会議から一夜明けて、アラゴルンを筆頭に少数のエルフ達が
周辺の探索と旅の行程を決めるのに必要な情報収集に向かった。
12 short rest -小休止-
[暇だなぁ〜、斥候に行ってる間に身体を休めろって言われてもねぇ・・・]
闇の森にいた時のように木に登ったりしていたが
レゴラスやアルウェンによく見つかったので最近では全く登っていない
はベッドの上にころりと横になってぼやいていた
[そうだ、闇の森でエフィルに手伝ってもらって作ったアレを着てみよう]
そう言い、鞄の中を漁りだす
手にしたのは白いエルフの織った布で作られた和服
帯や小道具一式も揃っている
それを手ににんまりと笑って着替え始める
[よ・・・っと、久し振りだなぁ。やっぱり着物が一番よねぇ]
普段のように裾を上げるのではなく、裾を引き髪を結い紐で結い上げる
鏡に姿を映し、おかしい所はないかと確認する
[ねぇ〈胡蝶〉白い着物に黒い帯といったら・・・]
《“鷺娘”でしょ、連れ舞でもする?》
[いいね、それ。扇はないけど・・・ね]
〈胡蝶〉を手に取るとテラスから庭に降り立つ
目当ての場所へ辿り着くまで〈胡蝶〉と他愛無い会話をしていると
やはりの姿は目立つのだろう、遠巻きにエルフたちがを見つめる
[さて・・・この辺りでいい?〈胡蝶〉]
《そうね・・・》
そう言うと、ふわりと〈胡蝶〉が具現化する
その姿はによく似ているが、対照的に朱色の着物を着ていた
ふぅっと一息置いてが唄い舞いが始まる
妄執の雲晴れやらぬ朧夜の恋に迷いし我が心
忍山口舌くぜつの種の恋風が
吹けども傘に雪もつて
積もる思ひは泡雪の
消えて儚き恋路とや
思い重なる胸の闇
せめてあはれと夕暮れに
ちらちら雪に濡鷺のしょんぼりと可愛らし・・・ ・
レゴラスがの元へ行こうと廊下を歩いていると
聞きなれない言葉の歌が聞こえてくる
「この声は・・・?」
声の聞こえる方へと進路を変え、足を進めると
その先には大勢のエルフがいた
「これ・・・は、フィンデル?」
「レゴラス様、ですよ・・・彼女が踊っているんです」
視線を逸らさず答えるフィンデルに少々眉を寄せながら
目をそちらに向けると、そこには裾を袂を翻し舞い踊るの姿があった
「 っ!」
一樹の内に恐ろしや
地獄のありさま ことごとく
罪を糺ただして閻王の
鉄杖まさにありありと
等活畜生大叫喚
修羅の太鼓は隙もなく
獄卒四方に群がりて
鉄杖振り上げ鉄の
牙噛み鳴らし ぼつ立てぼつ立て
二十六時中にろくじちゅうがその間
くるりくるり追ひ廻り追ひ廻り
終ついにこの身はひしひしひし
憐れみたまえ 我が憂身うきみ
語るも泪なりけらし
姿は消えて失せにけり・・・ ・
唄い終わり一呼吸置いて、膝をつきすぅっと手を突き一礼すると
周りから溜息が漏れる、そんな中賑やかな一行がに駆け寄ってくる
「「っ!」」
「へ?メリーにピピン?どうしたのそんなに慌てて」
「慌ててるんじゃないよっ、すっごく綺麗だった!」
「ねぇっ、さっきの歌と踊りは何処の国の踊りなの?」
「ありがと、さっきのは私が生まれた国のものよ」
「じゃぁ、その着ている服も?」
「そうよ」
わらわらと寄ってくるホビット達に苦笑を零して〈胡蝶〉を見ると
彼女は満足気に微笑んで具現化を解いた
いきなり現れの手の中に納まる細長い物にまたホビット達は驚きの声をあげる
「それは何?の魔法の杖?」
「これは[斬魄刀]・・・えーと剣よ」
「そんなに細い物が剣だと・・・?そんな軟な物でオークが倒せるのか?」
「ボロミア・・・」
ふいに現れたボロミア、その言葉に棘あるのを感じて
はむっとした表情で口を開く
「軟な物かどうか・・・試してみます?丁度身体も鈍ってきたところですし・・・
お手合わせをお願いできますかしら?」
「ほぅ・・・その格好でか?」
「もちろん」
「「っ」」
先程とは打って変わったピリッとした空気に周りにいたエルフ達も慌てるが
その中でどす黒いオーラを醸し出しているエルフが一人・・・いや二人いた
「レゴラス・・・(私のに何かあったらどうするの?)」
「アルウェン・・・大丈夫だよ(・・・でも、僕のにあんな事を言うなんて・・・
これからどうしてくれよう(黒笑)」
「「(を傷つけたら唯じゃおかないから)」」
背後から黒いオーラを感じるボロミアは冷や汗を流すが
引くに引けなくなってしまい、では・・・と剣を抜く
それにもにっこりと笑って〈胡蝶〉を手に握る
手合わせは半刻以上続いた
ボロミアの力強い剣裁きに対して、の流麗な剣裁き
次第に息遣いが荒くなるボロミアには余裕の笑みで剣を交わす
見物人(エルフ?)は更に増え、ミスランディアやエルロンドまでもが加わった
「流石じゃのぅ・・・二人とも」
「ミスランディア・・・そうでしょう?僕は一度が闘っている所を見ていますが
美しかったですよ、本当に」
レゴラスは微笑み目を細めての姿を追っていく
すると新たな人影が現れた
「こ、れは・・・何をやっているんだ・・・?」
「アラゴルン、何をって見たら判るでしょう?とボロミアが手合わせをしているのよ」
「アルウェン、しかし・・凄いな。レゴラスが言っていたことは強ち嘘ではなかったと・・・」
「僕は嘘は言わないよ、エステル・・・・・・そろそろ、かな?」
レゴラスがそう言うと同時にボロミアの首に切っ先が突きつけられた
「勝負あり・・・ですね?ボロミア」
「あ、あぁ・・・」
ボロミアは息を切らし、をまじまじと見ると苦笑した
「先程は、すまなかったな。」
「いえ・・・いい運動になりましたvありがとうございます。」
「いや・・・しかし、その剣は細いのに・・・しかも片刃なんだな。
それにの剣技も凄いな・・・」
「そうですか?」
「あぁ・・・力は俺の方が上なのに・・・」
「それはですね、相手の力を利用しているからですよ
押すばかりではなく一度引いてみることも大事なんです」
「ほぅ・・・」
とボロミアが談笑していると
またまた駆け寄ってきたメリーとピピンが「「今度僕達にも教えて!」」とはしゃいでいる
それに「「今度ね(な)」」と返していると
満面の笑みで(瞳は笑ってない)近づいてくる二人のエルフ
「!素晴しかったわっ、先程の踊りも今の剣技も」
「わっ!」
いきなりアルウェンに抱きつかれ、すぐにレゴラスに引き離される
「、綺麗だったよ。ボロミアもお疲れ様(の圧勝だったね)」
「い、いや・・・(汗をかいたせいか?なんだか寒いな・・・)」
「汗をかいたので・・・」とボロミアがその場を辞していくと
周りにいたエルフ達もいいものを見せてもらったと満足気にその場を去っていく
ミスランディアとエルロンドもアラゴルンに報告を聞くために館内へ戻った
その場に残されたのはメリーとピピン、フロドにサムとレゴラス・アルウェンに
ホビット達は瞳をきらきらとさせながら、先程のことを話している
レゴラスとアルウェンは冷たい空気を放って見つめ・・・睨み合っている
「じゃ、じゃあ私・・・〈胡蝶〉を置いてくるわね・・・」
「「一緒に行くよ(わ)」」
「いや・・・一人で大丈夫だから・・・」
そうは言うとひらりと跳躍して自室へ戻っていく
それを見てまたホビット達は顔を輝かせた
「「ってエルフと魔法使いを足したみたいだねぇ」」
「あ・・そんな感じだよね?サム」
「そうですね」
とほのぼのと話している
一方レゴラスはの後を追い、アルウェンは諦めの溜息をついて館へ戻っていった
[ふぅっ、いい運動したなぁ〜これからもボロミアに相手をしてもらおうかしら]
などと零しながら、〈胡蝶〉を置きう〜んと背筋を伸ばしていると扉が叩かれた
「、入ってもいいかい?」
「レゴラス?どうぞ・・・」
静かに部屋に入るとレゴラスはふわりと微笑む
見慣れたはずの微笑なのに、なぜかの顔は熱くなる
「・・・どうしたの?レゴラス」
「ん?いや・・・のその綺麗な姿を見ていたくてね」
「また・・・本当に口がうまいのね」
「僕は本当の事を言っているだけだよ。それに・・・」
「それに?」
『のそんな綺麗な姿・・・誰にも見せたくないなぁ』
に近づき髪を一房手に取り、唇を寄せる
その言葉に驚くを見つめてニッと笑うと掠めるように頬にも唇を落とす
「レゴラス!?」
唇の当たった頬を掌で押さえ真っ赤になっているに
蕩けんばかりの笑顔を見せると、そっと抱きしめた
『ねぇ、・・・さっきの歌と踊りの意味を教えてくれないかい?』
『さっきの?』
『そう・・・歌はの世界の言葉だったから・・・』
言いながらレゴラスは腕の力を緩めると、の手を引きテラスのベンチに誘う
はさらに熱くなった顔を片手で押さえながら、誘われるままベンチに腰を下ろす
『あの歌と踊りはね・・・恋に悩む娘の苦しい胸の内から始まって
やがて恋に迷った娘は白鷺となり、地獄の責めの苦しさに羽を羽ばたかせ苦悩をする
苦悩の様を見せていた白鷺も最後には力尽きるように雪の降りしきる中、息絶える・・・
っていう内容なの。題目は“鷺娘”というのよ、私の世界では結構有名なの』
『へぇ・・・なんだか哀しい結末なんだね・・・踊りを見ているだけだと
綺麗なのに・・・もそんな恋をしたことがあるのかい?』
『恋・・・かぁ・・・・・・昔は、そんな暇なかったからなぁ・・・』
『じゃあ・・・今は?』
『レゴラス?』
レゴラスの自分を見つめる真剣な瞳に、の胸が早鐘を打つ
しなやかに伸ばされたレゴラスの手がの頬に触れる
『僕は・・・初めてなんだ、こんな気持ちになるの・・・
が気になって、傍にいたくて・・・誰にもを見せたくない・・・
君が・・・好きなんだ・・・・・・愛している・・・』
『レゴ、ラ、ス?』
『旅に・・・一緒に行くと君は言っただろう?本当は、僕はね反対なんだ・・・
でも・・・一緒にいられると、どこかほっとしてるんだ・・・
・・・僕と約束して?自分から危険に近づかないと・・・戦いの時は僕の傍にいると・・・
本音を言うと、戦いの時だけじゃなくていつも傍にいてほしいんだけどね』
『レゴラス・・・約束、するよ。危険には近づかない、レゴラスの傍にいる・・・ずっと・・・』
『ずっと・・・?』
『ん・・・私も、きっと・・・レゴラスと同じ気持ちだから・・・』
『・・・っ』
レゴラスは嬉しそうに、頬を撫でていた手に力を入れてを抱き寄せる
もう一度頬を撫で、を見つめると頬を赤く染め上げ恥ずかしそうに瞳を伏せている
すっと顎を持ち上げその柔らかな唇に甘い口付けを落とした・・・

