【髪紐】



朝、障子の隙間から零れる光に眩しさを覚え、は目を覚ました
背中から伝わる温もりに頬を緩め身体を反転させると
目の前には無防備に寝顔を見せている剣心

が身動ぐと無意識に離さないというかのように
回されている腕に力が込められる
それを嬉しく思いながらもそろそろ起きないと、と剣心に擦り寄る



「剣心、剣心・・・」

「う・・・、・・・・・・?」

「おはよ、剣心。そろそろ起きないと姐さんが起こしにくるよ」

「朝、か・・・・・・というか、お前起きる気あるのか?」

「?なんで?」

「何も纏わずそう擦り寄ってこられると俺が反応するんだが・・・」

「え?あっ」



慌てて離れようとするを剣心は離さず抱き締める
その瞬間、は何かを感じ取る


「剣心・・・?」

「ん・・・?」

「どうか、したの?」

「いや・・・幕末の、あの頃の夢を見ただけだ」

「そう・・・」


はそっと剣心の背に腕を回し、ゆっくりと撫でる


「めずらしいね・・・」

「あぁ・・・なんで今頃・・・・・・」

「最近、闘うことが多いからじゃないの?」

「・・・そう、かもな」


剣心はふ・・・っと微笑いを放した
は脇に置いてある夜着を引き寄せ剣心に渡し
自分の着物をだそうと動いた時、背中にピリリと痛みが走った


「・・・った」

?」

「う〜、背中・・・・・・」

「傷が開いたな、急に動くからだ・・・」


昨夜負った傷が開きうっすらと紅が滲む白い背中に剣心はゆっくりと舌を這わす


「や・・・っ」

「縫うほどの傷ではないが・・・、傷薬と晒し、油紙はこの部屋にあったな」



最後にの項に唇を落とすと剣心は夜着を羽織り用箪笥から薬箱と晒しを出す
手早く手当てを済ませ傷に油紙を当て晒しを巻く


「晒しくらい自分で巻けるよ」

「いいから・・・お前は髪をあげていろ」


そう言い、晒しを巻き始めたとき襖の向こう側から足音が聞こえてくる



君、緋村君いつまで寝てるんだ・・・い?おや、お邪魔だったね
 ってまた怪我して帰ってきたのかい!?あんた達はっっ!!!



幾松の叫び声が神田の桂邸に響いた








「あー、剣心の結紐切れちゃったんだっけ」

「そういえばそうだったな」

「どうしようか・・・ずっとこれ使ってたから予備なんてないし・・・」

「適当に姐さんに借りるか・・・」



幾松に話すとの結紐もついでに買い換えろと指摘され
結いあげていた髪をおろされる


「ね、姐さん?」

「緋村君は君の結紐を使って、君はこっちにくるんだよ」

「え?」



呆気にとられている間には幾松に連れられて部屋をでていった
そして襖越しに聴こえてくるの声


「勘弁してくださいっって姐さ〜ん」

「何度同じ事を言わせるんだい!?」



「またか・・・」


剣心は手渡された色褪せた結紐をみて頬を緩める
以前、剣心が贈った唯一の物だ
それをずっと使っていてくれたことがくすぐったくも嬉しい
昨夜切れてしまった剣心の結紐は同じようにから貰った物だった

幾松はあの事のようにまた結紐を贈りあえと暗に言っているのだろう



暫くすると女物の着物を纏ったを連れて幾松がやってくる


「まったく、そういう格好をしていれば怪我もしなくて済むんじゃないのかい?」

「動きにくいし、落ち着かないですよ〜」

「あんた女って自覚あるのかい?」

「あ、ありますよ・・・たぶん・・・」



の幾松の会話を聞いて剣心は苦笑していると静かに襖が開いた
剣心にとって三度目となるの艶姿
恥ずかしそうに俯くの手を取って行こうかと促す





浅草の幾松行き付けの小間物屋へと二人は足を進める
三度目とあって剣心は慣れての肩に手を回しゆっくりと歩く
蕩けんばかりの微笑みでを見つめながら
も恥かしげではあるが嬉しそうに微笑み会話を楽しんでいる


目当ての小間物屋に入り紐を見せてもらう



「珍しいね・・・組み紐だけじゃなくて真田紐が髪結い用の紐であるなんて」

「あぁ・・・これにするか?」

「そうだね、猩々緋しょうじょうひか・・・唐紅より綺麗な赤だ
 緋村はこっちかな紺桔梗こんききょう・・・うん、この色が似合う」



互いに紐を買い贈り合う二人に店主の笑みが深まった


「さて、姐さんに頼まれた茶菓子と由太郎への見舞いを買って帰るか」

「そうだね、由太郎が心配?」

「あぁ・・・」

「大丈夫だと思うよ、由太郎の傍にいるじゃない
 肩を並べて好敵手だっていえる相手が・・・」

「弥彦のことか?」

「そっ、だからきっと大丈夫」

がそう言うならそうかもしれないな」



話しながら歩を進める二人を唖然とした表情で見送る白い影がひとつ



「・・・あ、りゃぁ・・・剣心・・・・・・か?
 隣にいる女は誰だ?とか言ってたか?
 剣心のヤツ面食いだったんだな、っつうか剣心の口調まで違うじゃねぇか
 別人か?・・・・・・・・・こりゃあ、尾行ツケてみるか」



異常に楽しそうにこっそりと達を追う左之助

それに気付かない剣心とではない



「緋村・・・」

「あぁ・・・面倒だな・・・・・・とりあえずここを離れるか」



はその言葉に頷いて剣心から少し離れようとするが
それを肩に手を回して許さない剣心


「ちょ・・・」

「どうした?」

「・・・・・・なんでもない」




「おっ、剣心もやるねぇ〜嬢ちゃんには見せらせねぇな」



「・・・あれ左之助じゃないの?」

「な・・・っ、・・・・・・そのようだな」


がっくりと肩を落とし溜息を吐きながら剣心はゆっくりと振り返る
勿論を背に隠しながら



「出てくるでござるよ、左之・・・」

「なんでぇ、バレてたのか」

「こんな所で何をしているでござる?」

「いや〜嬢ちゃんの所へ行こうとしてたら
 小間物屋から出てくるお前さんを見つけたモンでな
 声をかけようと思ったんだが・・・連れがいるみたいだったしよ」



ニヤニヤと笑いながら剣心の後ろのを見ようとする



「左之・・・」

「なんでぇ、もったいぶるなよ。てか、はどうした?」



一緒じゃないのか?と言われると困ったように笑い剣心は後ろを伺う
それに釣られるように左之助が視線を移動させる


「よ、よう・・・左之助・・・・・・」

「!?・・・・・・・・・・・・・・・か?」

「お、おう・・・」



剣心の背後から引き攣ったように笑いながら現れたを見て
左之助はぽかーんと口をあけて固まってしまう
剣心は重い溜息を一つ吐いて苦笑する


「お、おま・・・お前・・・・・・お、女・・女だったのか・・・?」

「あー「そうでござるよ、左之」って緋村?」

「な、なんで黙ってだんだよっ」

「誰も聞かなかったでござるからなぁ」

「聞かなかったって・・・確かに聞かなかったけどよ・・・」


少々困惑気味の左之助にと剣心は顔を見合わせる
先程の剣心以上にがっくりと左之助は肩を落とした


「と、とりあえず頼まれた茶菓子を買いに行かない?」

「そうだな、一緒にくるでござるか?左之」

「・・・おう」


剣心は左之助に見せつかるかのように再びの肩を抱き歩き始める
それを見てまた左之助はかぱっと口をあける


「・・・(こいつぁ・・・剣心か?つかこいつが過保護な理由がわかったぜ)」

「どうしたでござるか?」

「なんでもねぇ・・・なんでもねぇよ(お前の変わりように驚いてんだよっ)」


馴染みの茶屋で菓子を買い、由太郎の見舞いの品もここで買う
左之助はの姿に漸く慣れてきたのか剣心をからかいはじめる


「剣心よぅ、俺の勘は当たってたってことだよな?」

「左之?」

「ホレ、ちっとばかし前に聞いただろ?デキてんのかって」

「あー、そんなことも言っていたでござるなぁ」

「でもよ、さっきの事をとか呼んでなかったか?」

「あ、それ俺の名前」

!?」

っていうのも俺の名前、偽名とかじゃないよ
 どっちも親につけてもらった名前だからね」

「ほ〜、こうやって見ると女にしか見えねぇな・・・なんで解らなかったんだろうな
 ま、嬢ちゃん達には聞かれるまで黙っといてやるよ感謝しろよ?剣心



首を捻る左之助を見て剣心は昔、自分もそう思った事を思い出し遠い目をしていたが
最後に呟かれた言葉に苦笑しながら頷いた


それから左之助も一緒に神田に戻り
は着替えて神谷道場に向って由太郎の家へと向かった

















立ち直った由太郎を見送って数日が経った頃、の元に右近が訪れた



殿・・・」

「右近?どうした?」

「政府の密偵が動き始めました・・・」

「どういうことだ?」

「実は京都で              ・・・」



「・・・そうか、ということは近々俺の所にも来るな
 密偵か、その黒幕の本人が・・・」

「どう・・・なさいます?」

「どうもしないさ、降りかかる火の粉は払うだけだ
 だが・・・気になるのは、場所が京都だということだな・・・」








  


京都編突入します!って最後にさわっただけですが(汗
ちょっと剣心とヒロインさんをいちゃこらさせたかったので(笑
そして左之助にバレましたね彼には良き理解者であってほしいと思います
それからそれから【真田紐】とは・・・平べったい高級な茶器とかが入っている箱等に
使われている紐です真田幸村の父ちゃんが作っていたとか・・・
とにかく丈夫で重宝されていたようです

ヒロインさんの紐の色 (前)唐紅→ 猩々緋→
剣心の紐の色 (前)紫紺→ 紺桔梗→
び、微妙すぎてよくわかりませんね(汗