「さて、私もあの大きな化け物の相手をしに行きますか」


は抗議する《胡蝶》を片手にトロルに向かって走りだした



18 Moria 3 -モリア 3-




が走り出すと同時に、槍を使い応戦していたアラゴルンがトロルに弾き飛ばされ
トロルは自分に刺さっていた槍をフロドに突き刺した
は驚き足を止めてしまう


「そんな・・・フロド!」

「フロド・・・?フロド!!」


サムが叫び、ミスランディア、ギムリ、ボロミアは愕然としながらも次々とオークを倒していく
メリーとピピンがトロルの背に飛び乗り剣を突き立てるが
トロルはそれを振り払おうと暴れ出す

震える手に力を込めては縛道を放った


[縛道の六十一 六杖光牢りくじょうろうこう!]


六枚の光の帯がトロルを突き刺しその動きを封じた


「メリー、ピピン降りなさい!レゴラス!!」


レゴラスはの声に頷くと、矢を三本つがえてトロルの喉元へと放つ
急所を射られたトロルは呻き声を挙げ倒れた

は辺りを見回し声を張り上げた



「オークを一掃します!壁に寄ってください!!」

[破道の九十 黒棺]


壁に寄ろうとする一行に尚も襲い掛かろうとするオーク達を漆黒の闇が包む
そして、その闇が消えると同時に現れたのは絶命したオークだった

それを確認してはフロドの元へ駆け出した
呆然とその光景を見ていた一行もの後を追うように走り出す


「そんな・・・」


アラゴルンは呟き、フロドを抱き起こすと
意識を取り戻したフロドが咽かえる
サムは瞳を輝かせフロドに近づき、怪我の有無を確認しだす


「フロド・・・生きてる」

「大丈夫、無事だよ。サム」

「死んだかと・・・あの槍の一突き・・・」

「お前は見かけ以上に強いな」


アラゴルンとミスランディアの言葉に答えるようにフロドはシャツを開いて見せた


「ミスリルか・・・・・・お前には驚かされるよ」


シャツの下の白銀の帷子にギムリは感嘆の声をあげた
は安堵して頬をゆるめフロドを見ていたが
次から次へと沸いてくるオークの気配に眉を顰めた

そして一行の耳にもオークの声が聞こえてくる
ミスランディアは顔を顰め「早く橋へ」と言いその部屋を後にした

一行はモリアの外へと繋がる橋を目指して疾走する
まるで居場所が解っているかのようにその後ろをオークは追ってくる
先へ、先へと走る達を囲むかのように前からも頭上からもオークが沸いてくる
そして遂に囲まれてしまうと、は鬼道を放とうと構え
ギムリは威嚇するかのように唸り声をあげた、その瞬間、大きな音が響いた
それを聞いたオーク達は脅え散り散りに逃げていく


「何・・・?この気配・・・」

は感じた事もない邪悪な気配に戸惑い
ミスランディアは杖を掴む手に力を込め確認をしているかのように黙り込んだ
その間に大きな音と共に唸り声も聞こえてくる
オーク達の行動とその唸り声に戸惑いつつボロミアが口を開いた


「今度は何の化け物だ?」

「“バルログ”だ・・・古代に生まれた悪鬼・・・・・・
 お主等の手には負えぬ・・・走れ!!」


ミスランディアの声に弾かれるように走り出す
ボロミアを先頭に薄明かりの中走り続ける
そしてその先にあったのは急傾斜の階段と絶壁だった
レゴラスはの頬を一撫ですると階段に視線を向ける


、足元に気を付けて・・・」

「ん・・・ありがと、レゴラス。フロド達も気を付けて・・・さぁ、先に」


フロド達を先に行かせ、はレゴラスの後に続いた
その後ろではミスランディアがアラゴルンを引き止めこう呟いた


「お前が導け、アラゴルン。あれが橋だ・・・早く行け、剣はもう役には立たぬ」


アラゴルンはミスランディアの言葉に戸惑いつつも頷き足を進めた

暫く階段を駆け下りているとその先が切れている
まずは身軽なレゴラスが先へと飛び移りミスランディアが飛び移るのを助ける
体勢を立て直していると矢が跳んできてメリーとピピンが小さく叫ぶ
は矢が放たれた元を探し、そこに鬼道を放つとレゴラスも同じように矢を放った

次にボロミアがメリーとピピンを抱えて飛び移る
その間も遠方にいるオーク達から放たれる矢をが鬼道で撃ち落としていく
だがここで階段が崩れ始め、先にいるレゴラス達との距離が開き
アラゴルンはサムを掴むとボロミアめがけて放り投げた
サムが無事受け止められたのを確認すると次はギムリに視線を向けると
ギムリは自分で飛び移れると辞退し、なんとか飛び移った
そこでまた階段が崩れる、更に開く距離
レゴラスが早く来いと言わんばかりに腕を広げてを呼ぶ


!!」

「行け、

「でも・・・」

「私とフロドなら大丈夫だ、君ならこの距離でも跳べるだろう?」

「本当に大丈夫なの?」

「これでも悪運は強いんだ、だから早くあの腹黒エルフを安心させてやれ」

「うん・・・(何か余計な言葉も聞こえた気がするけど・・・)」


は首を傾げながらもレゴラスの元へ跳んだ
ふわりとを受け止めてそのまま抱き締めるレゴラスはご満悦
そのままの髪に頬を擦り寄せようとしたら大きな唸り声と共に地が揺れる
レゴラスは小さく舌打ちしてを離した


「・・・(今、舌打ちした?)」

「大丈夫だったかい?」

「え、うん・・・(気のせい・・・?)」



そして尚も崩れる階段を絶妙なバランスで操りアラゴルンとフロドは達の元へ辿り着いた
全員が揃ったのを確認してミスランディアは先へと促す


「橋を渡れ!急げ!!」


ミスランディアがそう叫ぶと同時に全身を火に包まれた大きな化け物が現れた
焼き付くような熱風が達を襲う
それを振り切るかのようにアラゴルンを先頭に橋を渡り始める
最後尾についたミスランディアが全員が渡り切ったのをみて途中で足を止めた


「退がれ、通さんぞ」


後を追ってこないミスランディアに気づいたフロドが何度も彼を呼ぶ


「儂は神秘の火に仕える者、アノールの焔の使い手、お前の暗黒の火などには屈せぬぞ!」


バルログが振り下ろす鞭を弾き返しミスランディアは叫ぶ


「闇の世界へ戻れ・・・」


吼えるバルログ、その声は熱風を含みミスランディアを攻撃する


「ここは通さぬぞ!決して!!」


ミスランディアは杖を足元に打ちつけバルログを見据えるが
それを無視するかのようにバルログは足を踏み出すと
橋は脆く崩れ始めバルログはモリアの地底へと落ちていった

それを見て安堵の息をつき気が緩んだミスランディアの足に
落ちていったバルログの鞭の先が絡まり引きずられ橋から落ちてしまう


「ガンダルフ!!」

「行くな!」


フロドは辛うじて橋に掴まるミスランディアの元へ駆出そうとするが
ボロミアに止められる

同じようにも動こうとしたがこちらもレゴラスに抱き締められ動けなかった


とフロドの滲んだ瞳に映ったミスランディアは、ふと目元を緩め最後の言葉を紡いだ


「行け!馬鹿者」


そして達の視界からミスランディアの姿が消えた


「いやだ・・・ガンダルフ・・・っ、ガンダルフ       !!」


ただ呆然とミスランディアを見送ったアラゴルンに声を掛けて
泣き叫ぶフロドを抱えボロミアが先へと進む



「・・・・・・ミスランディア・・・っ」

「さぁ、僕達も行こう・・・


レゴラスはの手を引き、一行はモリアを抜けることができた

悲しみに暮れるサム、メリー、ピピン、悔しさに呻くギムリ、ボロミア
それを見て困惑するレゴラス

アラゴルンは剣に付いたオークの血を拭き取り口を開く


「レゴラス、皆を立たせろ」


その言葉にボロミアが講義する


「少し休ませてやれ!」

「日暮れと共にオークが現れる・・・・・・早くロスロリアンの森へ」





・・・?」

「レゴラス・・・・・・」


菫色の瞳から零れる涙にレゴラスは困惑する


「僕はエルフだから皆が何故泣いているのか解らない・・・
 だけど、の涙を見ると胸が痛む・・・泣かないで?・・・」


涙に濡れる白磁の頬をそっと撫で、目尻に浮かぶ涙を舐め取る


「泣かないで・・・・・・」

「ん・・・ありがと・・・・・・レゴラス」



アラゴルンはを抱き締め、ゆっくりと背を撫でているレゴラスを見て溜息を吐いて
他の仲間達を立たせ先へ向かうと促した





一行は無事モリアを抜けることができた
だが、あまりにも大きな存在を失った            ・・・・・・