう・・・厄介事が好きなんだろうねぇ・・・?」
「そ、そう言われてもでござるな・・・」
「今回は君が怪我をしていないからいいものの・・・緋村君!」
「は、はいぃぃっ」
「あんたもあんまり怪我をしないようにするんだよ
まったく・・・どうせ言っても聞きゃしないだろうけどね、この二人は・・・」
呆れたように苦笑して、幾松が「どうせ今日は泊まっていくんだろ?」と剣心に聞けば
剣心は申し訳なさそうに頷いた
それからの部屋に行けばいつものように布団が二組並べて敷かれていた
「、今回・・・お前はどう動くんだ?」
「んーとりあえず、一度蒼紫と話しをしてみないと・・・機会があればいいんだけど
観柳の邸は厳重だからなぁ・・・しばらくは様子を見るかな、剣心は?」
「うん、俺としても早めに事は終わらせたいが・・・向こうが動くまでは
こちらも動けんしな、俺も様子見だな」
「しばらく動きはないと思うよ」
「どうしてだ?」
「剣心さ般若に柄で攻撃しただろ?それが癒えるまでは動かないと思う・・・
あいつらも馬鹿じゃないからね」
「・・・そうか・・・・・・」
剣心は考え込むような素振りを見せながらを背後から抱き寄せた
「剣心?」
「ん?」
「ん?じゃなくて・・・」
はいつの間にか胡坐を掻いた剣心の膝の上に抱き込まれがっちりと抱きしめられる
首を捻り剣心を見上げれば、上から唇が降ってくる
剣心の甘い温もりを自分のそれで受け止めながら、下から剣心の首に腕を回せば
そのままゆっくりと柔らかな布団の上に剣心はを組み敷いた