【御庭番衆】
神谷道場に夜襲があってから数日が過ぎた
何事もない平穏な日々が続いているように思えた
そんなある日、恵が手紙を置いてその姿を消してしまった
剣心は焦り、観柳邸へ左之助と弥彦と向かう
「・・・動いたか・・・・・・」
「はい・・・殿、行かれますか?」
「当然。・・・左近と右近は先に屋敷に潜入していて欲しい」
「「はい」」
は溜息を一つ吐くと長年共にあった愛刀『村正』を握り
ただ前を見据え、きゅっと唇を噛み立ち上がった
既に左近と右近の気配は消えていた
「この先が武田観柳の屋敷でござるか」
「ああ、何度見てもでか過ぎて嫌な屋敷だぜ・・・で、こいつをどうやって・・・って」
「「「!?」」」
三人の視線の先には既に地に付している門番と門の先を睨んでいるがいた
剣心は慌ててに駆け寄り足元に倒れている門番を見る
「緋村・・・大丈夫だ殺しちゃいないよ」
「・・・どうしてここに?」
「蒼紫達が動いたからだよ」
「・・・そうか」
「うん」
「お前ぇ・・・今回俺達とは係わらねぇんじゃなかったのかよ」
「目指すところは一緒なんだ、それに・・・
一緒に刃を交える事は出来なくても、言葉を交えることはできるからね
何より、俺の可愛い妹分の願いもあるしね」
自嘲気味にくっと喉を鳴らしては左之助を見た
迷いは吹っ切れたようだ、二人は口の端をあげてニヤリと笑う
「少数の奇襲だから・・・緋村、全力で玄関まで突っ走りますか」
「そうでござるな」
「つまりは正面突破か、よっしゃぁ」
「左之助、遅れをとるんじゃねーぞ、いいな」
などと生意気な口をきく弥彦と揉めながらも剣心の一言で四人は一気に駆け出す
そして大きな扉を前に刀を振るったのはと剣心、同時だった
難なく崩れ去った扉を抜けて敵の渦中へ飛び込んでいく
「うわあああああ!!!???」
人垣を割り先へと進む剣心、その背後には
倒すことが目的なのではない、先に進むことが目的なのだと
襲い掛かってくる敵を払って前に進む
「は・・・速え、なんだあれは・・・人間か・・・?」
「オラオラオラオラァ!余所見してっと・・・怪我するぞ!!!」
「つ・・・強え・・・この三人組強過ぎる!!」
「四人組だバーロー!!」
息を切らしながら後ろを駆けてくる弥彦に視線を送りながら
は剣心に叫んだ
「緋村っこのまま突っ切れ!殿は俺がやる!」
「は!?」
叫ぶと同時には前に待ち構えていた銃士隊に特攻を掛けた
「おいおい、言ってる事とやってる事が違うんじゃねーか?」
「道は開けたっ行け!!」
「だがっ」
「安心しろ、殺しはしない」
「・・・わかった」
弥彦が初めて見るの刀裁きを唖然と見ていると
左之助が襟首を掴みそのまま駆け抜ける
「・・・すげぇ・・・」
「あぁ、剣心が背中を預けてきたっての、解るだろ?」
「女みたいなのに・・・」
「俺も最初は女だと思ったんだがなぁ、あそこまでの遣い手が女なわけねーだろ?」
「そうだな・・・」
左之助と弥彦の会話を聞いていて剣心は苦笑した
は正真正銘の女である
そして何故左之助がのことについて聞いてこないのか納得もした
剣の腕が女であるということを曇らせているのだと
が粗方敵を片付けて剣心の元に辿り着いた時には
剣心が斬った外灯が観柳の立っている窓の近くに叩き込まれた瞬間だった
「一時間以内にそこへ行く!!心して待っていろ観柳!!」
「・・・あーあ・・・・・・(怒ってる怒ってる)」
「・・・」
「粗方片付けてきたよ、そんな顔するなって・・・誰も斬っちゃいないさ」
ほら、と銀色に輝く刀身を剣心に見せる
それに苦笑して剣心は頷いた
目の前には閉ざされた扉
「ここから先は多分御庭番衆が守っているはず、気を抜くんじゃねーぞ!いくぜ!」
「おめーがシキるな」
またもや言い争いを始める左之助と弥彦を呆れたように見ていたら
さわり、と風が動く
「三人とも・・・この先は俺は別行動だ」
「あぁ?」
「この先を守っているのは弥彦の言う通り御庭番衆だ
俺は戦うことは出来ない・・・少し、話をしに行ってくる」
誰と?とは誰も聞かなかった、ただ三人は頷いて見せただけだった
それを見ては嬉しそうに頷き剣心達とは別方向に駆け出した
その後姿を見送り、剣心は扉を開けた
「・・・・・・驚いたでござるな、お前程の使い手がいきなり一番手ござるか・・・!」
「だから言ったろう、あせらずともいずれ闘うことになるとな
江戸城御庭番衆密偵方『般若』御頭の命によりこの場を死守する!」
「殿・・・」
「ん・・・ここが隠し通路の入り口かぁ・・・観柳ってのは何考えてんだか」
呆れながら地下に続くであろう隠し通路には足を踏み入れた
向かう先は蒼紫の部屋
地上では剣心と般若が闘いを始めた所だった
左近と右近に案内された先には蒼紫が一人空を見上げていた
「・・・蒼紫・・・・・・」
「か・・・」
「何故、と聞いてもいいか?」
「聞くまでもないと思うが?」
「それでも、さ・・・もう少しまともな雇い主はいなかったのか?」
「・・・あぁ・・・・・・そうだな・・・でも今は良かったと思っている」
「え?」
「最高の好敵手を俺達に与えてくれたからな・・・」
「蒼紫・・・・・・今の自分の顔を見た事あるか?」
「・・・・・・・・・?」
は哀しそうに瞳を細めると蒼紫に背を向けた
今の蒼紫に何を言っても耳は貸さないだろう
濁った瞳、纏っている空気がにそう告げていた
蒼紫の部下を思う心、御庭番衆であるという誇りが蒼紫の心を狂わせている
はそう思った、それならば道は一つしかない
剣心を殺すつもりなら・・・たとえ操に怨まれても蒼紫を斬る
拳を握り噛み締めた唇に血が滲んだ
「操に何て言えばいいんだ・・・っ」
隠し通路を使い元の場所に辿り着いた頃には剣心と般若の闘いは終わっていた
は左近と右近を帰し(剣心に会うと何かと面倒だから(酷))
そのまま屋敷の中に入り、倒れ伏している般若に近づいた
「般若・・・般若っ」
「むぅ・・・・・・、殿?」
「気付いたか?」
「はぁ・・・やはり強いですね抜刀斎は・・・」
「そうだな、幕末の頃はもっと強かったけど」
の言葉に瞠り、「そのようですね」と頷いた
「迷いが見えました・・・」
「うん・・・般若、俺は蒼紫が剣心を殺そうとするなら・・・」
「・・・解っております」
「そうか・・・操が寂しがっていた、それに心配もしていた」
「そうですか・・・」
自分の素顔を見ても屈託なく笑う操とに般若は救われていた
普通の人から見れば化け物のような顔
自らそうした、その事に後悔はしていない
忌み嫌われ蔑まれてきた、そんな自分を大切だと言ってくれた操と
そして自分の生きる場所を与えてくれた蒼紫
蒼紫がいなければ操とにも出会っていなかっただろう
だからこそ蒼紫が自分にとって唯一の存在だった
今回の事も蒼紫は自身の事より自分達のことを考えてのことだった
その蒼紫の思いに答えたかった
だけど目の前のの哀しそうな顔と言葉に胸が痛んだ
僅かな沈黙の後、は立ち上がった
「さて・・・次は式尉の所かな・・・」
ガルルルルルルルッ
「「!!?」」
と般若は顔を見合わせて同時に走り出した
「・・・・・・うるせぇな、何の音でぇ・・・まぁ、おかげで目が覚めたけどな」
ほんの少し前まで落ちていた左之助が目を覚まし立ち上がると
その後ろにと般若の姿があった
「上で何か異変が起きたようだな」
「般若!・・・っと!?」
「おはよ左之」
「そう警戒するな、私も式尉も真向闘って負けたのだ
いまさら寝首をかく真似をしてまで卑怯な勝者になる気など毛頭ない
そんな事より蒼紫様が心配だ、私は殿と式尉と行くがお前はどうする?」
「お前・・・結構いい男じゃねぇか、それと、話はできたのかい?」
「・・・フン、皮肉にしか聞こえんな」
「違えねぇ」
般若が式尉を起こしているとは左之助に苦笑した
「いや・・・あー・・・話はしたんだがなぁ・・・」
「?」
が言い辛そうに視線を泳がせていると再び轟音が響いた
もう話している時間はない誰もがそう思った
階段を駆け上がり向かう先は剣心と蒼紫がいるであろう部屋
真っ先に部屋の扉の前まで辿り着いたのは左之助だった
「!!?何だありゃあ!!」
「!回転式機関砲!!」
の視界に入ったのは剣心とその側にいる弥彦
左之助と般若の視界に入ったのは観柳と回転式機関砲
式尉の視界に入ったのは床に膝をついている蒼紫だった
「!!ちぃ!!」
「「式尉!」」
と左之助が叫ぶが式尉はそのまま部屋へと駆け込む
「「「「!!!」」」
驚いたのは部屋の中にいた四人だった
ほんの僅かな隙
「今だ!抜刀斎走れ!」
観柳が標的を探す僅かの間
剣心は般若の言葉に従い弥彦を連れて走り出す
「あのトリ頭、あんたのコトえれえホメていたぜ
イケ好かねぇが見所のある奴だ、せいぜい大事にしてやんな
それから様のことを・・・言うまでもないな」
「お主・・・」
擦れ違い際に話された言葉
剣心は視線だけで頷き、式尉を見送った
「ええいまずは動けない蒼紫から!」
「そうはいかせねぇ!」
轟音が響く中、蒼紫と回転機関砲の間に式尉は立ち塞がった
式尉の背は弾丸で朱に染められた
「「「式尉!!」」」
叫ぶ、剣心、左之助
蒼紫は呆然と目の前の式尉を見上げた
「式・・・」
「おっと・・・そんな顔すんなよあんたらしくもねぇ・・・
俺は結構満足してんだ、薬を使ってまで手にした自慢の筋肉が
弾丸に勝る盾にだってなるって・・・証明でき・・・て・・・ね」
「式尉・・・」
蒼紫は名を呼ぶが、もう返事は返ってこなかった
「ぬかせぇ、そんな肉塊二百連発で粉々に 」
観柳が再び手を動かそうとした時だった
達がいる扉とは別の扉が音を立てて開いた
飛び込んできたのは樽を背負ったひょっとこ
「おおっと待ったぁ!
おめえの相手はこのひょっとこ様がしてやるぜ!!」
「な!!」
「おおっと撃つなよ!ヘタに撃てばこの油袋に引火してドカンだぜ!」
「うるせえ、ならばここだ!!」
回転機関砲が火を吹く
朱に染まるのはひょっとこの右顔
「「ひょっとこ!!」」
驚愕に染まると蒼紫
「ぐふ・・・まんまとかかった・・・な・・・」
前に倒れるひょっとこ、その背の樽から飛び出したのはベシ見
「な!!」
「くらえ毒殺螺旋 びょ・・・」
「うわあ!!」
観柳は恐怖と怒りに手を動かす
ベシ見の手から螺旋ビョウは飛ばされることはなかった
「「ベシ見!!」」
朱い塊となって床に落ちるベシ見
と蒼紫は瞠りその場を動けずにいる
「お・・・御頭、やっぱりだめでした・・・
仲間内から一芸だけのキワモノ野郎と・・・蔑まれていた・・・
俺達を見捨てないで御庭番衆にいさせてくれた御頭のため命懸けてみたけど・・・
すんません・・・最期の最・・・期まで・・・俺達役立た・・・ず・・・で・・・
・・・様・・・・・・そ・・・な俺達・・・に、優しくして・・・くれて・・・ありがとう、ござ・・・」
「ベシ見ぃ っ!!」
響き渡る蒼紫の叫び声
観柳は汗を拭い薄っすらと笑いながら言い放った
「ふう、危ない危ない・・・あんな大道芸にやられたらシャレにもならん」
「ヤ・・・ロォ・・・!!」
怒りを露にする左之助の前では小刻みに震えていた
纏う空気が張り詰め殺気が迸る
「待て、」
「離せ・・・緋村・・・」
刀の柄に手を置いたの肩を剣心が掴むと
は射すような視線を剣心に向ける
「・・・っ(このままではっ)」
このままでは観柳を殺しかねないと剣心は一瞬示唆するが
その隙に動いたのは般若だった
「殿、すまない・・・失礼する」
鈍い衝撃がの鳩尾に奔った
軽く意識を飛ばしたを壁にもたれさせ般若は剣心に言う
「・・・抜刀斎、あの逆刃刀を拾って観柳に斬り込むのにお前なら何秒で足りる?」
「・・・・・・十五・・・いや、十秒あれば 」
「十秒か、少しキツいな・・・」
「何?」
「見ろ、あの半二階から上へ通じる階段を昇ると小さな展望室がある
高荷 恵はそこに幽閉されている」
「般若?」
「別にあの女のコトを考えてなかった訳ではないさ
ただ、私にとっては蒼紫様の方が大事だっただけのこと
後は頼んだぞ・・・蒼紫様のことも殿のことも・・・緋村 抜刀斎」
「待て般若!!」
剣心が止める間もなく般若は駆け出す
一瞬遅れて剣心は唇を噛み締め逆刃刀の元へ床を蹴った
意識を取り戻したが見たものは無残に倒れた般若と
観柳を逆刃で叩き伏せている剣心の姿だった


1ヶ月以上振りの更新です(汗
しかも剣心との絡みがほとんどないですね・・・
次回は絡みまくりです(笑
拍手メッセなど本当にありがとうございます!元気をいただいてますっ