【士道】




一夜明け朝餉も済ませ宿を後にした二人は
昼過ぎには京都に着いていた

千年王城・・・が一歩足を踏み入れた途端、キィンと鍔鳴りが聴こえた


「・・・?今の音は・・・」

「・・・・・・俺の刀だ・・・」

・・・?」

「妖刀伝説・・・徳川家に祟るなんて生易しいものじゃない・・・
 これ・・は・・・あまりにも血に塗れた為、血を求め、贄を欲する。
 この刀を持った者は修羅・・・いや、羅刹と化す・・・
 今の京都の血の臭いが・・・闇が、呼び起こしたのかもしれない・・・」



腰元にある刀をぎゅっと握り瞳を閉じ、話すの言葉に剣心は目を瞠る
「父上が手にした時は本当に手がつけられなかった」と零すにさらに驚く


・・・お前は大丈夫なのか?」

「ん〜、俺が持っている分には支障はないな・・・何故かは解らないけど・・・
 だから父上も俺に持っていろと言ったんだと思う・・・(きっと毎月血を流すからだ)
 緋村・・・この刀には触らないほうがいいぞ。っていうか、触らないでくれ・・・
 父上を正気に戻すのに命懸けだったんだ・・・あんな思いは二度とごめんだ」

「・・・解った・・・」


話しながら歩を進め、一軒の茶屋の前で立ち止まる


「緋村?」

「ここである人と待ち合わせをしているんだ」

「俺が居てもいいの?」

「かまわんだろ・・・」


そう言い外に用意してある長椅子に腰掛ける
それに倣っても腰掛け、辺りを見回す

以前、自分が来た時となんら変わりの無い風景
違うのは空気・・・微かに血の臭いが混じっていて、どこか殺気立っている
ぼうっとしていたらお茶と団子が運ばれてきた
剣心を見上げると目で「食え」と言っている、それに嬉しそうに微笑んで団子を頬張る


「美味しい・・・っ」

「そうか・・・」


嬉しそうに団子を頬張るを見て、剣心は「まるで栗鼠みたいだな」と思い
笑みを零していると、ふいに顔に影がさした。



「やぁ、緋村・・・早かったね」

「桂さん・・・」

「・・・?緋村、その子は?」

「あぁ・・・ここに来る道中で知り合ったんです・・・
 路銀を無くしてしまったようで・・・」

「ふむ・・・刀を差している所をみると・・・どこかの武家の者か?」

「ふぇ?あ、あぁ・・・っ、初めてお目に掛かります。 と申します・・・
 俺・・いや、私はずっと父と旅をしておりましたので・・・家のことは・・・」

「あぁ、そう固くならなくていいよ。私は長州藩の桂 小五郎
 ・・・聞いた事のない名だな・・・生まれは?」


居住いを正し、すこし緊張気味に話す
桂は人の良さげな笑みで対応する

一方、は藩の人物だと知って冷や汗を流している
とは母方の名前である。どう誤魔化すかと頭はフル回転をしている



「う、生まれは・・・江戸・・・です・・・母は病で亡くなっております
 事情がありまして・・・十年ほど父と共に旅をしておりました・・・」

「旅をしておった・・・と、すると・・・今は?」

「あー・・・」

「旅の途中で賊に襲われたらしく、父親は亡くなったようです。
 俺はが倒れているところに出く合わせたんです」



剣心が口を挟み、その事に桂が驚いていると
浅黄色のだんだら模様の羽織を着た一団が足を止める
殺気を込められた視線が交わり、は眉を顰める



「桂 小五郎だな・・・その隣に居るのは・・・人斬り 抜刀斎・・・と
 誰だ・・・?まぁ、そんな事はどうでもいい・・・その首、我等新撰組が貰う!」

「おい!勝手なことは・・・」

「浪士を取り締まる、それが我等の仕事だっ」


「新撰組?緋村・・・何事?」

「あぁ・・・佐幕の連中だ・・・桂さんは倒幕派の中枢人物だ・・・」

「ふ〜ん・・・でも、こんな町中で・・・抜刀するなんて、いただけないなぁ」


桂に向かって斬りかかる刃を、剣心と桂が身構える間もなく
が脇差で受け止め、弾き返す。
剣心が柄に手を掛けると、それを止める


「緋村も抜かない!」

っ!」

「あのねぇ・・・こんな町中で、しかも刀を抜いてもいない者に斬りかかるなんて
 何考えてるの?これだけの人数が刀を振り回せば、関係の無い人も傷つく
 闘るなら場所を選べ・・・」


呆れた口ぶりだが、から殺気が発せられる
同様に剣心も殺気を放つ

どうやらこの新撰組の隊士達は新人隊士のようで
二人の殺気に蒼褪め始める

桂を背後に置き、二人は浅黄色の集団を見据え、剣心が口を開く



「退け・・・退かねば斬る・・・」

「新撰組隊規、第一条『士道に背くあるまじき事』敵前逃亡は士道不覚悟!」


そう叫び刀を振り上げる隊士に遂にが怒りを露にする


「人に迷惑を掛ける理由に士道を語るんじゃねぇっ!」


ドガァッ


は刀を鞘に収めたまま斬りかかってきた隊士を薙ぎ倒す
それに呆れた顔をして剣心はに話しかける


「お前・・・刀を向けられたら敵と見做して斬るんじゃなかったのか?」

「ん?そうなんだけど、ここで斬ったら町衆に迷惑かな・・・と」

「本当にお前・・・変わった奴だな・・・」


お互いに苦笑を漏らしながら話していると
薙ぎ倒された隊士が尚も斬りかかろうとした所で別の所から声が掛かる



「何の騒ぎだ!」

「「「副長!!」」」

「ふくちょう・・・?」

「新撰組副長の土方 歳三だ・・・」

「へぇ・・・」


騒ぎに割って入って来た美男には目を丸める
剣心は顔を顰め舌打ちをして桂に視線を向ける
緊張した面持ちで「もう少し成り行きを・・・」と言った目で頷く



「ねぇ、この人達の上司の人・・・」

「んあ?何だ童、俺は土方だ」

「じゃあ、土方さん。この人達に士道を教えるのはいいけど・・・
 士道を穿き違えさせちゃいけない。それに俺は童じゃない、 だ」

「おう、済まねぇな・・・で、どういう意味だ?」

「周りの・・・刀を持たない人たちの迷惑も顧みず・・・
 士道を語って無闇矢鱈と剣を振り回すものじゃない。
 俺達はただ話しをしていただけだ、それなのにいきなり斬りかかってくるなんて
 武士さむらいのすることじゃないよ。」

「そうか・・・済まなかったな、こいつ等は百姓・町民の出でな・・・」

「あのねぇ・・・どこの出なんて関係ないよ。刀を提げて歩いている・・・
 見た目は武士なんだ、元は町民だとか言われても誰も判らないよ」

「そりゃそうだ!気に入ったぞ。お前、新撰組に入らねぇか?」


カラカラと笑いを勧誘する土方に後ろに控えていた沖田も顔を輝かせた
それに反論したのは言うまでもなく剣心だった


「駄目だっ」

「・・・いたのか・・・抜刀斎・・・ってぇ事は・・・は倒幕派なのか?」

「さぁ?ま、でも・・・徳川は嫌いだよ」

「ふぅん・・・今日の所は退くか・・・・・・お前等、帰ったら説教だっ
 出会い頭に喧嘩を売るなんざ、新撰組の名が落ちる!帰るぞ、沖田っ」

「トシさん、待ってよ。また会おうねぇ〜君」


ひらひらと手を振りながら笑顔で去っていく沖田とは反対に
蒼褪めた顔をしながら隊士達はの前から足早に去る



「・・・なんだったんだ・・・?」

・・・お前、今までの俺の話しを聞いていなかったのか?」

「聞いてたよ〜、なんで緋村が怒ってんのさ?丸く収まったんだしいいじゃない」

「何が『いいじゃない』だっ、土方に目を付けられたんだぞ!
 こうなったら、早めに京を出るんだ」



「え〜」と不満そうな
剣心とのやり取りを見ていた桂がまるで珍しいものを見るように剣心を見ていた


「桂さん・・・は旅の者です、巻き込むわけには・・・」

「待て緋村・・・、行くあてはあるのか?」

「いえ・・・父も亡くなりましたし、家も親族もありません・・・」

「・・・そうか・・・先程の身のこなし、それに鬼と名高い新撰組の副長に意見する
 豪胆さ・・・・・・確か、徳川が嫌いと言っていたな?」

「はい・・・それが、何か?」

「我々の仲間にならないか?」

「桂さん!」


桂の話しに剣心が声をあげるが、手でそれを制される


「無理にとは言わない・・・新しい時代を迎える為に
 緋村と一緒に遊撃剣士として働いて欲しい」

「緋村と一緒に・・・?新しい時代・・・それは誰もが安心して暮らせるという
 『新時代』ですか・・・?」

「そうだ・・・どうだ?

「・・・・・・解りました・・・」

っ!」


剣心は厳しい声でを諭そうとするが
の瞳は真剣そのもので何も言えなくなる



「では・・・」

「俺は・・・新しい時代を迎えたい自分の為に・・・・・刀を振るいます」

「「)・・・?」」

「なんですか?」

「いや・・・」

「いいのか?・・・戻れなくなるぞ・・・」

「俺は徳川が・・・徳川のやり方が嫌いなんです。それを正せるのなら・・・」



止めても無駄だと言うかのように、じっと剣心を見据える
剣心は諦めたように困った顔をしながらくしゃりとの頭を撫でた



「お前がそうしたいなら、もう何も言わない。
 これからよろしくな・・・

「緋村・・・うん、よろしく・・・お願いします」

「よし、決まりだな・・・っと、そうだ・・・お前等二人で一部屋な」

「は?」

が加わる事は予定外だ、部屋は一つしか用意してない
 それに、お前等兄弟みたいだから問題ないだろ」


桂の言葉には固まる
何処に住むとかなど考えていなかったのだ
だがその気になってしまっている桂には何も言えない


「・・・(早まったかも・・・バレないようにしなきゃ・・・)」

「・・・(兄弟みたいって・・・そうか、弟がいたらこんな感じなのかもな)」

「じゃ、二人とも行くとしようか」


桂に促されてその場を去ろうとした時、の頭に一つの事が過ぎった


「・・・(私・・・お団子、どうしたっけ?)」


恐る恐る振り返って見ると・・・無残にも砂にまみれた団子が転がっていた


「あ      っ、俺の団子     っっ」

「「はぁ?」」


砂まみれの団子の前で頭を抱えている
剣心と桂は顔を見合わせると笑い出す


「俺の・・・団子・・・・・・あいつ等、今度会ったらブッ潰すっ


などと恐ろしい事を呟きながら涙目になっている
先程の新撰組と対峙していた時とは打って変わって全くの子供に見えた


「ほら、団子ならまた買ってやるから・・・行くぞ。

「う〜」



差し出された剣心の手を握り、用意された宿へと向かった



動乱の京都に留まる事となった
この先、を待ちうけているのは闘いと血濡れの日々        ・・・
剣心は複雑な気持ちだった・・・遊撃剣士として前線に赴けば死ぬ確立は高い
しかし、自分の側にが居るということにどこか安堵している自分が居る


は男だというのに     ・・・この気持ちはなんなんだ?
 弟のようだから?・・・それも・・・・・・違うな・・・     



剣心の葛藤は続く・・・・・・続くったら続く・・・












  


あとがきです・・・
またまた趣味で土方さんを出してしまいました・・・


剣心:おい・・・
りお:いや、斉藤さんでも良かったんですが先のことを考えまして・・・
剣心:おいっ
りお:・・・あら、剣さん。いつのまに・・・(汗
剣心:さっきからいたんだが?
りお:そ、そうだったんですか?
剣心:いつまで俺に勘違いをさせておくつもりだ?
りお:言葉遣いが違いません・・・?
(チャキ・・・)
剣心:今は幕末なんだろう?
りお:・・・ってことは・・・
剣心:不殺なんて言葉は知らんな・・・
りお:ひぃっ・・・ちゃ、ちゃんと考えてますよ〜。でも、もう少し待ってください
剣心:・・・・・・それに土方なんぞまで出しやがって・・・
りお:プロットがあるんです〜
剣心:その「ぷろっと」通りに話しが進んだ事があるのか?
りお:ぐ・・・っ、と・・とにかくっ次回まで待ってください
剣心:ほぅ・・・次回には俺はが女だと気付くんだな?
りお:た・・・たぶん・・・
剣心:・・・殺すっ
りお:ぐはぁっ