はミスランディアに会ってから悪夢を見ることはなく
目覚めの良い朝を向かえていた
ミスランディアからの話を聞いたであろうスランドゥイルも
変わりなく接してくれ、は感謝していた
06 escape -逃亡-
闇の森のエルフ達が口を揃えて「彼女は森のエルフのようだ」と言うほど
ここ数日の間、は木に登り小鳥や栗鼠と戯れ
時間の空いたレゴラスに乗馬を教えてもらって馬に乗ったりしていた
日も傾きは部屋で寛いでいた
「・・・平和だなぁ・・・体が鈍ってきそう、〈胡蝶〉と鍛錬したくても
ここじゃ森を破壊しかねないし・・・(どんな鍛錬なんだ)鬼道で集中力鍛えるかぁ」
両掌を上に向け、霊力を込めると青白く光る球体が現れる
むぅ〜と球体から色々な形に姿を変えていく
星・三日月・鳥・蝶とが形を思い浮かべればその形にゆっくりと変化する
部屋がノックされても気付かないほど集中していた
「?いないの?」
レゴラスが声を掛けて部屋に入ると、扉に背を向けてベッドに座っているが目に入る
何をしているんだろうと近づくと、の掌の上で蝶が舞っていた
「?」
「へ?うきゃぁっ」
いきなり現れた(?)レゴラスに驚くと、ぱんっと音がして蝶が弾けた
辺りに弾けた光の粒子が舞う
「綺麗だね・・・この部屋が暗かったら星空の中にいるようなんだろうね・・・」
「レゴラスっ驚かさないでよ」
「そんなつもりはなかったし、ノックして声もかけたよ?
が気付かなかっただけじゃないか」
「そうなの?」
「そうだよ、何をしていたの?」
「集中力を鍛えてた・・・っていうか・・・でもレゴラスに気付かなかったんじゃ
私もまだまだだなぁ・・・」
そう言いながら頬を膨らませるに苦笑しながら「夕食を食べに行こう?」と誘った
それに頷いて連れ立って部屋を出る
「はエルフみたいな魔法使いのようだね」
「へ?」
「だって昼間はエルフのように動物たちと戯れていて、さっきは魔法使いみたいだった」
「そうかなぁ・・・」
「そうだよ」
楽しそうに会話をしながら歩いていく二人に擦れ違うエルフ達は眼を向ける
微笑ましそうに見つめるエルフもいれば、羨ましそうに見つめるエルフもいる
森の王子の春の到来(?)に微笑ましくもあり
少し気になるの傍にいつも張り付いている姿が羨ましくもあった
「おぉっ、レゴラスに今日は私もご一緒させてもらうぞ」
「げ・・・父上」
「スランドゥイル様・・・」
「なんだレゴラス、げ・・・とは」
「いえ、なんでもありませんよ父上」
王子スマイルでさらりとかわすと、の手を引き席を薦める
エスコートに慣れていないは恥ずかしそうに席に着いた
「はエスコートに慣れていないようだな」
「え?あ、はい・・・そのような事とは無縁でしたから・・・」
「無縁って・・・どんな世界だったの?」
「世界と言うか、国ね・・・」
「国・・・?」
「そう、私の産まれた国は男性が女性をエスコートするなんてこと
ほとんどなかったから・・・」
「なんて国だっ、・・もし帰れるという事になっても帰る必要はないぞ
女性を大切にしない国があっていいはずがなぁいぃっ」
「は・・はぁ・・・」
声高々に宣言するスランドゥイルに目をパチクリさせて相槌をうつ
その隣ではレゴラスが深い溜息をついていた
「・・・(確かに女性を大切にしない国というのは信じがたいけど・・・
父上、静かにしてくれないかなぁ)」
「・・・(やっぱり、喜助さんに似てるわスランドゥイル様・・・)」
楽しそうにレゴラスやスランドゥイルと話しているの表情がいきなり険しくなり
手に持っていたゴブレットをテーブルに置いた
「?」
「どうしたのだ、?」
「『虚』・・・?・・・違う・・・何か、気配が・・・」
「え・・・?」
レゴラスはの言葉に訝しげに眉を寄せ、スランドゥイルも辺りの気配を探る
は立ち上がりバルコニーへ足を向ける
禍々しい気配と殺気がを襲う
「向こうの方から感じる・・・」
とが指を指すとレゴラスとスランドゥイルもそちらに視線を向ける
「「オーク!」」
そう叫ぶと同時に二人は行動に出ていた
「父上、あちらの方角はゴラムがいるはずです!」
「やつらの目的はそれか?レゴラス!」
「解かりました!・・・、君はここにいるんだ」
「は?え・・・ちょ・・レゴラスっ」
バルコニーから飛び降りて馬を駆って闇に消えるレゴラスを唖然として見送ると
はむっとして部屋に戻る、スランドゥイルも既にその場にはいなかった
「なによっレゴラスの馬鹿〜!全然意味解かんない・・・なんであんなに焦って・・・」
殺気の強まる気配には窓を開けて森の奥を見つめる
きゅっと唇を咬み〈胡蝶〉を手に取ると窓枠を蹴った
瞬歩を使い殺気の強まる場所へと向かう
が目にした者はなんとも形容し難い異形の者達だった
『何こいつ等っ、虚の方がまだ可愛いんじゃないの?』
《・・・私、こんな奴等斬りたくない・・・》
『胡蝶・・・や、私もそうだけど・・・鬼道使ったら森が燃えちゃうかもだし
後でちゃんと清めるからぁっ、お願いだから我侭言わないでぇっ私が喰われるっ』
なんとも緊張感のない会話をしながら、は〈胡蝶〉を握った
いきなり現れたに応戦していたエルフ達も驚くが、急な襲撃に対応しきれていない
レゴラスがまだ来ていないのを確認すると
は「あちゃー、追い抜いちゃったか」と心の中で舌を出した
【人間だ、人間がいるぞ】
【新しい肉が喰える!】
『何言ってるか解かんないわよっ!』
ギィィンッ!
ザッ!!
はオークの振るう剣を受け止め、次々と切り倒していく
その姿に周りのエルフ達は目を瞠った
そのエルフ達にまるで気を抜くなと言うかのように、森の奥から矢が放たれる
その矢はオークの眉間に突き刺さり、そのオークは絶叫を上げながら倒れる
より遅れてやってきたレゴラスはその光景に絶句した
「これは・・・・・・って、えぇっ!?!?」
「あ・・・やほー、レゴラス」
自分の方を向いてヒラヒラと手を振るにレゴラスは眩暈を覚えた
しかし、オークを倒していく剣裁きに驚きもしていた
「!僕は館にいてと言った筈だけど?」
「あー・・・あははは」
「笑い事じゃなくてっ」
「いやね、身体が鈍るのもやだなー・・・なんて思って・・・」
「それに僕の方が先に出てきたはずだけど?」
【戦いの最中に会話なんて余裕だな!】
「「うるさいっ!!」」
二人してオークを倒していく、レゴラスも接近戦になったので
弓から短刀に持ち替えて応戦する
「あーもう、きりがないったらっ」
『ねぇ〈胡蝶〉、始解してもイケるかな?』
《イケるんじゃない?普通に斬れるし・・・なんでもありねこの世界・・・》
『同感!んじゃ、舞い上がれ〈胡蝶〉!』
の言葉と同時に木々がざわめき無数の光の蝶が現れる
オーク達は驚き怯むが一瞬で切り刻まれる
レゴラスは更に驚き、先日の言っていたのはこれのことだったのかと納得していた
目を奪われるほどの美しい蝶達の舞いに他のエルフ達も息を呑んでいた
かろうじて生き残ったオーク達は森の外へと逃げていった
「・・・!大丈夫だったかい?怪我は?」
「レゴラス、私は大丈夫・・・でも・・・」
沢山のオークの死体のあるなか数人のエルフが倒れていた
レゴラスはの怪我の有無を確認すると辺りの状況を調べると
監視していたはずのゴラムの姿がなく、ゴラム奪還がこの騒ぎの目的であったと結論付けた
「それにしても、は凄いね」
「そう?」
「そうだよ、剣裁きは流麗で・・・まるで舞いを舞っているみたいだった」
「そ、そうかなぁ・・・」
「それに、どうやってここまで来たの?」
「どうやってって、『瞬歩』で・・・えと『瞬歩』っていうのは・・・」
瞬歩の説明をして帰りはレゴラスの愛馬ニムエルに乗せてもらうことになった
なぜなら瞬歩は足に負担がかかるとが言ってしまい
レゴラスにどうしようもない時以外使わないと約束させられてしまったからだ
二人が館に戻ると、なぜも一緒なのだとスランドゥイルは目を白黒させていたが
レゴラスの報告を聞き、「裂け谷」へこの事を伝えに行けと言った
その時も同行させて「裂け谷」の主であるエルロンドに
の今後の事も相談するといいと付け加えた